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第154話
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店員さんが襖を閉めると、沈黙が流れた。
景と一緒にいると、こんな瞬間がたまにある。
気の合わない人と無言になると、冷や汗をかくぐらいドギマギしてしまって、何か話さなくちゃって焦るんだけど、景とだったら大丈夫だ。
……大丈夫だった筈なのに、なんで俺は今こんなに緊張しているんだ?
一ヶ月くらいはずっと喧嘩して話していなかったし、こうやっているのはすごく久しぶりだからかな?
それに、俺たちはもう友達ではない。恋人同士なんだ。
そう考えるとまたぽわぽわと脳内にお花が散る。
こっちの気を知ってか知らずか、景はいつものように落ち着いた調子で声を掛けた。
「進級出来たんだよね? おめでとう」
「あっ、うん、ありがとう」
「後は就職決めて、卒業旅行行く為にお金貯めるだけだね」
「う……が、頑張るけど、ちゃんと就職決まって、旅行なんて行けるかな……」
「行ける行ける。就職したら忙しくなっちゃうんじゃない? 今の内だと思うよ、たくさん遊べるのは」
「そ、そうだよね……ちなみに景は、海外旅行は行ったことあるん?」
「プライベートでゆっくりっていうのは無いかな。仕事で行くことが多いから。再来週も行くことになってて」
「あ、へぇー、そうなん?」
仕事の話を聞いているうちに、頼んでいたお酒が運ばれてきた。
乾杯しようとグラスを景の目の前に置こうとしたら、景もそれに手を伸ばしてきて、ふいに指先が触れ合ってしまった。
景と一緒にいると、こんな瞬間がたまにある。
気の合わない人と無言になると、冷や汗をかくぐらいドギマギしてしまって、何か話さなくちゃって焦るんだけど、景とだったら大丈夫だ。
……大丈夫だった筈なのに、なんで俺は今こんなに緊張しているんだ?
一ヶ月くらいはずっと喧嘩して話していなかったし、こうやっているのはすごく久しぶりだからかな?
それに、俺たちはもう友達ではない。恋人同士なんだ。
そう考えるとまたぽわぽわと脳内にお花が散る。
こっちの気を知ってか知らずか、景はいつものように落ち着いた調子で声を掛けた。
「進級出来たんだよね? おめでとう」
「あっ、うん、ありがとう」
「後は就職決めて、卒業旅行行く為にお金貯めるだけだね」
「う……が、頑張るけど、ちゃんと就職決まって、旅行なんて行けるかな……」
「行ける行ける。就職したら忙しくなっちゃうんじゃない? 今の内だと思うよ、たくさん遊べるのは」
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