完結済み【短編 怖くて悲しい小児科病棟体験談】 どうして本当の声を聞かせてくれなかったの?〜夜勤中にみた母親の笑顔の〝違和感〟の理由

あらき恵実

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違和感の正体

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夜勤の巡視の時に見た、
なのに、ーー。

何が私をゾッとさせたのだろう?

いったい何に、私はを感じていたんだろうーー?

      •   •    •

ーーそれから一カ月ほどして、違和感の正体が判明しました。

それは、タケルくんの数回目の入院の時のことでした。

タケルくんの入院の理由は後頭部の〝外傷〟でした。

「また、お世話になります」

そう言ってお母さんはタケルくんを腕に抱いて病棟へやってきました。私はお母さんに会釈をしながら、タケルくんの後頭部に目をやりました。

確かに後頭部には傷がありました。しかし、それは爪でひっかいたような小さくて浅い傷でした。

私は首を傾げました。
なぜ、こんなに小さな傷で入院なんだろうーー? とても不思議でした。

その日、看護師長から、
「タケルくんに検査を行うのでタケルくんを処置室に預かってきてください」
と説明を受けました。
 
「はい。わかりました」

返事をしてタケルくんの病室に向かう私の背中に、師長はこう言い添えました。

「あと、検査の間、お母さんは面談室にいてもらってください。病状説明がありますから」

私は師長に言われたとおり、お母さんを面談室に通し、タケルくんを処置室に抱いてつれて行きました。
しかし、私の頭には疑問符がたくさん浮かんでいました。
なぜって、検査の指示が医師からでていなかったからです。
しかも、検査もまだしていないのに、何の病状説明をするというのでしょう。

やがて、戸惑っている私のそばにアンドウ先生と、入館許可証を身につけたスーツ姿の女性が二人やってきました。
そして、スーツ姿の女性は、私に名刺を差し出しました。

タケルくんを抱いたまま、私は名刺を受け取りました。 


そこには、
 
という文字が並んでいました。


「お母さんが面談室にいる間に、タケルくんをの職員へ預けます」 

アンドウ先生はそう言いました。
私は驚きを隠せませんでした。

続く~
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