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59. 結婚式
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今日は彩ちゃんの結婚式。
ナイトウェディングに出席するのは初めてで、わくわくしている。
彩ちゃんとは小学生からだから、十五年以上の付き合いになる。
あたしは呼び捨てがデフォルトのキャラなのに、彩ちゃんは『那美ちゃん』とちゃん付けで呼んでくれる、唯一の人。
彩ちゃんから好きな人ができたかもしれないっていう相談を受けたのは、たしか五年前。
お客さんで気になる人がいるんだけど、これって恋なの? なんてかわいいことを訊いてきた。
恋の相談を受けたのは初めてだった。
彩ちゃんは学校で一番かっこいい男子にも振り向かない、浮ついてない女子で、気が多いあたしと友だちなのが不思議だ、と言われる事が多々あった。
あたしは見た目が派手で、友だちが多い。
彩ちゃんは地味でおとなしいタイプ。
でも芯がしっかりしていて、これだと決めたことには一途で。あたしはまっすぐな彩ちゃんが大好き。
今回、美容師のあたしにヘアメイクをして欲しいとお願いしてきた。
那美ちゃんはプロだからお金はちゃんと支払う、と律儀なところも良い所。
お金はもちろん断った。無報酬でやるに決まってる。
後々まで残る大切な記念日に、あたしのセットメイクを選んでくれるなんて、泣けてくる。
二人は一年かけて結婚式の準備をしてきて、晴れの日を迎えた。
チャペルは天井が高く、壁がガラス張り。群青色が一面に広がっている。
照明は控えめ。バージンロードにはケースに入ったキャンドルが並んでいて、とても幻想的。
入場した新郎がゆっくりと歩いてくる。白のテイルコートがびっくりするほど似合っている。
彩ちゃんのメイクの前に新郎に会ったけど、モデルにしか見えなかった。
この顔で、スタイルも良くて、誠実で、束縛もない。って彩ちゃん見る目あり過ぎるし、運も良い。
彩ちゃんの惚気話を聞いてると、溺愛されてる関係性しか見えなかった。
いよいよ、新婦の入場。
スレンダーラインのシンプルなドレスは清楚。
デコルテから両袖にかけてのレースがとてもきれい。
腕でさえ露出を抑えているのは、彩ちゃんっぽい。
ドレスがシンプルだから、ヘアもシンプルに、うなじで束ねてお団子にするシニヨンスタイルにした。
彩ちゃんはこの日のために、髪を伸ばしていた。
ドライヤーが大変だから、式が終わったら切ると言っていて、すでに美容室の予約をいれてくれている。
隣にいるのは黒留袖姿のお母さん。腕を組んで、一緒に歩いてくる。
お母さんはお腹の前で、額に入った写真を持っていた。
亡くなったお父さんと歩きたい。
そう言って、渋るお母さんを説得したと聞いた。
お母さんは緊張した顔で、でも泣くことなく、彩ちゃんを気にしながら一緒に歩いていた。
泣けるー。
視界が滲んで、彩ちゃんがよく見えない。
ハンカチで涙を拭っていると、ベールごしに彩ちゃんと目が合った。
微笑む花嫁は、とても美しく、最高に幸せそうだった。
あたしは心から、この結婚を祝福する。
近いうちに小野になる、滝川彩綺!
結婚おめでとう!
次回⇒60. 新生活
ナイトウェディングに出席するのは初めてで、わくわくしている。
彩ちゃんとは小学生からだから、十五年以上の付き合いになる。
あたしは呼び捨てがデフォルトのキャラなのに、彩ちゃんは『那美ちゃん』とちゃん付けで呼んでくれる、唯一の人。
彩ちゃんから好きな人ができたかもしれないっていう相談を受けたのは、たしか五年前。
お客さんで気になる人がいるんだけど、これって恋なの? なんてかわいいことを訊いてきた。
恋の相談を受けたのは初めてだった。
彩ちゃんは学校で一番かっこいい男子にも振り向かない、浮ついてない女子で、気が多いあたしと友だちなのが不思議だ、と言われる事が多々あった。
あたしは見た目が派手で、友だちが多い。
彩ちゃんは地味でおとなしいタイプ。
でも芯がしっかりしていて、これだと決めたことには一途で。あたしはまっすぐな彩ちゃんが大好き。
今回、美容師のあたしにヘアメイクをして欲しいとお願いしてきた。
那美ちゃんはプロだからお金はちゃんと支払う、と律儀なところも良い所。
お金はもちろん断った。無報酬でやるに決まってる。
後々まで残る大切な記念日に、あたしのセットメイクを選んでくれるなんて、泣けてくる。
二人は一年かけて結婚式の準備をしてきて、晴れの日を迎えた。
チャペルは天井が高く、壁がガラス張り。群青色が一面に広がっている。
照明は控えめ。バージンロードにはケースに入ったキャンドルが並んでいて、とても幻想的。
入場した新郎がゆっくりと歩いてくる。白のテイルコートがびっくりするほど似合っている。
彩ちゃんのメイクの前に新郎に会ったけど、モデルにしか見えなかった。
この顔で、スタイルも良くて、誠実で、束縛もない。って彩ちゃん見る目あり過ぎるし、運も良い。
彩ちゃんの惚気話を聞いてると、溺愛されてる関係性しか見えなかった。
いよいよ、新婦の入場。
スレンダーラインのシンプルなドレスは清楚。
デコルテから両袖にかけてのレースがとてもきれい。
腕でさえ露出を抑えているのは、彩ちゃんっぽい。
ドレスがシンプルだから、ヘアもシンプルに、うなじで束ねてお団子にするシニヨンスタイルにした。
彩ちゃんはこの日のために、髪を伸ばしていた。
ドライヤーが大変だから、式が終わったら切ると言っていて、すでに美容室の予約をいれてくれている。
隣にいるのは黒留袖姿のお母さん。腕を組んで、一緒に歩いてくる。
お母さんはお腹の前で、額に入った写真を持っていた。
亡くなったお父さんと歩きたい。
そう言って、渋るお母さんを説得したと聞いた。
お母さんは緊張した顔で、でも泣くことなく、彩ちゃんを気にしながら一緒に歩いていた。
泣けるー。
視界が滲んで、彩ちゃんがよく見えない。
ハンカチで涙を拭っていると、ベールごしに彩ちゃんと目が合った。
微笑む花嫁は、とても美しく、最高に幸せそうだった。
あたしは心から、この結婚を祝福する。
近いうちに小野になる、滝川彩綺!
結婚おめでとう!
次回⇒60. 新生活
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第7回ほっこり・じんわり大賞奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました。 俊介目線の番外編を書きました。彩綺と出会う前の俊介。出会ってからの想い。などを綴っています。SS更新しました。恋愛小説大賞にエントリーしました。他に3作品エントリーしています。お時間がありましたら、別作品もお読みいただけますと嬉しいです。 よろしくお願いいたします。
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