59 / 60
59. 結婚式
しおりを挟む
今日は彩ちゃんの結婚式。
ナイトウェディングに出席するのは初めてで、わくわくしている。
彩ちゃんとは小学生からだから、十五年以上の付き合いになる。
あたしは呼び捨てがデフォルトのキャラなのに、彩ちゃんは『那美ちゃん』とちゃん付けで呼んでくれる、唯一の人。
彩ちゃんから好きな人ができたかもしれないっていう相談を受けたのは、たしか五年前。
お客さんで気になる人がいるんだけど、これって恋なの? なんてかわいいことを訊いてきた。
恋の相談を受けたのは初めてだった。
彩ちゃんは学校で一番かっこいい男子にも振り向かない、浮ついてない女子で、気が多いあたしと友だちなのが不思議だ、と言われる事が多々あった。
あたしは見た目が派手で、友だちが多い。
彩ちゃんは地味でおとなしいタイプ。
でも芯がしっかりしていて、これだと決めたことには一途で。あたしはまっすぐな彩ちゃんが大好き。
今回、美容師のあたしにヘアメイクをして欲しいとお願いしてきた。
那美ちゃんはプロだからお金はちゃんと支払う、と律儀なところも良い所。
お金はもちろん断った。無報酬でやるに決まってる。
後々まで残る大切な記念日に、あたしのセットメイクを選んでくれるなんて、泣けてくる。
二人は一年かけて結婚式の準備をしてきて、晴れの日を迎えた。
チャペルは天井が高く、壁がガラス張り。群青色が一面に広がっている。
照明は控えめ。バージンロードにはケースに入ったキャンドルが並んでいて、とても幻想的。
入場した新郎がゆっくりと歩いてくる。白のテイルコートがびっくりするほど似合っている。
彩ちゃんのメイクの前に新郎に会ったけど、モデルにしか見えなかった。
この顔で、スタイルも良くて、誠実で、束縛もない。って彩ちゃん見る目あり過ぎるし、運も良い。
彩ちゃんの惚気話を聞いてると、溺愛されてる関係性しか見えなかった。
いよいよ、新婦の入場。
スレンダーラインのシンプルなドレスは清楚。
デコルテから両袖にかけてのレースがとてもきれい。
腕でさえ露出を抑えているのは、彩ちゃんっぽい。
ドレスがシンプルだから、ヘアもシンプルに、うなじで束ねてお団子にするシニヨンスタイルにした。
彩ちゃんはこの日のために、髪を伸ばしていた。
ドライヤーが大変だから、式が終わったら切ると言っていて、すでに美容室の予約をいれてくれている。
隣にいるのは黒留袖姿のお母さん。腕を組んで、一緒に歩いてくる。
お母さんはお腹の前で、額に入った写真を持っていた。
亡くなったお父さんと歩きたい。
そう言って、渋るお母さんを説得したと聞いた。
お母さんは緊張した顔で、でも泣くことなく、彩ちゃんを気にしながら一緒に歩いていた。
泣けるー。
視界が滲んで、彩ちゃんがよく見えない。
ハンカチで涙を拭っていると、ベールごしに彩ちゃんと目が合った。
微笑む花嫁は、とても美しく、最高に幸せそうだった。
あたしは心から、この結婚を祝福する。
近いうちに小野になる、滝川彩綺!
結婚おめでとう!
次回⇒60話 新生活
ナイトウェディングに出席するのは初めてで、わくわくしている。
彩ちゃんとは小学生からだから、十五年以上の付き合いになる。
あたしは呼び捨てがデフォルトのキャラなのに、彩ちゃんは『那美ちゃん』とちゃん付けで呼んでくれる、唯一の人。
彩ちゃんから好きな人ができたかもしれないっていう相談を受けたのは、たしか五年前。
お客さんで気になる人がいるんだけど、これって恋なの? なんてかわいいことを訊いてきた。
恋の相談を受けたのは初めてだった。
彩ちゃんは学校で一番かっこいい男子にも振り向かない、浮ついてない女子で、気が多いあたしと友だちなのが不思議だ、と言われる事が多々あった。
あたしは見た目が派手で、友だちが多い。
彩ちゃんは地味でおとなしいタイプ。
でも芯がしっかりしていて、これだと決めたことには一途で。あたしはまっすぐな彩ちゃんが大好き。
今回、美容師のあたしにヘアメイクをして欲しいとお願いしてきた。
那美ちゃんはプロだからお金はちゃんと支払う、と律儀なところも良い所。
お金はもちろん断った。無報酬でやるに決まってる。
後々まで残る大切な記念日に、あたしのセットメイクを選んでくれるなんて、泣けてくる。
二人は一年かけて結婚式の準備をしてきて、晴れの日を迎えた。
チャペルは天井が高く、壁がガラス張り。群青色が一面に広がっている。
照明は控えめ。バージンロードにはケースに入ったキャンドルが並んでいて、とても幻想的。
入場した新郎がゆっくりと歩いてくる。白のテイルコートがびっくりするほど似合っている。
彩ちゃんのメイクの前に新郎に会ったけど、モデルにしか見えなかった。
この顔で、スタイルも良くて、誠実で、束縛もない。って彩ちゃん見る目あり過ぎるし、運も良い。
彩ちゃんの惚気話を聞いてると、溺愛されてる関係性しか見えなかった。
いよいよ、新婦の入場。
スレンダーラインのシンプルなドレスは清楚。
デコルテから両袖にかけてのレースがとてもきれい。
腕でさえ露出を抑えているのは、彩ちゃんっぽい。
ドレスがシンプルだから、ヘアもシンプルに、うなじで束ねてお団子にするシニヨンスタイルにした。
彩ちゃんはこの日のために、髪を伸ばしていた。
ドライヤーが大変だから、式が終わったら切ると言っていて、すでに美容室の予約をいれてくれている。
隣にいるのは黒留袖姿のお母さん。腕を組んで、一緒に歩いてくる。
お母さんはお腹の前で、額に入った写真を持っていた。
亡くなったお父さんと歩きたい。
そう言って、渋るお母さんを説得したと聞いた。
お母さんは緊張した顔で、でも泣くことなく、彩ちゃんを気にしながら一緒に歩いていた。
泣けるー。
視界が滲んで、彩ちゃんがよく見えない。
ハンカチで涙を拭っていると、ベールごしに彩ちゃんと目が合った。
微笑む花嫁は、とても美しく、最高に幸せそうだった。
あたしは心から、この結婚を祝福する。
近いうちに小野になる、滝川彩綺!
結婚おめでとう!
次回⇒60話 新生活
35
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる