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そして話がトントン拍子で進み、その日のうちに早速飲みに行くことになった。
僕は今、従業員専用通路のベンチに座り、彼を待っている。
手持ち無沙汰なので適当にスマホを弄るけれど、彼と飲みに行けるのが結構嬉しくて、ずっと彼のメッセージアプリのアイコンを眺めていた。
店長会の後に交換した連絡先。
彼のアイコンの絵は、MARVEL作品の中に出てくる筋肉がムキムキの強そうなキャラクターだった。僕は観たことは無いけど、そういうの好きなのかもしれないな。
色々と新たな発見をする度に、もっと知りたいという欲求も増えていく。
(ビール一杯奢るって約束だけど、全部支払ってもあげても全然いいけどな……きっと彼の方がうんと年下だし……あぁでも、いきなりそんな事したら困らせてしまうかな)
「青山店長~」
顔を上げると、森下くんは警備員に従業員証を見せながらこちらに手を振っていた。
そんな遠いところから呼ばれて、ちょっと恥ずかしくなる。
けれど森下くんは、いい笑顔だ。
格好は、上は店で着用していたブルーのシャツで、下はネイビーのクロップドパンツに着替えていた。ザ・ノース・フェイスの赤いトートバッグを肩から下げて。
スマホに映っている彼のアイコンのキャラクターと目を合わせてアプリを落とし、森下くんの隣を歩いて外に出る。
僕よりも10センチくらい背が高い彼。
見上げる事が出来ずに、ひたすら地面をウロウロさ迷う僕の視線。
「どこに行くか決めました?」
「うん、やっぱりすぐそこの焼き鳥屋がいいと思うんですよね。駅前まで行くと、君の帰りが大変だろうし」
「えぇ、そんな事考えてくれてたんですか? 優しいね、店長」
森下くんはここから歩いてすぐのアパートに住んでいるという。
僕はここまで電車とバスで通っているから駅前でもいいけれど、そこの焼き鳥屋も安くて美味しいとの評判だから丁度良い。
赤い提灯が見えてくるのと同時に、店員の威勢のいい声も聞こえてくる。
磨りガラスの向こうは熱気が篭っていて、いつもは空いているはずの外のテーブル席にも人が座っていたから、もしや、も思いながら引き戸を開けて中を覗いた。
何度か来ているから、ここの店員とは顔見知りだ。
一番仲の良い店員と目が合うと、その子は客と客の間をくぐり抜けてこちらにやってきた。
「すいません、今満席で」
「待ってたら入れそう?」
「お二人ですか? そうですね~……団体さんのご予約なんで、ちょっとお待たせしちゃうと思うんですけど……」
「そっか。じゃあ、また今度にしようかな」
店員はまた「すいませーん」とペコペコしながら、次回使える割引券と一杯無料サービス券を森下くんの分までくれた。
礼を言って外に出て、スマホでこの近辺の飲み屋を検索した。
「すみません、タイミングが悪かったです。あんなに混んでるとは思っていなくて」
「給料日後だからですかね。他にどこかありそうですか?」
一緒になってスマホの画面を見るけど、やはり飲み屋は駅前に集中してあるから、そこまで行くしか無さそうだ。
それか、今日は諦めてまたの機会にするとか……
それは嫌だ。今日せっかく話が出来るチャンスなのだから。
「森下くん、悪いんですけど、やっぱり駅の方へ行きましょうか。バスならまだ出ていますし」
「飲み屋じゃないとダメですかね?」
「え?」
「俺ん家で宅飲みは嫌ですか?」
パチパチパチ。僕は瞬きを繰り返す。
──あの、その、全然、嫌じゃないですよ。
僕は今、従業員専用通路のベンチに座り、彼を待っている。
手持ち無沙汰なので適当にスマホを弄るけれど、彼と飲みに行けるのが結構嬉しくて、ずっと彼のメッセージアプリのアイコンを眺めていた。
店長会の後に交換した連絡先。
彼のアイコンの絵は、MARVEL作品の中に出てくる筋肉がムキムキの強そうなキャラクターだった。僕は観たことは無いけど、そういうの好きなのかもしれないな。
色々と新たな発見をする度に、もっと知りたいという欲求も増えていく。
(ビール一杯奢るって約束だけど、全部支払ってもあげても全然いいけどな……きっと彼の方がうんと年下だし……あぁでも、いきなりそんな事したら困らせてしまうかな)
「青山店長~」
顔を上げると、森下くんは警備員に従業員証を見せながらこちらに手を振っていた。
そんな遠いところから呼ばれて、ちょっと恥ずかしくなる。
けれど森下くんは、いい笑顔だ。
格好は、上は店で着用していたブルーのシャツで、下はネイビーのクロップドパンツに着替えていた。ザ・ノース・フェイスの赤いトートバッグを肩から下げて。
スマホに映っている彼のアイコンのキャラクターと目を合わせてアプリを落とし、森下くんの隣を歩いて外に出る。
僕よりも10センチくらい背が高い彼。
見上げる事が出来ずに、ひたすら地面をウロウロさ迷う僕の視線。
「どこに行くか決めました?」
「うん、やっぱりすぐそこの焼き鳥屋がいいと思うんですよね。駅前まで行くと、君の帰りが大変だろうし」
「えぇ、そんな事考えてくれてたんですか? 優しいね、店長」
森下くんはここから歩いてすぐのアパートに住んでいるという。
僕はここまで電車とバスで通っているから駅前でもいいけれど、そこの焼き鳥屋も安くて美味しいとの評判だから丁度良い。
赤い提灯が見えてくるのと同時に、店員の威勢のいい声も聞こえてくる。
磨りガラスの向こうは熱気が篭っていて、いつもは空いているはずの外のテーブル席にも人が座っていたから、もしや、も思いながら引き戸を開けて中を覗いた。
何度か来ているから、ここの店員とは顔見知りだ。
一番仲の良い店員と目が合うと、その子は客と客の間をくぐり抜けてこちらにやってきた。
「すいません、今満席で」
「待ってたら入れそう?」
「お二人ですか? そうですね~……団体さんのご予約なんで、ちょっとお待たせしちゃうと思うんですけど……」
「そっか。じゃあ、また今度にしようかな」
店員はまた「すいませーん」とペコペコしながら、次回使える割引券と一杯無料サービス券を森下くんの分までくれた。
礼を言って外に出て、スマホでこの近辺の飲み屋を検索した。
「すみません、タイミングが悪かったです。あんなに混んでるとは思っていなくて」
「給料日後だからですかね。他にどこかありそうですか?」
一緒になってスマホの画面を見るけど、やはり飲み屋は駅前に集中してあるから、そこまで行くしか無さそうだ。
それか、今日は諦めてまたの機会にするとか……
それは嫌だ。今日せっかく話が出来るチャンスなのだから。
「森下くん、悪いんですけど、やっぱり駅の方へ行きましょうか。バスならまだ出ていますし」
「飲み屋じゃないとダメですかね?」
「え?」
「俺ん家で宅飲みは嫌ですか?」
パチパチパチ。僕は瞬きを繰り返す。
──あの、その、全然、嫌じゃないですよ。
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