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第39話
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軽くグラスを傾けて飲み始める。
不思議だった。数ヶ月前は雲の上の存在の人だったのに、今この瞬間隣にいて俺と笑いあっているなんて。
「そういえば、今度僕が出演するドラマ、なんだかドロドロなんだよね」
「ドロドロ?」
「うん。子持ちの主婦が、昔愛人にしてた男と再会しちゃって、あの時のドキドキが忘れられなくて不倫しちゃうって話。僕はその男の部下役なんだけどさ。いろいろあって、その主婦とキスしちゃうんだ」
「へ、ヘェー、なんか凄いんやなぁ、今のドラマって……」
「修介は、浮気とか不倫ってどう思う?」
そう訊かれて、俺は瞬くんとのアレコレを嫌でも思い出す。
瞬くんにとっては俺は一番じゃ無かったんだから、浮気相手という扱いになるんだろうか。
「俺はアカンと思うな。ちゃんと一人だけを好きにならんと」
「そうだよね。僕も絶対反対。嘘吐かれてる方は傷だらけになるに決まってるし。する人って、どっちも同じくらい好きだとか選べないとか言うけど、結局どちらも本気で好きじゃ無いんだと思うよ。セックスは一番愛してる人とだけするべきだよ」
セッ……!
まさか、景の口からその単語が出てくるとは思わなかったから、カーッと顔が熱くなる。
でも、自信たっぷりに言う景を見て、俺は景のそういう真っ直ぐなところが好きなんだ、と改めて思って、フッと表情が和らいだ。
「南さんは幸せやね。そんな景に愛されて」
俺はそう言いながらも、少しだけ胸の内を痛くさせるけど。
景は少ししてからグラスを置いて、体を動かして俺の方を真っすぐ見つめた。
「その事なんだけどさ、僕、南と別れようと思ってるんだ」
予想にもしてなかった事を突然告げられて、一瞬時が止まったけど。
え?
えーーー?
「なっ、なんで? あんな超絶美人で、景とお似合いなのに……」
そういえば最近景は、南さんの事を全く話題に出していなかった。
てっきりうまくいっているのかと思っていたのに。
「やっぱり、疑われる事になんだか疲れちゃって。実は一度言ったんだけど、聞き入れてもらえなかったんだ。明日会う事になってるから、また言うつもり」
「そ、そうなんや……もう、好きやあらへんの?」
「……うん。恋人としてはもう好きじゃないよ。彼女といても溜息ばっかりだし。友達として好き、の方が感覚が近いんだと思う」
あー、やっと修介に言った、と景は言って体を動かして座り直した。
(もし南さんと別れたら、俺と会う時間も今より増えるんやろうか? そうなったら嬉しいな……)
景は瓶を片手に持って空になった俺のグラスに液体を注いでくれる。
「こんな気持ちでいつまでも側にいても、南に悪いしね」と笑って言いながら。
「そっか、景が決めた事やから、俺はなんも言われへんけど。景やったらすぐに新しい人……見つかる……」
自分で言っておいて、情けなくなって言葉に詰まる。
そうだ。忘れてた訳じゃないけど、景は超絶イケメンだった。
こんな人、世の中の女子は放っておくわけがない。すぐに彼女が出来るだろう。
これだから、イケメンは……。
不思議だった。数ヶ月前は雲の上の存在の人だったのに、今この瞬間隣にいて俺と笑いあっているなんて。
「そういえば、今度僕が出演するドラマ、なんだかドロドロなんだよね」
「ドロドロ?」
「うん。子持ちの主婦が、昔愛人にしてた男と再会しちゃって、あの時のドキドキが忘れられなくて不倫しちゃうって話。僕はその男の部下役なんだけどさ。いろいろあって、その主婦とキスしちゃうんだ」
「へ、ヘェー、なんか凄いんやなぁ、今のドラマって……」
「修介は、浮気とか不倫ってどう思う?」
そう訊かれて、俺は瞬くんとのアレコレを嫌でも思い出す。
瞬くんにとっては俺は一番じゃ無かったんだから、浮気相手という扱いになるんだろうか。
「俺はアカンと思うな。ちゃんと一人だけを好きにならんと」
「そうだよね。僕も絶対反対。嘘吐かれてる方は傷だらけになるに決まってるし。する人って、どっちも同じくらい好きだとか選べないとか言うけど、結局どちらも本気で好きじゃ無いんだと思うよ。セックスは一番愛してる人とだけするべきだよ」
セッ……!
まさか、景の口からその単語が出てくるとは思わなかったから、カーッと顔が熱くなる。
でも、自信たっぷりに言う景を見て、俺は景のそういう真っ直ぐなところが好きなんだ、と改めて思って、フッと表情が和らいだ。
「南さんは幸せやね。そんな景に愛されて」
俺はそう言いながらも、少しだけ胸の内を痛くさせるけど。
景は少ししてからグラスを置いて、体を動かして俺の方を真っすぐ見つめた。
「その事なんだけどさ、僕、南と別れようと思ってるんだ」
予想にもしてなかった事を突然告げられて、一瞬時が止まったけど。
え?
えーーー?
「なっ、なんで? あんな超絶美人で、景とお似合いなのに……」
そういえば最近景は、南さんの事を全く話題に出していなかった。
てっきりうまくいっているのかと思っていたのに。
「やっぱり、疑われる事になんだか疲れちゃって。実は一度言ったんだけど、聞き入れてもらえなかったんだ。明日会う事になってるから、また言うつもり」
「そ、そうなんや……もう、好きやあらへんの?」
「……うん。恋人としてはもう好きじゃないよ。彼女といても溜息ばっかりだし。友達として好き、の方が感覚が近いんだと思う」
あー、やっと修介に言った、と景は言って体を動かして座り直した。
(もし南さんと別れたら、俺と会う時間も今より増えるんやろうか? そうなったら嬉しいな……)
景は瓶を片手に持って空になった俺のグラスに液体を注いでくれる。
「こんな気持ちでいつまでも側にいても、南に悪いしね」と笑って言いながら。
「そっか、景が決めた事やから、俺はなんも言われへんけど。景やったらすぐに新しい人……見つかる……」
自分で言っておいて、情けなくなって言葉に詰まる。
そうだ。忘れてた訳じゃないけど、景は超絶イケメンだった。
こんな人、世の中の女子は放っておくわけがない。すぐに彼女が出来るだろう。
これだから、イケメンは……。
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