【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます

衿乃 光希

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第二部 帰郷

13話 クラリッサ

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 使者の方は、かつての使用人を屋敷に集めるよう、お兄様に指示を出していた。特に王都で働いていた者は、できるだけ早く来るようにと各町に連絡を回す。

 翌日に到着した調査官は、屋敷に集まった使用人から聞き取り調査を行った。
 十八年前も昔のことを思い出すのはみんな大変なようで、首を捻っているようだ。

 そんな中、かつて私付きのメイドとしてお世話をしてくれていたクラリッサから面会の申し込みがあった。
 応接室で再会を果たした私たち。クラリッサは泣きながら謝る。

「シェリーヌお嬢様、私が耐えられずお一人にしてしまったこと、ずっと悔いておりました。申し訳ございませんでした」
 座らずに待っていたクラリッサは、床に頭が付きそうなほど腰を曲げた。
「元気そうでなによりね。私なら気にしていないわ。おかけなさいな」
 頭を上げてもらい、座るように促した。

 クラリッサは私が生まれた年に、ハウスメイドとして雇われた。初めは私付きではなかったけど、丁寧な仕事ぶりと一所懸命なところを認められて、先輩メイドのデリアとともに私の世話をするメイドになった。
 掃除は完璧にこなし、お茶を淹れるのも上手。気も利くし、きびきびと働いてくれる人だった。
 唯一ファッションは苦手なようで、必要に応じて私が着る服をデリアから教わっていた。

 両親が亡くなり、私が王都に居を移すことになり、デリアは退職した。二十代半ばだったためボーヴォワールで結婚相手を探したい。というのが理由だった。
 そのデリアは、病ですでに亡くなっていた。今回の件がなければ知ることがなかった。デリアの家族宛てに、花とお悔やみとしてお金を少し包み、送ってもらうように手配をしたのはついさきほど。

 私に付いて王都に来てくれたクラリッサ。初めての場所、初めて会う人たちの中で、付いてきてくれたアランとクラリッサが、私に安心を与えてくれる二人だった。
 そんなクラリッサが酷い虐めを受けていると知ったのは、半年ほどが経った頃だった。
 ブランヴィル家の使用人たちからきつい言葉を投げつけられるだけでなく、仕事の邪魔までされていた。
 洗濯をしようとすると、水道の蛇口を針金で締められていたり、自室の扉を廊下から固定され、出られなくされたり。

 アランが気づけばサポートに行くけれど、すべての事象に気づけるわけもなく。
 虐めをやめるように養い親にお願いしたけれど、そのような事実はないと否定されてしまった。
 心身を壊したクラリッサは働けなくなり、王都に来て一年で退職した。

「あなたを守ってやれず、申し訳なく思っていたのは私も同じです。その後、体に障りはない?」
 クラリッサはもともと細見ではあったけれど、仕事で鍛えられていたのか力はあった。
 王都に来てみるみる痩せ細り、退職前は水を運ぶ力がなくなるほど衰えていた。

「お気遣いいただきありがとうございます。ボーヴォワールに戻ったお陰で、元気を取り戻しました。華やかな王都は、私には合わなかったのでしょう。今では脂肪がついて、太ってしまいました」
 涙を拭い、元気そうな笑顔で答える。
 ふっくらはしたけれど、太っているというほどではない。最後の姿がかなり痩せていたから、健康的な今の姿を見て、私はほっと安心する。

「結婚したと聞いたけれど、仲良くしているの?」
「はい。兵士をしている亭主と三人の子供に囲まれて、なんとかやっております」
「三人も子供がいるの? 大変そうね。性別は?」
「上と下が男の子で、真ん中が女の子です」
「男の子が二人だと、賑やかそうね」

「毎日ケンカをするし、食べ物の取り合いをするしで、叱ってばかりの毎日です。幸い真ん中がしっかり者で、家事も育児も私の代わりをしてくれることもあって、助かっています」
「クラリッサ仕込みの家事なら、信頼できそうね」
「掃除が好きな子で、将来はこのお屋敷で働きたいと申しております」
「まあ、そうなの。それは頼もしいわね」
「私がここで働かせていただいたことを話しておりましたから、憧れたようです」

 クラリッサの娘さんが働く年齢になる頃、ここは他の貴族の領地になっているかもと思うと、申し訳なさが募る。
 ボーヴォワールは、今後どうなるの予想がつかない。クリストフお兄様が引き続き治められるのか、ルーファスお兄様が罪に問われると、連帯責任になるのか。
 私が口を挟めることではないから、今は何も言えず心苦しい。

「それは楽しみね」
 と答えることしかできなかった。

 次回⇒14話 楽しいひととき
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