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第49話
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「てゆうか何サボってるんよ! まだ休憩時間じゃないやろ?」
「だってクッソだりーんだもん! 酔っ払いばっかりだし! いくら繁忙期だからってさ、なんで正月早々こんなに働かなくちゃなんねぇの?」
「まぁ、帰省組もおるしバイト自体足りてへんしなぁ。ええやん、店長、頑張り次第で正月手当て多めに出してくれるって言うてたし」
俺はスマホをカバンの中にしまいながら翔平を宥めた。
翔平は少し身を乗り出して俺に問う。
「修介はなんで帰んなかったの?」
「んー、去年のお正月帰ったし、春休みに高校の友達と地元で集まる予定だから、その時でいいかなぁと」
「へぇ。景の事もあるし?」
「は? なんで景が出てくんねん」
「気になって帰れないんじゃないのー? 連絡ずっと無いんでしょ~?」
「……」
翔平には全てを話してある。
そもそも、翔平が余計な事を言わなければ自分の気持ちに気付かないままでいられたかもしれないのに。
って、また、人のせいにしたけど。
「景って、変人だけどめんどい奴じゃ無いよ。気に入らなかったら気に入らないってちゃんと面と向かって言うような奴だし。こっちから連絡してやりゃーいーじゃん」
「……うん。ちゃんと自分の思ってる事を伝えてくれる人なんだろうなぁって話してて思ったけど……なんか、連絡すんなって言っといてノコノコこっちからすんのも変やし」
「何躊躇してんだよ? 南とは結局別れたんだろ?」
年末に、景と南さんの破局報道が流れた。
ネットには、景に遊ばれるだけ遊ばれてポイされた!と南さんを擁護するような言い方で書いてあって、なんだか景を不憫に思い、本当に遊ぶような人なのかな、と考えた。
あんなにいろんな事に全力で、ストレートに気持ちをぶつけていく景なのに、人の気持ちを弄ぶような事をする人なのか、と。
俺がマンションに行った日の前日、景は南さんとしたんだってあの時は勝手に思い込んでいたけど、翔平には、本人に聞いてないなら実際のところ分からないんだから妄想すんなと怒られて、反省しているところだ。
「せっかくフリーなんだから、早く告白すりゃーいいのに。もう噂になってる女優いるんだぜ?」
景にそういう噂は絶えず、今度は同世代の女優の一人がそうなんじゃないかと書かれていた。それがホントか嘘かなんて誰にも分からないけど。
「あんなぁ、そうやって簡単に言うけど無理やで? だって景は女の子が好きなんやから。翔平だって、男にいきなり告白なんかされたらビックリするやろ?」
「え? そんな事考えた事もねーけど、俺だったらあれだな! じゃあ一回、お試しでシてみよっか?って言うかな!」
「ホンマ、アホやないの」
その時、バン!とバックヤードのドアが開いて、その先には鬼の形相で立ちはだかる店長がいた。
「矢口く~ん?! 随分長い便所だね~? こっちは、猫の手借りたいくらい忙しいんだけど?!」
「あっ! ちょっと便所迷っちゃって! 今いきまーす!」
翔平は立ち上がり笑顔で謝ると、じゃーなと俺に言って部屋を出ていった。
店長のガミガミ声が響いてきたけど、はーい、了解っす!とまた適当に返事をした翔平の声が聞こえて笑ってしまった。
もう一度スマホを取り出したけど、動画を見るのは諦めて、景の連絡先を開いた。
藤澤 景という文字をじっと見ながら、連絡してみようかと迷うけど、結局何て切り出せばいいか分からなかったから、また明日にする事にした。
明日もきっと、また明日って思うんだけど。
「だってクッソだりーんだもん! 酔っ払いばっかりだし! いくら繁忙期だからってさ、なんで正月早々こんなに働かなくちゃなんねぇの?」
「まぁ、帰省組もおるしバイト自体足りてへんしなぁ。ええやん、店長、頑張り次第で正月手当て多めに出してくれるって言うてたし」
俺はスマホをカバンの中にしまいながら翔平を宥めた。
翔平は少し身を乗り出して俺に問う。
「修介はなんで帰んなかったの?」
「んー、去年のお正月帰ったし、春休みに高校の友達と地元で集まる予定だから、その時でいいかなぁと」
「へぇ。景の事もあるし?」
「は? なんで景が出てくんねん」
「気になって帰れないんじゃないのー? 連絡ずっと無いんでしょ~?」
「……」
翔平には全てを話してある。
そもそも、翔平が余計な事を言わなければ自分の気持ちに気付かないままでいられたかもしれないのに。
って、また、人のせいにしたけど。
「景って、変人だけどめんどい奴じゃ無いよ。気に入らなかったら気に入らないってちゃんと面と向かって言うような奴だし。こっちから連絡してやりゃーいーじゃん」
「……うん。ちゃんと自分の思ってる事を伝えてくれる人なんだろうなぁって話してて思ったけど……なんか、連絡すんなって言っといてノコノコこっちからすんのも変やし」
「何躊躇してんだよ? 南とは結局別れたんだろ?」
年末に、景と南さんの破局報道が流れた。
ネットには、景に遊ばれるだけ遊ばれてポイされた!と南さんを擁護するような言い方で書いてあって、なんだか景を不憫に思い、本当に遊ぶような人なのかな、と考えた。
あんなにいろんな事に全力で、ストレートに気持ちをぶつけていく景なのに、人の気持ちを弄ぶような事をする人なのか、と。
俺がマンションに行った日の前日、景は南さんとしたんだってあの時は勝手に思い込んでいたけど、翔平には、本人に聞いてないなら実際のところ分からないんだから妄想すんなと怒られて、反省しているところだ。
「せっかくフリーなんだから、早く告白すりゃーいいのに。もう噂になってる女優いるんだぜ?」
景にそういう噂は絶えず、今度は同世代の女優の一人がそうなんじゃないかと書かれていた。それがホントか嘘かなんて誰にも分からないけど。
「あんなぁ、そうやって簡単に言うけど無理やで? だって景は女の子が好きなんやから。翔平だって、男にいきなり告白なんかされたらビックリするやろ?」
「え? そんな事考えた事もねーけど、俺だったらあれだな! じゃあ一回、お試しでシてみよっか?って言うかな!」
「ホンマ、アホやないの」
その時、バン!とバックヤードのドアが開いて、その先には鬼の形相で立ちはだかる店長がいた。
「矢口く~ん?! 随分長い便所だね~? こっちは、猫の手借りたいくらい忙しいんだけど?!」
「あっ! ちょっと便所迷っちゃって! 今いきまーす!」
翔平は立ち上がり笑顔で謝ると、じゃーなと俺に言って部屋を出ていった。
店長のガミガミ声が響いてきたけど、はーい、了解っす!とまた適当に返事をした翔平の声が聞こえて笑ってしまった。
もう一度スマホを取り出したけど、動画を見るのは諦めて、景の連絡先を開いた。
藤澤 景という文字をじっと見ながら、連絡してみようかと迷うけど、結局何て切り出せばいいか分からなかったから、また明日にする事にした。
明日もきっと、また明日って思うんだけど。
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