86 / 454
第86話
しおりを挟む
「どうしたん? 何かあったん……?」
瞬くんは俺の方をキッと睨んだから、余計な事を聞くんじゃなかったかと一瞬後悔したけれど、その後瞬くんはダムが決壊したかのように一気に気持ちを爆発させた。
「結婚するんやって、付き合うてた先輩! 年上の彼女とデキ婚! 昼間、メール来とったからおめでとうって送ったら、何て返信来たと思う? まだ未定やけど、瞬にも披露宴ぜひ来て欲しい、やって! 今電話しても同じ事言われたんよ。ホンマ、アホやで!」
瞬くんは早口でそう言って、缶ビールを持ち上げて豪快に飲んだ。
俺は何て言葉をかけていいのか分からずに、ただ呆然としていると、瞬くんは赤い顔でニコッと笑った。
「今電話してたん、藤澤 景?」
「あ、うん……」
「ふーん……」
瞬くんは虚ろな表情で視線を外したから、俺は生唾をゴクリと飲み込んだ。
(瞬くん、酔っ払うの早すぎやろ……!)
景との電話は長くても10分くらいだったはずだ。
俺がたじろいでいると、瞬くんは持っていた缶ビールをテーブルにコトリと置いた。
胡座の体制から足を動かして両膝をつくと、その綺麗な顔をこちらに寄せてきたから少しドキっとして、俺は逃げるように自然と体を後ろに引いた。
「修介。昨日今日と、俺と一緒に過ごしてみてどうやった?」
「え? どうやったって……楽しかったで? 映画も買い物も……」
「ホンマ? じゃあもう一回付き合わへん? 俺ら」
「はぁ?」
またからかっているのかと呆れたのと同時に、先輩との事があってヤケになっているのだろうと見抜いたから、とりあえず冷静に諭した。
「あんなぁ瞬くん。いくら先輩が結婚するからいうて、適当にそんな事言うとったらあかんで?」
「適当やあらへん。ちゃんと考えとったんよ」
言葉を遮るように強い口調で言われたから、何も言えなくなってしまった。
瞬くんの黒目がちの目を見ていると、ブラックホールに吸い込まれる星になった気がする。
真っ黒だと思ってたけど、虹彩の中にある瞳孔はよく見たら焦げ茶色だった。
瞬くんは俺の方をキッと睨んだから、余計な事を聞くんじゃなかったかと一瞬後悔したけれど、その後瞬くんはダムが決壊したかのように一気に気持ちを爆発させた。
「結婚するんやって、付き合うてた先輩! 年上の彼女とデキ婚! 昼間、メール来とったからおめでとうって送ったら、何て返信来たと思う? まだ未定やけど、瞬にも披露宴ぜひ来て欲しい、やって! 今電話しても同じ事言われたんよ。ホンマ、アホやで!」
瞬くんは早口でそう言って、缶ビールを持ち上げて豪快に飲んだ。
俺は何て言葉をかけていいのか分からずに、ただ呆然としていると、瞬くんは赤い顔でニコッと笑った。
「今電話してたん、藤澤 景?」
「あ、うん……」
「ふーん……」
瞬くんは虚ろな表情で視線を外したから、俺は生唾をゴクリと飲み込んだ。
(瞬くん、酔っ払うの早すぎやろ……!)
景との電話は長くても10分くらいだったはずだ。
俺がたじろいでいると、瞬くんは持っていた缶ビールをテーブルにコトリと置いた。
胡座の体制から足を動かして両膝をつくと、その綺麗な顔をこちらに寄せてきたから少しドキっとして、俺は逃げるように自然と体を後ろに引いた。
「修介。昨日今日と、俺と一緒に過ごしてみてどうやった?」
「え? どうやったって……楽しかったで? 映画も買い物も……」
「ホンマ? じゃあもう一回付き合わへん? 俺ら」
「はぁ?」
またからかっているのかと呆れたのと同時に、先輩との事があってヤケになっているのだろうと見抜いたから、とりあえず冷静に諭した。
「あんなぁ瞬くん。いくら先輩が結婚するからいうて、適当にそんな事言うとったらあかんで?」
「適当やあらへん。ちゃんと考えとったんよ」
言葉を遮るように強い口調で言われたから、何も言えなくなってしまった。
瞬くんの黒目がちの目を見ていると、ブラックホールに吸い込まれる星になった気がする。
真っ黒だと思ってたけど、虹彩の中にある瞳孔はよく見たら焦げ茶色だった。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる