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おそろい
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「まぁまぁまぁ!!」
メイドさんの1人が感動に似た声をあげる。僕も同じように手で口を押さえ、感嘆の声を漏らす。
僕らが今見ているのは、レイン様がパーティーで着るように、とプレゼントしてくださった服一式だ。レイン様の髪色と同じ色のタキシード。ジャケットは宝石か何かが散りばめられているのだろう、光を受け美しく輝いている。
着てみると僕の体にピッタリでレイン様の気遣いに心があたたかくなる。そんな僕に気がついた執事さんがボソリと教えてくださった。
「そちら、旦那様がオーダーメイドでご注文されたものなんですよ」
僕はその言葉にいてもたってもいられず気がつけば部屋を飛び出していた。廊下を走り抜けノックもせずレイン様のいる執務室を開けた。
驚いた表情のレイン様と目が合う。僕は固まる。レイン様の余りの美しさに。いつも目を隠している前髪は後ろへと撫でつけられている。レイン様の凛々しい眉とくっきりとした鼻筋。全てが美しかった。そして何より僕と同じデザインのタキシードに身を固めた姿。
声が出せずただ只管と眺める。余りに僕が見つめていたせいで、段々とレイン様の眉間に皺がよっていく。
「何だ」
と低い声で問われる。
僕は何とか声を捻り出して、
「と、突然の訪問、お許しください。あ、あの、ぼ、僕、、、わ、私の正装をオーダーメイドでつ、作ってくださったとお聞きし、お礼に伺いました。ありがとうございます」
どもりながらも、何とかお礼の言葉を告げる。レイン様と目が合うと一気に落ち着きを取り戻す。僕はなんて失態を犯したのだろうと、顔が熱くなっていく。俯き気味になっていると、レイン様は短く
「あぁ、」
と言い僕の横を素通りする。今までにないほどの冷たさを向けられ、高揚していた心臓も段々と落ち着きを取り戻していく。お礼なんて迷惑だったのかな、また現金なヤツなんて思われたのかな、と胸をかき混ぜらながらトボトボと自室へと引き返して行った。
そこからは落ち込む暇もない程忙しかった。パーティに来訪される方はほとんどレイン様繋がりの方ばかりだ。僕も名だけではあるが、レイン様の妻のため沢山の方と挨拶をして周らなければならなかった。その間レイン様と腕を組むという形で、早くなる鼓動を抑えるのに必死だった。
周りには、夫夫仲は良好に見えているらしく、僕は嘘でも笑顔を振りまかなくてはならなかったが。これがホントの仮面夫夫。
メイドさんの1人が感動に似た声をあげる。僕も同じように手で口を押さえ、感嘆の声を漏らす。
僕らが今見ているのは、レイン様がパーティーで着るように、とプレゼントしてくださった服一式だ。レイン様の髪色と同じ色のタキシード。ジャケットは宝石か何かが散りばめられているのだろう、光を受け美しく輝いている。
着てみると僕の体にピッタリでレイン様の気遣いに心があたたかくなる。そんな僕に気がついた執事さんがボソリと教えてくださった。
「そちら、旦那様がオーダーメイドでご注文されたものなんですよ」
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驚いた表情のレイン様と目が合う。僕は固まる。レイン様の余りの美しさに。いつも目を隠している前髪は後ろへと撫でつけられている。レイン様の凛々しい眉とくっきりとした鼻筋。全てが美しかった。そして何より僕と同じデザインのタキシードに身を固めた姿。
声が出せずただ只管と眺める。余りに僕が見つめていたせいで、段々とレイン様の眉間に皺がよっていく。
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「と、突然の訪問、お許しください。あ、あの、ぼ、僕、、、わ、私の正装をオーダーメイドでつ、作ってくださったとお聞きし、お礼に伺いました。ありがとうございます」
どもりながらも、何とかお礼の言葉を告げる。レイン様と目が合うと一気に落ち着きを取り戻す。僕はなんて失態を犯したのだろうと、顔が熱くなっていく。俯き気味になっていると、レイン様は短く
「あぁ、」
と言い僕の横を素通りする。今までにないほどの冷たさを向けられ、高揚していた心臓も段々と落ち着きを取り戻していく。お礼なんて迷惑だったのかな、また現金なヤツなんて思われたのかな、と胸をかき混ぜらながらトボトボと自室へと引き返して行った。
そこからは落ち込む暇もない程忙しかった。パーティに来訪される方はほとんどレイン様繋がりの方ばかりだ。僕も名だけではあるが、レイン様の妻のため沢山の方と挨拶をして周らなければならなかった。その間レイン様と腕を組むという形で、早くなる鼓動を抑えるのに必死だった。
周りには、夫夫仲は良好に見えているらしく、僕は嘘でも笑顔を振りまかなくてはならなかったが。これがホントの仮面夫夫。
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