1 / 1
雫ちゃん
しおりを挟む
ある日の朝、児童虐待のニュースが流れてきた。それを見た僕は、懐かしいことを思い出した。決して忘れない、忘れてはいけないあの日の出来事。
2か月前の6月8日、青松市の坂本公園で5歳の篠井雫さんが遺体で見つかった事件について、雫さんを虐待、死体遺棄した疑いで逮捕されたのは、母親の篠井絢音容疑者と、父親の拓馬容疑者です。今回の件について警察は、、、
「こんなニュース可哀想ね。」僕の母はテレビを見ながら朝ごはんを食べている。僕はカバンを持ち、いつも通りに「いってらっしゃい」と言う母に「行ってきます」とだけ返して家を出た。スクールバスを待ちながらスマホで動画を流していた。いつも通り学校に行って、授業を受けて、部活をして帰る。そんな変わらない日々の中で、僕は不思議な体験をした。
17時、僕の降りるバス停にスクールバスが着いた。僕はバスの中で寝ていたので気付かなかったが、降りる前にふと窓を見ると、大雨だった。「最悪、傘持ってきてないわ。」そんなことを思いながらバスを降りる。バス停から家まではそんなに遠くなく迎えに来てもらうのは申し訳ないくらいの距離だ。僕はカバンを頭に被せて走り出した。家に着く少し前に僕の方へ走ってくる小さな女の子がいた。その子は傘をさしておらず、不自然なくらいに濡れていた。その子が僕の前まで来て話しかけてきた。「ねぇ、私お家に帰りたいの。でも場所が分からない。」僕はあまりご近所付き合いをしていなかったので、どこの子供か分からなかった。すると女の子は「アパートに住んでるんだけど」と言葉を続けた。アパートならスマホで調べればわかるかもと思った僕は女の子に聞いてみた。「なんて名前のアパート?」女の子は「しらたアパート」とだけ答えた。しらたアパートなんて聞いたことないと思い、スマホで調べてみたが、そんなアパートはこの周辺にはないことが分かった。「しらたアパートで合ってる?」僕は聞いたが、「合ってる、絶対に」とだけ返ってきた。「地域の人に聞いてみるね。」僕はそう言い、近くの家のインターホンを押そうとした。すると女の子は、「大人の人は嫌!」と言って、拒みだした。一向に雨はやむ気配がない中、僕と女の子は会話をしていた。この辺、伊原町のみで検索をかけていたので出てこないと思った僕は、日本全国で「しらたアパート」を検索した。すると、ここからあり得ない程遠い県に存在していた。たった一つ、しらたアパートが。
目を疑った、車で何時間もかかる所にあったのだから。検索にヒットしたのはそこの一棟のみだった。僕は寒そうにしている女の子に着ていたパーカーを渡して聞いた。「本当にしらたアパート?ここからすごく遠いけど」女の子は頷くばかりだった。すると、近くをたまたま通った近所の人が声をかけてきた。「2人してどうしたの?風邪引くよ」僕は女の子との会話を一から話そうとした。しかし、近所の人が来た途端に女の子は「嫌だ!」と言って雨の中走って行った。突然のことに驚いた僕は、「すみません!」と言ってその子を追いかけた。しかし、見失ってしまった。僕は女の子のことを考えながら家に帰った。今思えば警察に話せばよかったと、名前を聞いておけばよかったと後悔しているが、その後悔は意味がないことだと後に気付くことになる。親にも子の話はしていない。それはなぜなのか自分でも分からなかった。そんな事が起きた翌日、休みですっと家にいた僕は、家の電話が鳴る音で目を覚ました。少ししてから電話に出てみると、それは警察からだった。「吉田|さんのお宅ですか?○○警察青松部署ですが、彰人さんは居られますか?」僕はすぐに答えた。「僕が彰人です。○○県の警察さんがどうかしましたか?」「彰人さんでしたか、我々の元にあなたのパーカーが落とし物として届けられていまして」僕は驚いた、○○県は僕の住んでいる所から遠い場所だったからだ。「どうしてそちらに僕のパーカーがあるんですか?」僕の答えに「さて、普段なら落とし物に関して持ち主に連絡はしないのですが、ポケットにあなたの家の電話番号が書かれた紙がはいっていまして、」と言い、さらに言葉を続けた。「実は、坂本公園に落とし物がありまして、このパーカーどうしますか?」という問いに対し、「親と相談します。取りに行くことになったら連絡します」と返答して電話を切った。少しの違和感を覚えながらその場に立っていると、テレビでニュースが流れた。篠井雫ちゃんの件だ。雫ちゃんの顔写真がふと目に入る。その時、電話が再び鳴った。知らない番号からだ。僕は無意識に受話器を取った。すると、小さな声が聞こえた。「お兄ちゃん、ありがとう。またね。」そう言って電話は切れた。その声には聞き覚えがあった。昨日の女の子だ。さっきの電話番号に電話をかけるが繋がらない。その時、今までの事が繋がった。あの女の子は篠井雫ちゃんだ。昨日のニュースの。確信はないが、すぐにさっきの警察署に電話をかける。「もしもし、吉田彰人ですが。僕のパーカー、篠井雫ちゃんのお墓に供えられないでしょうか。」それを聞いた警察が声を出す。「篠井雫さんと関係があるんですか?」「いや、」その問いに僕は言葉を詰まらせる。「やっぱり何でもないです。明日取りに行きます。」そう言って電話を切った。
