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3. 8月 お菓子作り
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残暑厳しい8月下旬。
エアコンを稼働させた快適なキッチンで、私は鼻歌を歌う。ミディアムショートをゴムでひとつにくくりながら。
今日は母の誕生日。好物のラムレーズンサンドを手作りしようと思っていた。
まずはクッキー生地作りから。
室温に戻したバターをゴムベラで練り、グラニュー糖と塩を加えて混ぜる。
ゴムベラから泡立て器に持ち替えて、白っぽくなるまで練ってから、卵黄を投入。
しっかり混ぜて乳化させてから、アーモンドプードル・ふるっておいた薄力粉を加える。
粉っぽさがなくなるまで、切るように混ぜて、
「最後は、手で押さえる」
のが私のやり方。
まとまったら、ラップで挟んで、冷蔵庫へ。一時間冷やし固める。
クッキー生地を作る時に分けておいた卵白をボウルに入れて、ラップを張り、これも冷蔵庫へ。
お菓子作りは趣味で、失敗をしながらもいろいろと作ってきた。
クッキー、ロールケーキ、プリン、シフォンケーキなどなど。
ラムレーズンサンドを作るのは初めて。数日前から様々なレシピサイトを見て、勉強をした。
お菓子を作っている時が、一番楽しい。うまくできるかなあと期待が膨らむ。
食べてくれた人が美味しい顔で頬張ってくれるのが、なにより楽しい瞬間。
怒っていても、悲しいことがあっても、お菓子はみんなを笑顔にする。美味しい物は正義だ。
紅茶を飲みながら、お菓子作りの動画を見て時間を待ち、冷やしたクッキー生地を取り出す。
アクリルルーラーを使って、めん棒で伸ばして、生地の厚みを均一にする。もう一度冷蔵庫へ。
お菓子作りは手間と時間がかかるし、後片付けもしないといけない。
だからなのか手作りお菓子をあげると、ほとんどの人からすごいねと言われる。
私はそんなにすごいことだと思わない。ただの趣味で気軽に作っているだけから。
でも、プロはすごいと思う。何十種類もあるケーキを作って店頭に並べて、お客さんの目と舌を楽しませている。
表からは見えない努力と苦労で技術を習得し、美味しいものが出来上がる。
私はパティシエたちを心から尊敬している。
憧れるけれど、私は趣味で、満足かな。
固まった生地に包丁を入れて、長方形にカット。これを天板に移して予熱をしたオーブンで焼き上げる。
「15分くらいかな」
焼き上がったら、冷めるのを待つ。熱いと、これから作るクリームを挟めない。
その間に、バタークリーム作り。
お鍋に水とグラニュー糖を入れて煮詰めて、シロップを作る。
冷蔵庫から卵白を取り出し、メレンゲ作り。
ハンドミキサーを低速で混ぜて、白っぽくなったらさっき作ったシロップを少しずつ投入。
メレンゲが温まって、ツノが立ったら、メレンゲの完成。
常温に戻した無塩バターにメレンゲ加えて混ぜて、50度のお湯で融かしたホワイトチョコと塩をひとつまみ。
最後にラムレーズンの汁気をとって投入。
ラムレーズンは昨日のうちに仕込んでおいた。
水とグラニュー糖を沸騰させて、レーズンを入れて煮詰めてから、ラム酒を加えたものを冷蔵庫の奥に。
たぶん母には見つかっていないはず。
出来上がったバタークリームは、冷蔵庫で冷やしておく。
クッキーが冷めたのを確認して、バタークリームを冷蔵庫から取り出した。
クッキーにバタークリームをのせて、もう一枚のクッキーでサンド。
8個作って、再び冷蔵庫へ。
少し固まった頃に冷蔵庫から取り出し、バタークリームをスプーンの裏できれいに整えて、
「完成」
見た目から美味しそうなラムレーズンサンドが出来上がった。
バターとラム酒のいい香りが、部屋中に漂っている。
透明袋に入れて、シーラーで閉じて、再び冷蔵庫へ。
出来上がりをすぐに食べられるのが手作りの一番の楽しみで、味見もしたい。
だけど、これは母にプレゼントするものだから。
私は食べたい気持ちを堪えて、母の帰宅を待った。
次回⇒4.バリキャリ母
