25 / 55
愛人ではなく正妻に?
しおりを挟む
隣国、アステアの第三王子、クラジオの部屋の前にて。
――クラジオは第三王子であるから仕えるものとしてクラジオ様と呼ぶべきなのだが、クラジオは隣国の人間であり、そして私は姫様に永遠の忠誠を誓った人間であるがゆえ、心の中ではクラジオと呼ばせていただく。ごめんね。
コンコンコン。
軽快なノックの音が響く。
「おはようございまーす、本日から新しく配属された者ですがー……」
返事がない。
「おはようございまーす……入りますよー?」
扉をノックしても返事が聞こえなかったら迷わず突入していいとノリアから言われていたので、私は迷わずそれを実行した。
中に入ると、そこはいかにもな煌びやかで豪華絢爛、王族らしい部屋――は無かった。
ちょっといいとこの坊ちゃんの方が物があるだろうというくらいに質素で簡素、よく言えば清潔感のある部屋だ。――悪く言えば、殺風景な部屋なのだが。
「おはようございます、クラジオ様。朝ですよ」
そう声をかけ、私は第三王子――クラジオ・フォン・アステアの肩を叩く。(もちろん、失礼のない程度にソフトタッチに叩いた)
「…………」
沈黙。
「クラジオ様ぁ、朝ですよー」
「……るさい」
「え?」
「うるさい、黙れ」
んなっ!コイツ、わざわざ人にモーニングコール頼んでおいてなんて態度!
ノリアやルーノの言う通り、この人は性格が悪い!
「おはようございます、クラジオ様」
まぁここは前世で培ってきたスキル:鉄壁の笑顔と緊急回避を使った。
「…………おぉ」
クラジオはそれだけ呟くと、ムクリと起き上がった。
「お前が……例の」
「例の、なんでしょう?」
クラジオの口から何が飛び出すのか。
「隣国でえげつないメイドがいると噂を聞いていたのでな」
「えげつないメイド……?誰のことでしょう。わたくしにはさっぱり分かりかねます」
「いや、お前以外いないだろう」
何を言っているんだ、クラジオは。
「わたくしのどこがえげつないのでしょう?わたくしはただ姫様に忠誠を誓ったしがないメイドなのですが」
「いやいやいや。お前の噂はここまで聞こえてるぞ。……姫のためなら人を殺すのも躊躇ない非人道的な人間、姫が好きすぎてもはや狂人、姫のためにとなんでもできるようになった超人……他にも色々あるが、人間扱いされてるものは少ないな」
「……さいですか」
溜息をつきたくなる内容ばかりだった。――まぁ全て当たらずも遠からずなのだが。
「ただひとつ訂正させていただくなら、わたくしはなんでもはできません」
「ふむ……お前は護衛兼メイドとして雇われたんだよな。武術は?」
「いえ、最初はメイドだけだったんですけどね。姫様が美しすぎて……わたくしひとりで姫様の身の回りのこと全てできるように、と武術も嗜むようになった程度です。まぁ、リエールの王立騎士団の団長ならば一太刀入れれますかね」
「……メイドとしての仕事は」
「お茶ならメイド長にお墨付きをいただきました。どころか私を越えた、と泣きつかれました。茶菓子は……まぁ料理長から認めてもらえましたけど、得意というほどではありません。大体の料理もお菓子も作れるかな、くらいです」
皆様お忘れかもしれないが、料理長――ドドリーの存在だ。
私は恋愛フラグを回避するために彼から嫌われようと嫌がらせをしたのだが、嫌われすぎた。ドドリーからもうマカロン様を貰えなくなってしまった。――その代わりに料理人のカルラから色々貰える(餌付けされているとも言う)ので特に気にしていない。
私は姫様のために料理もできるようになりたいと思い、前世もからっきしだった料理だったが、そのドドリーに料理の教えを乞うていた。だがしかし、いつしか「本当に初心者だったのか……?」と訝しく見られ、「不敬罪とかでメイド辞職なんてことになったらここに来てもいいぞ。俺は嫌なんだが……カルラも他の奴らもお前のことをかなり気に入っているみたいだからな。どうだ?」と再就職を勧められた。……本当にコイツの恋愛フラグ折れたんだよね、大丈夫だよね……?