翌日、僕は電車で○○県の青松市の警察署に直接取りに行き、お礼を言った。その足で坂本公園に行き、雫ちゃんの遺体が遺棄されていたベンチにそっとパーカーをかけた。そして僕は呟いた。「最後に僕を頼ってくれてありがとう。安らかに眠ってください。」
2日後、僕の友達は「お前、なんか憑いてね?俺霊感あるんだけど、」と言ってきた。「一回見てもらった方がいいよ。」僕はこの間の事もあるし、霊媒師さんに見てもらった。霊媒師さんは「あなたには、女の子の霊が憑いています。ただ、悪霊ではありません。あなたと一緒にいることに、とても安心しています。さらに、あなたを悪霊から守ってくれています。なぜか成仏していません。」と言った。雫ちゃんが僕のことを守ってくれているという事実に僕は喜びを感じた。最後に霊媒師さんは僕に向かって言った。「もしあなたが結婚して女の子を授かったら、その子にこう言ってあげなさい。「次は大丈夫だよ。」と。」僕はその日から少し気分が落ち着いている。雫ちゃんの両親のその後は知らないけど、しっかりと罪を償ってほしいと思う。そしてあの日、警察に話せば良かったという後悔は本当に意味がなかった。今は僕と、奥さん、そして産まれたばかりの霙と一緒に楽しい生活を送っている。今はただ一言、霙に言いたい。「幸せにするから」と。
2か月前の6月8日、青松市の坂本公園で5歳の篠井雫さんが遺体で見つかった事件について、雫さんを虐待、死体遺棄した疑いで逮捕されたのは、母親の篠井絢音容疑者と、父親の拓馬容疑者です。今回の件について警察は、、、
「こんなニュース可哀想ね。」僕の母はテレビを見ながら朝ごはんを食べている。僕はカバンを持ち、いつも通りに「いってらっしゃい」と言う母に「行ってきます」とだけ返して家を出た。スクールバスを待ちながらスマホで動画を流していた。いつも通り学校に行って、授業を受けて、部活をして帰る。そんな変わらない日々の中で、僕は不思議な体験をした。
17時、僕の降りるバス停にスクールバスが着いた。僕はバスの中で寝ていたので気付かなかったが、降りる前にふと窓を見ると、大雨だった。「最悪、傘持ってきてないわ。」そんなことを思いながらバスを降りる。バス停から家まではそんなに遠くなく迎えに来てもらうのは申し訳ないくらいの距離だ。僕はカバンを頭に被せて走り出した。家に着く少し前に僕の方へ走ってくる小さな女の子がいた。その子は傘をさしておらず、不自然なくらいに濡れていた。その子が僕の前まで来て話しかけてきた。「ねぇ、私お家に帰りたいの。でも場所が分からない。」僕はあまりご近所付き合いをしていなかったので、どこの子供か分からなかった。すると女の子は「アパートに住んでるんだけど」と言葉を続けた。アパートならスマホで調べればわかるかもと思った僕は女の子に聞いてみた。「なんて名前のアパート?」女の子は「しらたアパート」とだけ答えた。しらたアパートなんて聞いたことないと思い、スマホで調べてみたが、そんなアパートはこの周辺にはないことが分かった。「しらたアパートで合ってる?」僕は聞いたが、「合ってる、絶対に」とだけ返ってきた。「地域の人に聞いてみるね。」僕はそう言い、近くの家のインターホンを押そうとした。すると女の子は、「大人の人は嫌!」と言って、拒みだした。一向に雨はやむ気配がない中、僕と女の子は会話をしていた。この辺、伊原町のみで検索をかけていたので出てこないと思った僕は、日本全国で「しらたアパート」を検索した。すると、ここからあり得ない程遠い県に存在していた。たった一つ、しらたアパートが。
目を疑った、車で何時間もかかる所にあったのだから。検索にヒットしたのはそこの一棟のみだった。僕は寒そうにしている女の子に着ていたパーカーを渡して聞いた。「本当にしらたアパート?ここからすごく遠いけど」女の子は頷くばかりだった。すると、近くをたまたま通った近所の人が声をかけてきた。「2人してどうしたの?風邪引くよ」僕は女の子との会話を一から話そうとした。しかし、近所の人が来た途端に女の子は「嫌だ!」と言って雨の中走って行った。突然のことに驚いた僕は、「すみません!」と言ってその子を追いかけた。しかし、見失ってしまった。僕は女の子のことを考えながら家に帰った。今思えば警察に話せばよかったと、名前を聞いておけばよかったと後悔しているが、その後悔は意味がないことだと後に気付くことになる。親にも子の話はしていない。それはなぜなのか自分でも分からなかった。そんな事が起きた翌日、休みですっと家にいた僕は、家の電話が鳴る音で目を覚ました。少ししてから電話に出てみると、それは警察からだった。「吉田|さんのお宅ですか?○○警察青松部署ですが、彰人さんは居られますか?」僕はすぐに答えた。「僕が彰人です。○○県の警察さんがどうかしましたか?」「彰人さんでしたか、我々の元にあなたのパーカーが落とし物として届けられていまして」僕は驚いた、○○県は僕の住んでいる所から遠い場所だったからだ。「どうしてそちらに僕のパーカーがあるんですか?」僕の答えに「さて、普段なら落とし物に関して持ち主に連絡はしないのですが、ポケットにあなたの家の電話番号が書かれた紙がはいっていまして、」と言い、さらに言葉を続けた。「実は、坂本公園に落とし物がありまして、このパーカーどうしますか?」という問いに対し、「親と相談します。取りに行くことになったら連絡します」と返答して電話を切った。少しの違和感を覚えながらその場に立っていると、テレビでニュースが流れた。篠井雫ちゃんの件だ。雫ちゃんの顔写真がふと目に入る。その時、電話が再び鳴った。知らない番号からだ。僕は無意識に受話器を取った。すると、小さな声が聞こえた。「お兄ちゃん、ありがとう。またね。」そう言って電話は切れた。その声には聞き覚えがあった。昨日の女の子だ。さっきの電話番号に電話をかけるが繋がらない。その時、今までの事が繋がった。あの女の子は篠井雫ちゃんだ。昨日のニュースの。確信はないが、すぐにさっきの警察署に電話をかける。「もしもし、吉田彰人ですが。僕のパーカー、篠井雫ちゃんのお墓に供えられないでしょうか。」それを聞いた警察が声を出す。「篠井雫さんと関係があるんですか?」「いや、」その問いに僕は言葉を詰まらせる。「やっぱり何でもないです。明日取りに行きます。」そう言って電話を切った。
翌日、僕は電車で○○県の青松市の警察署に直接取りに行き、お礼を言った。その足で坂本公園に行き、雫ちゃんの遺体が遺棄されていたベンチにそっとパーカーをかけた。そして僕は呟いた。「最後に僕を頼ってくれてありがとう。安らかに眠ってください。」
2日後、僕の友達は「お前、なんか憑いてね?俺霊感あるんだけど、」と言ってきた。「一回見てもらった方がいいよ。」僕はこの間の事もあるし、霊媒師さんに見てもらった。霊媒師さんは「あなたには、女の子の霊が憑いています。ただ、悪霊ではありません。あなたと一緒にいることに、とても安心しています。さらに、あなたを悪霊から守ってくれています。なぜか成仏していません。」と言った。雫ちゃんが僕のことを守ってくれているという事実に僕は喜びを感じた。最後に霊媒師さんは僕に向かって言った。「もしあなたが結婚して女の子を授かったら、その子にこう言ってあげなさい。「次は大丈夫だよ。」と。」僕はその日から少し気分が落ち着いている。雫ちゃんの両親のその後は知らないけど、しっかりと罪を償ってほしいと思う。そしてあの日、警察に話せば良かったという後悔は本当に意味がなかった。今は僕と、奥さん、そして産まれたばかりの霙と一緒に楽しい生活を送っている。今はただ一言、霙に言いたい。「幸せにするから」と。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
(完結)姉と浮気する王太子様ー1回、私が死んでみせましょう
青空一夏
恋愛
姉と浮気する旦那様、私、ちょっと死んでみます。
これブラックコメディです。
ゆるふわ設定。
最初だけ悲しい→結末はほんわか
画像はPixabayからの
フリー画像を使用させていただいています。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
夫に惚れた友人がよく遊びに来るんだが、夫に「不倫するつもりはない」と言われて来なくなった。
ほったげな
恋愛
夫のカジミールはイケメンでモテる。友人のドーリスがカジミールに惚れてしまったようで、よくうちに遊びに来て「食事に行きませんか?」と夫を誘う。しかし、夫に「迷惑だ」「不倫するつもりはない」と言われてから来なくなった。
妊娠したのね・・・子供を身篭った私だけど複雑な気持ちに包まれる理由は愛する夫に女の影が見えるから
白崎アイド
大衆娯楽
急に吐き気に包まれた私。
まさかと思い、薬局で妊娠検査薬を買ってきて、自宅のトイレで検査したところ、妊娠していることがわかった。
でも、どこか心から喜べない私・・・ああ、どうしましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる