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第二話 遠野眞子 ~初期衝動~

ピアノ

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 ショパン練習曲集作品十から十二番Op.10-12「革命」。

 彼女の中に流れる強く熱い思いが、革命を起こしたいと願っている。
 作曲者であるショパンの祖国が、他国からの支配に対し武装蜂起をしたように。
 蜂起に参加できなかったショパンの、怒り悔しさ悲しみ無力感、その思いを自身に置き換えている。

 力強く荒々しく激しい感情を、全身を揺り動かして表現していた。
 老生の私で耐えられるだろうか。
 そんな心配を抱いてしまうほどの激しさ。
 たまにすっと力を抜き、音を弱めるときもある。
 不安の表れだろうか。音の強弱が、より感情を物語る。

 本人的には無意識だっただろうが、これだけの熱い思いがこもっていれば、ストリートでも感じ取る人はいる。

 今日の時刻が夕刻であれば、あるいは休日であれば、この熱い思いは敬遠されたかもしれない。
 が平日の昼間、午後からも頑張るぞと奮起する人がいるのではないだろうか。

 見向きもされなかった私に目を向けて足を止め、聴き入る人々が増えていく。
 ピアノを包囲するように、その半円が広がっていく。

 老いも若きも、男も女も。それぞれに用事があるだろうほんの一時を、遠野眞子というアマチュアピアニストの演奏を聴くために足を止めている。

 最後まで弾ききった彼女に、聴衆は大きな拍手を送った。指笛までもピィーと鳴る。

 熱情のこもった素晴らしい演奏は、しっかりと伝わっている。

 周囲を見渡した眞子さんは戸惑った顔をしているが、胸を張っていい演奏だった。

 おや、まだ弾き足りなかったのか、それとも聴衆へのサービスなのか、弾きたい人がいないか確認している。
 もう一曲演奏してくれるようだ。
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