エアコンを稼働させた快適なキッチンで、私は鼻歌を歌う。ミディアムショートをゴムでひとつにくくりながら。
今日は母の誕生日。好物のラムレーズンサンドを手作りしようと思っていた。
まずはクッキー生地作りから。
室温に戻したバターをゴムベラで練り、グラニュー糖と塩を加えて混ぜる。
ゴムベラから泡立て器に持ち替えて、白っぽくなるまで練ってから、卵黄を投入。
しっかり混ぜて乳化させてから、アーモンドプードル・ふるっておいた薄力粉を加える。
粉っぽさがなくなるまで、切るように混ぜて、
「最後は、手で押さえる」
のが私のやり方。
まとまったら、ラップで挟んで、冷蔵庫へ。一時間冷やし固める。
クッキー生地を作る時に分けておいた卵白をボウルに入れて、ラップを張り、これも冷蔵庫へ。
お菓子作りは趣味で、失敗をしながらもいろいろと作ってきた。
クッキー、ロールケーキ、プリン、シフォンケーキなどなど。
ラムレーズンサンドを作るのは初めて。数日前から様々なレシピサイトを見て、勉強をした。
お菓子を作っている時が、一番楽しい。うまくできるかなあと期待が膨らむ。
食べてくれた人が美味しい顔で頬張ってくれるのが、なにより楽しい瞬間。
怒っていても、悲しいことがあっても、お菓子はみんなを笑顔にする。美味しい物は正義だ。
紅茶を飲みながら、お菓子作りの動画を見て時間を待ち、冷やしたクッキー生地を取り出す。
アクリルルーラーを使って、めん棒で伸ばして、生地の厚みを均一にする。もう一度冷蔵庫へ。
お菓子作りは手間と時間がかかるし、後片付けもしないといけない。
だからなのか手作りお菓子をあげると、ほとんどの人からすごいねと言われる。
私はそんなにすごいことだと思わない。ただの趣味で気軽に作っているだけから。
でも、プロはすごいと思う。何十種類もあるケーキを作って店頭に並べて、お客さんの目と舌を楽しませている。
表からは見えない努力と苦労で技術を習得し、美味しいものが出来上がる。
私はパティシエたちを心から尊敬している。
憧れるけれど、私は趣味で、満足かな。
固まった生地に包丁を入れて、長方形にカット。これを天板に移して予熱をしたオーブンで焼き上げる。
「15分くらいかな」
焼き上がったら、冷めるのを待つ。熱いと、これから作るクリームを挟めない。
その間に、バタークリーム作り。
お鍋に水とグラニュー糖を入れて煮詰めて、シロップを作る。
冷蔵庫から卵白を取り出し、メレンゲ作り。
ハンドミキサーを低速で混ぜて、白っぽくなったらさっき作ったシロップを少しずつ投入。
メレンゲが温まって、ツノが立ったら、メレンゲの完成。
常温に戻した無塩バターにメレンゲ加えて混ぜて、50度のお湯で融かしたホワイトチョコと塩をひとつまみ。
最後にラムレーズンの汁気をとって投入。
ラムレーズンは昨日のうちに仕込んでおいた。
水とグラニュー糖を沸騰させて、レーズンを入れて煮詰めてから、ラム酒を加えたものを冷蔵庫の奥に。
たぶん母には見つかっていないはず。
出来上がったバタークリームは、冷蔵庫で冷やしておく。
クッキーが冷めたのを確認して、バタークリームを冷蔵庫から取り出した。
クッキーにバタークリームをのせて、もう一枚のクッキーでサンド。
8個作って、再び冷蔵庫へ。
少し固まった頃に冷蔵庫から取り出し、バタークリームをスプーンの裏できれいに整えて、
「完成」
見た目から美味しそうなラムレーズンサンドが出来上がった。
バターとラム酒のいい香りが、部屋中に漂っている。
透明袋に入れて、シーラーで閉じて、再び冷蔵庫へ。
出来上がりをすぐに食べられるのが手作りの一番の楽しみで、味見もしたい。
だけど、これは母にプレゼントするものだから。
私は食べたい気持ちを堪えて、母の帰宅を待った。
次回⇒4.バリキャリ母
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第7回ほっこり・じんわり大賞奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました。
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