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5 明日夏 2*
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ひまわり畑の中にいる自分の夢を見た。
頬や腕を花びらの先がかすめる。それがくすぐったくて、何度も手でその部分をさすったり掻いたりした。
一度そういった刺激は止むのだが、夢の中の自分は前に進むので、また同じように体のあちこちがムズムズした。
夢の中のひまわり畑の僕は立ち止まり『これは夢だ』と現実世界の僕に教えてくれる。
あぁそうか。これは夢だ。
頭の中ではそう理解したのに、ムズムズは止まらなかった。
さっきは二の腕だったのに、今度は移動して、胸の突起の上がくすぐったくなってきた。
(あれ……)
ここで覚醒し、ハッとした。
壁側を向いて横向きに寝る僕の背後に、誰かがいる。
そしてその人物は、僕の体を服の上からまさぐっていたのだ。
さっきは完全に眠っていたので、無意識に手を動かしたり、体を掻いたりできていた。でも今はもう目覚めてしまったので、下手に動くことができなかった。
顔を覗き込まれていたらと思うと、怖くて目が開けられない。だから僕は、寝たフリをし続けてなされるがままになる。
背後の人間は息を殺しているようで、吐息一つも聞こえてこない。
薄いTシャツの上からヘソのあたりを指先ですっと撫でられたので、僕はきゅっと唇を噛んだ。
一体なぜ、こんなことになっているのか整理しよう。
僕は今日、いつものメンバーで飲んでいた。
真央、拓海、櫂とだ。
玄関の鍵はしっかりと掛けたし、眠ろうとみんなで横になった時はすでに深夜の二時だったから、新たな客がやってきた可能性はないだろう。
ならば背後の人間は、僕の親友だ。
そうこうしているうちに、体をなぞっている指先がTシャツの中に潜りこんできた。熱い指先で皮膚をくっと押され、僕は必死で声を押し殺す。
その手が少しずつ上がっていき、左の乳首を人差し指の爪の先でこすられてしまった。
(──……っ!)
僕は甘美な刺激に耐えきれずに、膝を曲げる動作をしてしまった。
次いで、胸の上の指の動きも一瞬躊躇する。
顔の筋肉は絶対に動かさなかった。きっと、僕が起きていないかどうか確認したはずだ。
案の定、しばらくしたらまた指の動きが再開された。
背後の人間の額が僕の首の付け根あたりに押し当てられているのを感じたので、バレないように深く息を吐いて、眉根を寄せる。
もしかしたら、真央かもしれないと思った。
真央はずっと、僕とこんな事を本気でしてもいいと、ふざけた調子で言っていた。
しかし、彼はいつもと同じように酔っていた。ロフトにいる僕に、わざわざこんなことをするだろうか。
ならば、拓海?
しかし、拓海だという可能性は三人の中では一番低い。
彼女とは今順調ではないにしろ、もう随分と長く付き合っているし、こんな人を裏切るような行為を、真面目で正義感の強い拓海がするはずはないように思う。
ならば、櫂……か?
櫂はそこまで酔ってもいなかったし、付き合っている相手もいない。
正直、僕のことを気に入ってくれているように思う。だからこそ、櫂がこんなことをするはずない、と思ってしまう。
櫂は『ずっと皆とこうしていられたらいいよな』と自ら僕に言ったのだ。友情に亀裂が入りそうなことをするはずない。
だが、僕が何をされても黙っていると見込んでいるのであれば、話は違ってくる。
頬や腕を花びらの先がかすめる。それがくすぐったくて、何度も手でその部分をさすったり掻いたりした。
一度そういった刺激は止むのだが、夢の中の自分は前に進むので、また同じように体のあちこちがムズムズした。
夢の中のひまわり畑の僕は立ち止まり『これは夢だ』と現実世界の僕に教えてくれる。
あぁそうか。これは夢だ。
頭の中ではそう理解したのに、ムズムズは止まらなかった。
さっきは二の腕だったのに、今度は移動して、胸の突起の上がくすぐったくなってきた。
(あれ……)
ここで覚醒し、ハッとした。
壁側を向いて横向きに寝る僕の背後に、誰かがいる。
そしてその人物は、僕の体を服の上からまさぐっていたのだ。
さっきは完全に眠っていたので、無意識に手を動かしたり、体を掻いたりできていた。でも今はもう目覚めてしまったので、下手に動くことができなかった。
顔を覗き込まれていたらと思うと、怖くて目が開けられない。だから僕は、寝たフリをし続けてなされるがままになる。
背後の人間は息を殺しているようで、吐息一つも聞こえてこない。
薄いTシャツの上からヘソのあたりを指先ですっと撫でられたので、僕はきゅっと唇を噛んだ。
一体なぜ、こんなことになっているのか整理しよう。
僕は今日、いつものメンバーで飲んでいた。
真央、拓海、櫂とだ。
玄関の鍵はしっかりと掛けたし、眠ろうとみんなで横になった時はすでに深夜の二時だったから、新たな客がやってきた可能性はないだろう。
ならば背後の人間は、僕の親友だ。
そうこうしているうちに、体をなぞっている指先がTシャツの中に潜りこんできた。熱い指先で皮膚をくっと押され、僕は必死で声を押し殺す。
その手が少しずつ上がっていき、左の乳首を人差し指の爪の先でこすられてしまった。
(──……っ!)
僕は甘美な刺激に耐えきれずに、膝を曲げる動作をしてしまった。
次いで、胸の上の指の動きも一瞬躊躇する。
顔の筋肉は絶対に動かさなかった。きっと、僕が起きていないかどうか確認したはずだ。
案の定、しばらくしたらまた指の動きが再開された。
背後の人間の額が僕の首の付け根あたりに押し当てられているのを感じたので、バレないように深く息を吐いて、眉根を寄せる。
もしかしたら、真央かもしれないと思った。
真央はずっと、僕とこんな事を本気でしてもいいと、ふざけた調子で言っていた。
しかし、彼はいつもと同じように酔っていた。ロフトにいる僕に、わざわざこんなことをするだろうか。
ならば、拓海?
しかし、拓海だという可能性は三人の中では一番低い。
彼女とは今順調ではないにしろ、もう随分と長く付き合っているし、こんな人を裏切るような行為を、真面目で正義感の強い拓海がするはずはないように思う。
ならば、櫂……か?
櫂はそこまで酔ってもいなかったし、付き合っている相手もいない。
正直、僕のことを気に入ってくれているように思う。だからこそ、櫂がこんなことをするはずない、と思ってしまう。
櫂は『ずっと皆とこうしていられたらいいよな』と自ら僕に言ったのだ。友情に亀裂が入りそうなことをするはずない。
だが、僕が何をされても黙っていると見込んでいるのであれば、話は違ってくる。
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