「他にできることは?」
「他……勉学なら姫様が教師の方より教えていただいたことの補足説明程度なら。あとは、レース編みや刺繍を少々。お金取れるレベルですよ」
私ができることをいくつか列挙していくうち、クラジオの顔色がどんどん変わっていった。
「……いや待て、本当にこんな化け物がメイドなんてやってていいのか……?野放しにしてたら……下手したら国ひとつは滅ぶぞ……」
とてつもなく不名誉で事実無根なことを仰った。国滅ぼすとかできるわけない。
そしてしばしの沈黙ののち、据わった目を私に向けてきた。彼の目は青く、しかし見る方向によって緑色にも見える不思議な目で……とても神秘的な瞳だと思った。
「お前の姫がアステアを滅ぼせと言ったら?」
「まぁ時間はかかるでしょうが……アステアくらいなら滅ぼせるかもしれません」
「……怖。敵に回したくない人間だな」
「お褒めにあずかり光栄です」
ニッコリと笑っておく。……姫様のためなら何だってしてやる精神だからな、短期決戦はできないが、長期戦に持ち込めば勝てる。それが軍事国家だろうとなんだろうと確実に殺る。
「……もう何もかもが怖く感じる。笑うな。ずっと無表情で頼む」
「なんて失礼な……」
「失礼もなにも、俺はこの国の第三王子だぞ。お前の方が失礼極まりないだろう」
「……はっ、そうでした!失礼致しました……なんて謝ると思いまして?わたくしの忠誠は姫様に誓ったのです。たかが隣国の第三王子でしたら忠誠を誓う……なんてことありえませんし、第一わたくしが嫌です」
……しばし沈黙。その間クラジオは無表情で、全く動かない。
さすがに失礼なことを言いすぎたか、と少し焦っていると、突然クラジオは肩を震わせた。
「……はっはっは!まさかこの俺にそんな口を利く奴がいるとはな!とんだ掘り出し物だ!面白い、気に入った!」
「いや別に気に入ってもらわなくても……」
「こんな逸材をリエールのメイドにしておくのは勿体ない……どうだ、俺の妻にならないか?」
……はい?
「愛人ではなく正妻に。どうだ、悪い話ではないだろう」
……仰ってる意味が分かりませんね。愛人ではなく正妻に?何故私は隣国の王子に求婚されているのでしょうか?
というかそもそも、このくらいの地位の人なら婚約者とか寵姫のひとりやふたりいてもおかしくないだろう。その人を差し置いて正妻に?アホか。
「申し訳ございません、わたくしは姫様とリエールに全てを捧げましたので、クラジオ様に捧げるものは何ひとつとして残っておりません。それに、第三王子ともなれば婚約者くらいいるでしょう。その方を差し置いて正妻になるなんて嫌です。丁重にお断りさせていただきます」
そう言って、私ははたと気がついた。
「……クラジオ様、朝食の時間を大幅に過ぎています!早く準備してください!」
朝食の時間をだいぶ過ぎてしまっていた。私が余計なことを話したせいでもあり、クラジオが余計なことを聞いてくるせいでもある。断じて私ひとりのせいではない。
「ふはは、これは毎日が少し楽しくなりそうだな。……なにがなんでも囲ってやる」
ポツリ呟かれたその言葉は、朝食のことしか考えていなかった私には聞こえなかった。
――クラジオは第三王子であるから仕えるものとしてクラジオ様と呼ぶべきなのだが、クラジオは隣国の人間であり、そして私は姫様に永遠の忠誠を誓った人間であるがゆえ、心の中ではクラジオと呼ばせていただく。ごめんね。
コンコンコン。
軽快なノックの音が響く。
「おはようございまーす、本日から新しく配属された者ですがー……」
返事がない。
「おはようございまーす……入りますよー?」
扉をノックしても返事が聞こえなかったら迷わず突入していいとノリアから言われていたので、私は迷わずそれを実行した。
中に入ると、そこはいかにもな煌びやかで豪華絢爛、王族らしい部屋――は無かった。
ちょっといいとこの坊ちゃんの方が物があるだろうというくらいに質素で簡素、よく言えば清潔感のある部屋だ。――悪く言えば、殺風景な部屋なのだが。
「おはようございます、クラジオ様。朝ですよ」
そう声をかけ、私は第三王子――クラジオ・フォン・アステアの肩を叩く。(もちろん、失礼のない程度にソフトタッチに叩いた)
「…………」
沈黙。
「クラジオ様ぁ、朝ですよー」
「……るさい」
「え?」
「うるさい、黙れ」
んなっ!コイツ、わざわざ人にモーニングコール頼んでおいてなんて態度!
ノリアやルーノの言う通り、この人は性格が悪い!
「おはようございます、クラジオ様」
まぁここは前世で培ってきたスキル:鉄壁の笑顔と緊急回避を使った。
「…………おぉ」
クラジオはそれだけ呟くと、ムクリと起き上がった。
「お前が……例の」
「例の、なんでしょう?」
クラジオの口から何が飛び出すのか。
「隣国でえげつないメイドがいると噂を聞いていたのでな」
「えげつないメイド……?誰のことでしょう。わたくしにはさっぱり分かりかねます」
「いや、お前以外いないだろう」
何を言っているんだ、クラジオは。
「わたくしのどこがえげつないのでしょう?わたくしはただ姫様に忠誠を誓ったしがないメイドなのですが」
「いやいやいや。お前の噂はここまで聞こえてるぞ。……姫のためなら人を殺すのも躊躇ない非人道的な人間、姫が好きすぎてもはや狂人、姫のためにとなんでもできるようになった超人……他にも色々あるが、人間扱いされてるものは少ないな」
「……さいですか」
溜息をつきたくなる内容ばかりだった。――まぁ全て当たらずも遠からずなのだが。
「ただひとつ訂正させていただくなら、わたくしはなんでもはできません」
「ふむ……お前は護衛兼メイドとして雇われたんだよな。武術は?」
「いえ、最初はメイドだけだったんですけどね。姫様が美しすぎて……わたくしひとりで姫様の身の回りのこと全てできるように、と武術も嗜むようになった程度です。まぁ、リエールの王立騎士団の団長ならば一太刀入れれますかね」
「……メイドとしての仕事は」
「お茶ならメイド長にお墨付きをいただきました。どころか私を越えた、と泣きつかれました。茶菓子は……まぁ料理長から認めてもらえましたけど、得意というほどではありません。大体の料理もお菓子も作れるかな、くらいです」
皆様お忘れかもしれないが、料理長――ドドリーの存在だ。
私は恋愛フラグを回避するために彼から嫌われようと嫌がらせをしたのだが、嫌われすぎた。ドドリーからもうマカロン様を貰えなくなってしまった。――その代わりに料理人のカルラから色々貰える(餌付けされているとも言う)ので特に気にしていない。
私は姫様のために料理もできるようになりたいと思い、前世もからっきしだった料理だったが、そのドドリーに料理の教えを乞うていた。だがしかし、いつしか「本当に初心者だったのか……?」と訝しく見られ、「不敬罪とかでメイド辞職なんてことになったらここに来てもいいぞ。俺は嫌なんだが……カルラも他の奴らもお前のことをかなり気に入っているみたいだからな。どうだ?」と再就職を勧められた。……本当にコイツの恋愛フラグ折れたんだよね、大丈夫だよね……?
「他にできることは?」
「他……勉学なら姫様が教師の方より教えていただいたことの補足説明程度なら。あとは、レース編みや刺繍を少々。お金取れるレベルですよ」
私ができることをいくつか列挙していくうち、クラジオの顔色がどんどん変わっていった。
「……いや待て、本当にこんな化け物がメイドなんてやってていいのか……?野放しにしてたら……下手したら国ひとつは滅ぶぞ……」
とてつもなく不名誉で事実無根なことを仰った。国滅ぼすとかできるわけない。
そしてしばしの沈黙ののち、据わった目を私に向けてきた。彼の目は青く、しかし見る方向によって緑色にも見える不思議な目で……とても神秘的な瞳だと思った。
「お前の姫がアステアを滅ぼせと言ったら?」
「まぁ時間はかかるでしょうが……アステアくらいなら滅ぼせるかもしれません」
「……怖。敵に回したくない人間だな」
「お褒めにあずかり光栄です」
ニッコリと笑っておく。……姫様のためなら何だってしてやる精神だからな、短期決戦はできないが、長期戦に持ち込めば勝てる。それが軍事国家だろうとなんだろうと確実に殺る。
「……もう何もかもが怖く感じる。笑うな。ずっと無表情で頼む」
「なんて失礼な……」
「失礼もなにも、俺はこの国の第三王子だぞ。お前の方が失礼極まりないだろう」
「……はっ、そうでした!失礼致しました……なんて謝ると思いまして?わたくしの忠誠は姫様に誓ったのです。たかが隣国の第三王子でしたら忠誠を誓う……なんてことありえませんし、第一わたくしが嫌です」
……しばし沈黙。その間クラジオは無表情で、全く動かない。
さすがに失礼なことを言いすぎたか、と少し焦っていると、突然クラジオは肩を震わせた。
「……はっはっは!まさかこの俺にそんな口を利く奴がいるとはな!とんだ掘り出し物だ!面白い、気に入った!」
「いや別に気に入ってもらわなくても……」
「こんな逸材をリエールのメイドにしておくのは勿体ない……どうだ、俺の妻にならないか?」
……はい?
「愛人ではなく正妻に。どうだ、悪い話ではないだろう」
……仰ってる意味が分かりませんね。愛人ではなく正妻に?何故私は隣国の王子に求婚されているのでしょうか?
というかそもそも、このくらいの地位の人なら婚約者とか寵姫のひとりやふたりいてもおかしくないだろう。その人を差し置いて正妻に?アホか。
「申し訳ございません、わたくしは姫様とリエールに全てを捧げましたので、クラジオ様に捧げるものは何ひとつとして残っておりません。それに、第三王子ともなれば婚約者くらいいるでしょう。その方を差し置いて正妻になるなんて嫌です。丁重にお断りさせていただきます」
そう言って、私ははたと気がついた。
「……クラジオ様、朝食の時間を大幅に過ぎています!早く準備してください!」
朝食の時間をだいぶ過ぎてしまっていた。私が余計なことを話したせいでもあり、クラジオが余計なことを聞いてくるせいでもある。断じて私ひとりのせいではない。
「ふはは、これは毎日が少し楽しくなりそうだな。……なにがなんでも囲ってやる」
ポツリ呟かれたその言葉は、朝食のことしか考えていなかった私には聞こえなかった。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
【完結】公爵令嬢は王太子殿下との婚約解消を望む
むとうみつき
恋愛
「お父様、どうかアラン王太子殿下との婚約を解消してください」
ローゼリアは、公爵である父にそう告げる。
「わたくしは王太子殿下に全く信頼されなくなってしまったのです」
その頃王太子のアランは、婚約者である公爵令嬢ローゼリアの悪事の証拠を見つけるため調査を始めた…。
初めての作品です。
どうぞよろしくお願いします。
本編12話、番外編3話、全15話で完結します。
カクヨムにも投稿しています。
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
悪役令嬢の居場所。
葉叶
恋愛
私だけの居場所。
他の誰かの代わりとかじゃなく
私だけの場所
私はそんな居場所が欲しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。
※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。
※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。
※完結しました!番外編執筆中です。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる