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後悔 (攻め視点)
後悔8
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「レイン様、大好き」
「エル、僕もだよ」
楽しかった過去を思い出す。ベッドにいるエルと毎日話した。表情豊かで、一挙一動が可愛かった。素直で優しいエルは、廃れていた私の心を温かく包み込んでくれた。色褪せることのない過去を追想する。二度と繰り返すことのないものだとしても。
日記を通して
幼い頃の記憶をたぐるように思い出す。
私に会えなくなってからの日記は止まっており、それ以降の事は日記に書かれていない。エルを知りたい。その思いでエルがいた部屋へと向かう。
エルの部屋にあるものの殆どが綺麗に片付けられ、家具だけが静かに人の訪れを待っていた。ふと、机に視線がいく。机の上には、ノートが一冊置いてあった。
私は飛びついた。表紙には何も書かれていないが、私が持っている日記とそっくりな作りになっていた。これはエルの日記だと確信し、そっと最初のページを開く。
ーーー2月10日
レイン様は僕を覚えてはいない。僕を愛してはいない。僕のこの気持ちは絶対にバレてはいけないーーー
初め、玄関でエルに「お帰りなさい」と微笑まれた時、心臓が跳ね上がった。透き通るような白い肌。ぱっちりとした宝石のような瞳をこちらに向けてきたエル。体は華奢で私が触ればポキリと折れてしまいそうな儚さを持っていた。そして何より、エルの心の美しさを反映させたかのような白い髪。まさに天使だった。後ろにいた護衛達もあまりの美しさに「天使様だ、」と呟くくらいだ。だが、私はエルの事を警戒していた。なんせ、政略結婚。親同士の勝手な私情に使われただけで、私はエルに対する愛情など1つもなかった。むしろ、3、4年すれば伯爵家の財政も回復するだろうから、離婚しようと思っていた程だ。だから私は言ってやった。それがどれ程エルを苦しめるのかも知らずに。
「私はお前を愛する気は無い。」
あの時のエルの顔は、今でも鮮明に思い出せる。先程の笑顔とは一転し、顔を歪ませ、必死に泣くのを堪えるような表情をして、俯いた。
そこで私も気が付く。私が彼を傷付けてしまった事を。私は、過去のこともあり、人を傷付ける行為だけはしたく無かった。初めて、私の所為で傷付いてしまった人間が出来たことに動揺し、その場で上手くフォローに回ることもできずに逃げるようにその場を去った。
その後、執務室に篭もり、エルの事で頭の大半を使いながら、仕事に取り掛かる。
暫くして、執事が夕食で呼びに来た。エルはもう来ているのだろうか、と少しドキドキしながら食堂へと向かう。いくら待ってもエルが現れることはなかった。食事中、玄関にいた者は私に「お前の所為だ」と言わんばかりの鋭い視線を向けてきた。
その日の夜は中々寝付けず、次の日は寝不足になってしまった。
「エル、僕もだよ」
楽しかった過去を思い出す。ベッドにいるエルと毎日話した。表情豊かで、一挙一動が可愛かった。素直で優しいエルは、廃れていた私の心を温かく包み込んでくれた。色褪せることのない過去を追想する。二度と繰り返すことのないものだとしても。
日記を通して
幼い頃の記憶をたぐるように思い出す。
私に会えなくなってからの日記は止まっており、それ以降の事は日記に書かれていない。エルを知りたい。その思いでエルがいた部屋へと向かう。
エルの部屋にあるものの殆どが綺麗に片付けられ、家具だけが静かに人の訪れを待っていた。ふと、机に視線がいく。机の上には、ノートが一冊置いてあった。
私は飛びついた。表紙には何も書かれていないが、私が持っている日記とそっくりな作りになっていた。これはエルの日記だと確信し、そっと最初のページを開く。
ーーー2月10日
レイン様は僕を覚えてはいない。僕を愛してはいない。僕のこの気持ちは絶対にバレてはいけないーーー
初め、玄関でエルに「お帰りなさい」と微笑まれた時、心臓が跳ね上がった。透き通るような白い肌。ぱっちりとした宝石のような瞳をこちらに向けてきたエル。体は華奢で私が触ればポキリと折れてしまいそうな儚さを持っていた。そして何より、エルの心の美しさを反映させたかのような白い髪。まさに天使だった。後ろにいた護衛達もあまりの美しさに「天使様だ、」と呟くくらいだ。だが、私はエルの事を警戒していた。なんせ、政略結婚。親同士の勝手な私情に使われただけで、私はエルに対する愛情など1つもなかった。むしろ、3、4年すれば伯爵家の財政も回復するだろうから、離婚しようと思っていた程だ。だから私は言ってやった。それがどれ程エルを苦しめるのかも知らずに。
「私はお前を愛する気は無い。」
あの時のエルの顔は、今でも鮮明に思い出せる。先程の笑顔とは一転し、顔を歪ませ、必死に泣くのを堪えるような表情をして、俯いた。
そこで私も気が付く。私が彼を傷付けてしまった事を。私は、過去のこともあり、人を傷付ける行為だけはしたく無かった。初めて、私の所為で傷付いてしまった人間が出来たことに動揺し、その場で上手くフォローに回ることもできずに逃げるようにその場を去った。
その後、執務室に篭もり、エルの事で頭の大半を使いながら、仕事に取り掛かる。
暫くして、執事が夕食で呼びに来た。エルはもう来ているのだろうか、と少しドキドキしながら食堂へと向かう。いくら待ってもエルが現れることはなかった。食事中、玄関にいた者は私に「お前の所為だ」と言わんばかりの鋭い視線を向けてきた。
その日の夜は中々寝付けず、次の日は寝不足になってしまった。
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