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"リベリル"と名乗ったその人は僕を殴る事もなく、僕から少し離れた所でニコニコと微笑んでいた。僕に笑い掛けてくれる人がいた事に心が満たされていくのが分かった。たとえ罠だとしてもいい。一時の夢を見させて欲しい。そう思っていたけど、ふと現実に引き戻される。僕はリベリルさんの笑顔に惹かれたけどあまりの眩しさにそっと目を逸らす。僕が見ていたら汚れるから。
そう思うとまた先程の恐怖が再発する。
この人はテキ?ミカタ?
ぐるぐると回る頭を抱えながら悶々としていると、いつも僕の部屋にやってくるネズミさんがやってきた。いつものように手に乗せて見つめ合う。すると急に視界の端でリベリルさんがうずくまっているのが見えた。僕が慌てて視線を移すと、リベリルさんが「ぐうっ」と苦しそうな声をあげていた。
考えるよりも先に体が動いた。気がつけば、恐怖の対象であったはずのリベリルさんに声をかけていた。久しぶりに声を出すためそれは誰の声にも聞こえないような大きさだった。
「 だ、だいじょうぶ?」
するとリベリルさんは苦しそうな顔をこちらに向けたと思うと、リベリルさんの頬をつうっと一筋の涙が流れた。僕はこれは一大事だと思い意味もなく手をバタつかせてしまった。
僕のセイだ、僕が近づいたからだ。
「ごめんなさい」
心の中でそう謝る。リベリルさんはそれを知ってか知らずか、ふと柔らかい笑みを零して
「大丈夫だよ」
と言う。こんなに僕に優しく接してくれる人に出会った事なんてなかった。
僕は嬉しさのあまり、足の力がふにゃりと抜け、
「良かった・・・」
ため息混じりに僕はそう呟いた。
そう思うとまた先程の恐怖が再発する。
この人はテキ?ミカタ?
ぐるぐると回る頭を抱えながら悶々としていると、いつも僕の部屋にやってくるネズミさんがやってきた。いつものように手に乗せて見つめ合う。すると急に視界の端でリベリルさんがうずくまっているのが見えた。僕が慌てて視線を移すと、リベリルさんが「ぐうっ」と苦しそうな声をあげていた。
考えるよりも先に体が動いた。気がつけば、恐怖の対象であったはずのリベリルさんに声をかけていた。久しぶりに声を出すためそれは誰の声にも聞こえないような大きさだった。
「 だ、だいじょうぶ?」
するとリベリルさんは苦しそうな顔をこちらに向けたと思うと、リベリルさんの頬をつうっと一筋の涙が流れた。僕はこれは一大事だと思い意味もなく手をバタつかせてしまった。
僕のセイだ、僕が近づいたからだ。
「ごめんなさい」
心の中でそう謝る。リベリルさんはそれを知ってか知らずか、ふと柔らかい笑みを零して
「大丈夫だよ」
と言う。こんなに僕に優しく接してくれる人に出会った事なんてなかった。
僕は嬉しさのあまり、足の力がふにゃりと抜け、
「良かった・・・」
ため息混じりに僕はそう呟いた。
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