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第二章 宮藤喜左衛門
第018話 事件
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さて喜左衛門ら村役人たちは、昼食を挟んで午後も引き続き話し合いを続けていた。
座敷奥の書院で車座になっていると、障子の向こうで、
「武兵衛様、大変だで!」
と、大声がした。
武兵衛に限らず、合議に参加していた者たち一同、皆顔を見合わせた。
普段村の者には、何事か用事があれば勝手口へと廻るよう言いつけてある。
その指示を破って、障子越しとはいえ、庭から大音で呼びかけるとはただ事ではない。
それでも武兵衛は、落ち着き払って立ち上がりながら、
「そんなに慌ててどうした?」
叱るように言うと、障子の向こうから、
「や、山におったお侍が、あやめ様に襲い掛かってあたけてるんだ」
慌てた様子のままで答えが返ってきた。
返答からは細かい事までは分からないが、武兵衛には直ぐにピンと来るものがあった。
「なに?小菅殿がだと!」
言いながら障子を開け放つと、そこには、屋敷で下働きをしている男が、泣き出しそうな顔をして立っていた。
「表庭であやめ様がとっつかまりそうだで。やっこさん鉈を手にしてるから、今にも斬られちまうかも知れんど!」
「小菅の奴め…」
顔を紅潮させ憎々し気に呟く武兵衛の後ろを、一人の若武者が、眼にも止まらぬ速さで駆け出して行った。
座敷奥の書院で車座になっていると、障子の向こうで、
「武兵衛様、大変だで!」
と、大声がした。
武兵衛に限らず、合議に参加していた者たち一同、皆顔を見合わせた。
普段村の者には、何事か用事があれば勝手口へと廻るよう言いつけてある。
その指示を破って、障子越しとはいえ、庭から大音で呼びかけるとはただ事ではない。
それでも武兵衛は、落ち着き払って立ち上がりながら、
「そんなに慌ててどうした?」
叱るように言うと、障子の向こうから、
「や、山におったお侍が、あやめ様に襲い掛かってあたけてるんだ」
慌てた様子のままで答えが返ってきた。
返答からは細かい事までは分からないが、武兵衛には直ぐにピンと来るものがあった。
「なに?小菅殿がだと!」
言いながら障子を開け放つと、そこには、屋敷で下働きをしている男が、泣き出しそうな顔をして立っていた。
「表庭であやめ様がとっつかまりそうだで。やっこさん鉈を手にしてるから、今にも斬られちまうかも知れんど!」
「小菅の奴め…」
顔を紅潮させ憎々し気に呟く武兵衛の後ろを、一人の若武者が、眼にも止まらぬ速さで駆け出して行った。
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