9 / 10
9 嘘と嘘 2*
しおりを挟む
櫂が足を動かす度、ギッ、ギッと木が小さく軋む音がする。
急にその軋む音がより一層大きくなったので、僕は顔をしかめた。
いつも僕が気をつけて足を置くようにしている、上から三段目の木だ。老朽しているのか分からないが、足の置き所が悪いと耳障りな音がする。黒板を引っ掻く音や自転車の大きなブレーキ音などと同じくらい、僕にとっては不快な音だ。
「あ、悪いな」
「ううん、そこ、いつも変な音するんだ」
「そっか」
僕のしかめっ面を見た櫂は短く言って、隣に同じように寝転んだ。
いざこうなってみると、ちょっと恥ずかしい。
でもこっちの気持ちなんてお構いなしに、櫂は枕に隠れている僕の顔を持ち上げ、唇に噛み付いた。まるで手品のように、いつの間にか着ていたシャツを脱がされてしまう。
櫂の息も僕の息も、どんどん上がる。
櫂の野獣みたいにこちらを射抜く目は、僕の心も体もトロトロに溶かした。
仰向けにされると、足の間に櫂の膝が入り込んでくる。膝を何度か前後に動かされると、あっという間に僕の中心は勃ち上がった。
「すごいな。この前よりも反応してるじゃん」
「ん……だって、櫂がそんな風に……触るから」
「もっと触ってやるから、声、聞かして」
「……ッ」
──違う。櫂じゃない。
あの時、寝ている僕の体に触れたのは櫂じゃない。
櫂はさっき、梯子の上から三段目に普通に足を掛けた。
なぜならそこが、より大きく軋むとは知らなかったからだ。
あの時の人物が梯子を下りて行く時、音は鳴らなかった。
なぜなら、そこを飛ばして下りたから。
梯子に不具合があることを知っていたのは、僕の家に何度か訪れたことのある人物。
あの日、僕の体に触れたのは、拓海だ。
僕の頬が濡れて、目を開けた。
それは櫂の額から落ちた汗だった。
櫂は慌ててその汗を拭って笑った。
「あぁごめん。俺すげぇ汗かいてる」
「……櫂の汗だったら、嫌じゃないよ」
「……めちゃくちゃにしたくなるから、煽るのやめろよ」
「いいよ。めちゃくちゃにして」
櫂は熱っぽい瞳で見つめながら、昂りの先端を僕の後孔にあてがい、少しずつ僕の中に押し入ってきた。
「はっ……ん──……」
櫂の腰に両足を巻き付け、櫂の熱を奥まで感じる。
何度も意識が飛びそうになるくらい、それは甘美で穏やかな時間だった。
急にその軋む音がより一層大きくなったので、僕は顔をしかめた。
いつも僕が気をつけて足を置くようにしている、上から三段目の木だ。老朽しているのか分からないが、足の置き所が悪いと耳障りな音がする。黒板を引っ掻く音や自転車の大きなブレーキ音などと同じくらい、僕にとっては不快な音だ。
「あ、悪いな」
「ううん、そこ、いつも変な音するんだ」
「そっか」
僕のしかめっ面を見た櫂は短く言って、隣に同じように寝転んだ。
いざこうなってみると、ちょっと恥ずかしい。
でもこっちの気持ちなんてお構いなしに、櫂は枕に隠れている僕の顔を持ち上げ、唇に噛み付いた。まるで手品のように、いつの間にか着ていたシャツを脱がされてしまう。
櫂の息も僕の息も、どんどん上がる。
櫂の野獣みたいにこちらを射抜く目は、僕の心も体もトロトロに溶かした。
仰向けにされると、足の間に櫂の膝が入り込んでくる。膝を何度か前後に動かされると、あっという間に僕の中心は勃ち上がった。
「すごいな。この前よりも反応してるじゃん」
「ん……だって、櫂がそんな風に……触るから」
「もっと触ってやるから、声、聞かして」
「……ッ」
──違う。櫂じゃない。
あの時、寝ている僕の体に触れたのは櫂じゃない。
櫂はさっき、梯子の上から三段目に普通に足を掛けた。
なぜならそこが、より大きく軋むとは知らなかったからだ。
あの時の人物が梯子を下りて行く時、音は鳴らなかった。
なぜなら、そこを飛ばして下りたから。
梯子に不具合があることを知っていたのは、僕の家に何度か訪れたことのある人物。
あの日、僕の体に触れたのは、拓海だ。
僕の頬が濡れて、目を開けた。
それは櫂の額から落ちた汗だった。
櫂は慌ててその汗を拭って笑った。
「あぁごめん。俺すげぇ汗かいてる」
「……櫂の汗だったら、嫌じゃないよ」
「……めちゃくちゃにしたくなるから、煽るのやめろよ」
「いいよ。めちゃくちゃにして」
櫂は熱っぽい瞳で見つめながら、昂りの先端を僕の後孔にあてがい、少しずつ僕の中に押し入ってきた。
「はっ……ん──……」
櫂の腰に両足を巻き付け、櫂の熱を奥まで感じる。
何度も意識が飛びそうになるくらい、それは甘美で穏やかな時間だった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる