11 / 18
10 おじいちゃん
しおりを挟む尤もこの二人が常識ある会話をしているかというと、
「で、話はついてるものだと思ってたんだけど?」
確認するようにロザリンダに問うレーゼラインに、
「話をする価値もなかったので。それに私がすることに公爵の許可は必要ありません」
と答えるロザリンダ。
「あぁそういうこと。縁切りの準備は済んでる?」
__案外そうでもなかったりするが、そこは人それぞれである。
「書類はこちらに。後は公爵にサインを貰えば完了ですわ、そのままレーゼライン様にお預けすれば早いと思いまして」
ロザリンダが言うなり、サリナがすかさず手にした書類をレーゼラインに差し出す。
「この子が一人だけ貴女が連れて行きたいって手紙に書いてた姉妹みたいに育った子?」
「はい、そうです。サリナと言います。この家で信用できるのは彼女とカエルムだけなのです、恥ずかしながら」
「酷い環境で育ったのねぇ、おまけに婚約者がコレだったなんて」
と軽く鞭にした手を引くと馬鹿その一がぐぇ、とカエルが潰れたような声をあげたが二人ともその事には頓着せずに、
「お陰で縁を切るのに躊躇う必要がなくて楽ですわ」
と会話を続けた。
「思ったより傷は深そうね……」
清清した様子のロザリンダに何を思ったのか(中身が違う人間になったとは流石に思わないので)労りの視線を向けたレーゼラインはしかし、サリナから受け取った書類に目を通すと「法的には問題ないけれどこれ、慰謝料に関する記載がないわね?」と突っ込んだ。
流石にこんなツッコみを受けるとは予想していなかったロザリンダは瞳を丸くして絶句した。
「貴女、自分をこんな目に合わせた奴らから慰謝料も取らないつもりなの?ダメよ、自分を安く見繕っちゃ」
安く見積もったつもりはない。
公爵からは罰金という名目でお金を取っていた。
馬鹿その一からもらったアクセサリーの類は売ってお金に変えておいた。
自分の手持ちの物も小振りな物を幾つか残して殆ど換金済みだ。
修道院まで自力で辿り着く手立てがなかったため、ここまで迎えに来てもらうにあたってロザリンダは高額な寄付金を手紙で約束していたが、それには今ある手持ちだけで事足りる。
「あの、寄付金の事でしたら既に「そうじゃない」、」
「え?」
「貴女の人生の先は長い。寄付金は有り難くいただくけど吊り上げるつもりはないわ。貴女が一人立ちする時、誰かを助けたい時、一番手っ取り早いのはお金よ。多くあって困るものではないわ」
「!」
そこまでは考えていなかった。
確かにそうだ。
いつかサリナがお嫁に行く時に渡そうといくつかの宝石を手元に残しはしたがそれだけだ。
ここから先は自分で冒険者になるなりして稼げば良いと思っていた。
修道院で修行する間の衣食住は保証されているがそれは他の誰かの寄付や稼ぎによって成り立っているものだ。
自分の魔力ならばすぐに外からの依頼を受けて稼いだ報酬を修道院に納められるだろうと高を括っていた。
下を向いて黙ってしまった私に、
「おい……」
と心配そうなステルンから声がかけられるが、
「私の考えが甘かったですわ!申し訳ありません、レーゼライン様!」
ばっと顔をあげて発した言葉に今度はステルンが絶句した。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
真面目な子ほど、開き直ったら怖い。
「で、話はついてるものだと思ってたんだけど?」
確認するようにロザリンダに問うレーゼラインに、
「話をする価値もなかったので。それに私がすることに公爵の許可は必要ありません」
と答えるロザリンダ。
「あぁそういうこと。縁切りの準備は済んでる?」
__案外そうでもなかったりするが、そこは人それぞれである。
「書類はこちらに。後は公爵にサインを貰えば完了ですわ、そのままレーゼライン様にお預けすれば早いと思いまして」
ロザリンダが言うなり、サリナがすかさず手にした書類をレーゼラインに差し出す。
「この子が一人だけ貴女が連れて行きたいって手紙に書いてた姉妹みたいに育った子?」
「はい、そうです。サリナと言います。この家で信用できるのは彼女とカエルムだけなのです、恥ずかしながら」
「酷い環境で育ったのねぇ、おまけに婚約者がコレだったなんて」
と軽く鞭にした手を引くと馬鹿その一がぐぇ、とカエルが潰れたような声をあげたが二人ともその事には頓着せずに、
「お陰で縁を切るのに躊躇う必要がなくて楽ですわ」
と会話を続けた。
「思ったより傷は深そうね……」
清清した様子のロザリンダに何を思ったのか(中身が違う人間になったとは流石に思わないので)労りの視線を向けたレーゼラインはしかし、サリナから受け取った書類に目を通すと「法的には問題ないけれどこれ、慰謝料に関する記載がないわね?」と突っ込んだ。
流石にこんなツッコみを受けるとは予想していなかったロザリンダは瞳を丸くして絶句した。
