僕の大好きな旦那様は後悔する

小町

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遠征

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   「遠征?」
   
  「はい。行きだけで1ヶ月はかかるので、かなり遠くの遠征になるそうです。」

 執事さんからレイン様の遠征を聞く。遠くに行くようで、半年は帰って来られないようだ。僕は、彼に御守りを作りたくて庭園へと向かう。1つの花を摘み、それを加工してペンダントにする。


 
 レイン様をお見送りする時に

 「あの、今回の遠征はかなりのものだと聞いて、お守りを、作りました。良ければ、、」


 とそっとペンダントを差し出す。するとレイン様は信じられないものも見るような目で僕とペンダントを交互に見る。何とも言えない時間が流れる。それから何秒かしてレイン様がそっとペンダントを持ち上げる。

 「媚び売りか、、、ふん、いいだろう乗ってやる。」

 そう僕に告げ、ペンダントを首にかけると馬車へと乗っていった。

 何をしてもレイン様の僕に対する評価は変わらない。
 分かっていたはずだがズキンと心臓が痛む。
ぐっと涙を堪えながら屋敷へと引き返して行った。




 自室に戻りレイン様がいない間に任された仕事に取り掛かろうとした時、コンコンと音がし、執事さんが入って来た。


 「奥様、少し宜しいでしょうか。レイン様の奥様に対するあの態度についてなんですが、」
 「レイン様の?うん、話して欲しいです!」

 と息巻く。レイン様のあの態度の理由が分かるのだ。
僕はこれをきっかけにレイン様に寄り添えたらいいと思うのだ。執事さんの言葉に身構える。

 「レイン様は幼い頃からあの美貌でして、それはもう沢山の貴族の方に迫られていました。レイン様はその頃から人間不信になられたようで、昔から傍で仕えていた者にだけ、心を許すようになりました。それは大人になっても続き、婚約までいくもののレイン様のあの態度に誰も耐えられず、ご子息、ご令嬢は1ヶ月で逃げ出しました。元々、親同士の勝手な婚約だったので、、、ただ、奥様だけは、レイン様に寄り添って下さった。たった1人の特別な方です。レイン様は今まで都でずっと仕事に明け暮れていましたが、奥様がいらっしゃってから、ずっとこの屋敷にいらっしゃるのです。、、、レイン様が以前よりも明るくなったとこの家のもの一同申しております。」

 と震える声で何とか声を絞り出している執事さん。
 レイン様の過去を思うと自然とポロポロ涙が零れ落ちる。

 「レイン様にそんな、、、辛い過去があったのですね、、、。僕がレイン様を少しでも支えられるのなら支えたい。」
 
 僕は初め、レイン様に絶望した。昔のレイン様と違いすぎて。ただ、その原因がレイン様の過去にあるならそれを拭えるような今を僕がレイン様に与えられたら良い。



  僕はこの恋を諦めないだろう
 
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