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第91話 side景
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修介の家に行く約束を取り付けて電話を切り、ソファーから部屋を見渡して、ふとキッチンに目を向けた。
去年、初めてこのマンションに来てくれた日のあのテーブルでのやり取りを思い出した。
絆創膏を置いた後、修介は僕に何かを伝えようとしていた。
結局、彼の真意を理解する事は出来なかったけれど。
あの時、触れたくても触れられなくて、苦虫を噛む思いをした。
でもこれからは、そんな気持ちにならなくてもいいんだ。
昨日は、重村くんが来ているから修介に電話するのは控えようと思っていたのに、結局こうして電話を掛けてしまった。
邪魔するつもりは無かったのに、何故だろう。
テーブルの上の食器を片付けてから、タバコに火をつけた。
煙を吐き出しながら、スケジュールを確認しようと手帳をバックから取り出した。
四月に入れば大分仕事も落ち着いてくる。
一週目は特に何も無かった筈だ。
そう思って手帳をパラパラとめくった。
「……あ」
僕とした事が。
休みが取れていたのは二週目だった。
テレビ収録で沖縄に行くのは一週目だったという事をすっかり勘違いしていた。
何度も悪いな、と少し躊躇ったけれど、早めに伝えておいた方がいいだろう、すぐに切ればいいんだし。そう思ってタバコを灰皿に押し付けて、再度修介の番号に電話を掛けた。
少し経ってから、コール音がプツッと途切れたから、電話に出てくれたと分かったけれど、修介は何も発さなかった。しばらく黙っていたけど、気付いていないのかと思いこちらから声を掛けた。
「もしもし、修介? 聞こえる?」
『あー、こんばんは~重村です!』
一瞬耳を疑った。何故この人が電話に出るのか。
しかもやたらと声が大きい。
耳からスマホを遠ざけて、眉根を寄せながらスマホの画面を見つめた。
この煩さ、なんだか翔平に似ている。
修介が居る気配はないから、今一人なのか。
『マジで仲良しなんですねぇ! そんなに何度も電話しててー!』
重村くんは上機嫌で、酒の匂いがこちらまで伝わってくるような陽気な声だった。
相当酔っているに違いない。
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でもこれからは、そんな気持ちにならなくてもいいんだ。
昨日は、重村くんが来ているから修介に電話するのは控えようと思っていたのに、結局こうして電話を掛けてしまった。
邪魔するつもりは無かったのに、何故だろう。
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煙を吐き出しながら、スケジュールを確認しようと手帳をバックから取り出した。
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