「貴女、自分をこんな目に合わせた奴らから慰謝料も取らないつもりなの?ダメよ、自分を安く見繕っちゃ」
安く見積もったつもりはない。
公爵からは罰金という名目でお金を取っていた。
馬鹿その一からもらったアクセサリーの類は売ってお金に変えておいた。
自分の手持ちの物も小振りな物を幾つか残して殆ど換金済みだ。
修道院まで自力で辿り着く手立てがなかったため、ここまで迎えに来てもらうにあたってロザリンダは高額な寄付金を手紙で約束していたが、それには今ある手持ちだけで事足りる。
「あの、寄付金の事でしたら既に「そうじゃない」、」
「え?」
「貴女の人生の先は長い。寄付金は有り難くいただくけど吊り上げるつもりはないわ。貴女が一人立ちする時、誰かを助けたい時、一番手っ取り早いのはお金よ。多くあって困るものではないわ」
「!」
そこまでは考えていなかった。
確かにそうだ。
いつかサリナがお嫁に行く時に渡そうといくつかの宝石を手元に残しはしたがそれだけだ。
ここから先は自分で冒険者になるなりして稼げば良いと思っていた。
修道院で修行する間の衣食住は保証されているがそれは他の誰かの寄付や稼ぎによって成り立っているものだ。
自分の魔力ならばすぐに外からの依頼を受けて稼いだ報酬を修道院に納められるだろうと高を括っていた。
下を向いて黙ってしまった私に、
「おい……」
と心配そうなステルンから声がかけられるが、
「私の考えが甘かったですわ!申し訳ありません、レーゼライン様!」
ばっと顔をあげて発した言葉に今度はステルンが絶句した。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
真面目な子ほど、開き直ったら怖い。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説


BL短編まとめ(甘い話多め)
白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。
主に10000文字前後のお話が多いです。
性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。
性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。
(※性的描写のないものは各話上部に書いています)
もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。
その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。
【不定期更新】
※性的描写を含む話には「※」がついています。
※投稿日時が前後する場合もあります。
※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
■追記
R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます)
誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。
俺の幼馴染はストーカー
凪玖海くみ
BL
佐々木昴と鳴海律は、幼い頃からの付き合いである幼馴染。
それは高校生となった今でも律は昴のそばにいることを当たり前のように思っているが、その「距離の近さ」に昴は少しだけ戸惑いを覚えていた。
そんなある日、律の“本音”に触れた昴は、彼との関係を見つめ直さざるを得なくなる。
幼馴染として築き上げた関係は、やがて新たな形へと変わり始め――。
友情と独占欲、戸惑いと気づきの間で揺れる二人の青春ストーリー。
BL団地妻on vacation
夕凪
BL
BL団地妻第二弾。
団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。
頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。
なんでも許せる人向けです。

素直じゃない人
うりぼう
BL
平社員×会長の孫
社会人同士
年下攻め
ある日突然異動を命じられた昭仁。
異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。
厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。
しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。
そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり……
というMLものです。
えろは少なめ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる