僕の大好きな旦那様は後悔する

小町

文字の大きさ
上 下
6 / 25

おそろい

しおりを挟む
   「まぁまぁまぁ!!」
 
 メイドさんの1人が感動に似た声をあげる。僕も同じように手で口を押さえ、感嘆の声を漏らす。
僕らが今見ているのは、レイン様がパーティーで着るように、とプレゼントしてくださった服一式だ。レイン様の髪色と同じ色のタキシード。ジャケットは宝石か何かが散りばめられているのだろう、光を受け美しく輝いている。

 着てみると僕の体にピッタリでレイン様の気遣いに心があたたかくなる。そんな僕に気がついた執事さんがボソリと教えてくださった。

   「そちら、旦那様がオーダーメイドでご注文されたものなんですよ」

 僕はその言葉にいてもたってもいられず気がつけば部屋を飛び出していた。廊下を走り抜けノックもせずレイン様のいる執務室を開けた。
 驚いた表情のレイン様と目が合う。僕は固まる。レイン様の余りの美しさに。いつも目を隠している前髪は後ろへと撫でつけられている。レイン様の凛々しい眉とくっきりとした鼻筋。全てが美しかった。そして何より僕と同じデザインのタキシードに身を固めた姿。
 声が出せずただ只管と眺める。余りに僕が見つめていたせいで、段々とレイン様の眉間に皺がよっていく。

 「何だ」
 
と低い声で問われる。
僕は何とか声を捻り出して、

 「と、突然の訪問、お許しください。あ、あの、ぼ、僕、、、わ、私の正装をオーダーメイドでつ、作ってくださったとお聞きし、お礼に伺いました。ありがとうございます」

どもりながらも、何とかお礼の言葉を告げる。レイン様と目が合うと一気に落ち着きを取り戻す。僕はなんて失態を犯したのだろうと、顔が熱くなっていく。俯き気味になっていると、レイン様は短く

 「あぁ、」

 と言い僕の横を素通りする。今までにないほどの冷たさを向けられ、高揚していた心臓も段々と落ち着きを取り戻していく。お礼なんて迷惑だったのかな、また現金なヤツなんて思われたのかな、と胸をかき混ぜらながらトボトボと自室へと引き返して行った。




 そこからは落ち込む暇もない程忙しかった。パーティに来訪される方はほとんどレイン様繋がりの方ばかりだ。僕も名だけではあるが、レイン様の妻のため沢山の方と挨拶をして周らなければならなかった。その間レイン様と腕を組むという形で、早くなる鼓動を抑えるのに必死だった。
 周りには、夫夫仲は良好に見えているらしく、僕は嘘でも笑顔を振りまかなくてはならなかったが。これがホントの仮面夫夫。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

処理中です...