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番外編 猫のいる街 1997

33. 誠二郎 28

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今日できる検査と翌日までに採集した便と尿を調べた結果、幸いなことに病や虫にかかる個体はおらず、安堵した。
五匹分の検査は相当な金額がかかったことだろう。京子は掛かった費用のことは言わなかったからはっきりした額はわからなかったが。
我が家を片付けた折、そのままになっていた箪笥貯金を見つけ持ち出しておいた。小額だが二匹分にはなったかと思う。
京子に検査費用だと言って渡した。素直に受け取ってくれて良かった。
猫たちも環境に慣れてきてくれている。
よく食べよく寝て、時々ケンが吠えると身を強張らせているが、徐々に慣れてくれるのではないかな。
今日は孝さんが、明日には直樹くんも帰ってくる。
さて、わしはどうしたもんかの。
京子と愛はわしの存在をすんなり受け入れて普通に接してくれたが、二人はどう反応するだろうの。
会わない方がいいのだろうか。猫たちが落ち着けばわしの出る幕はないだろうしな。
しかし、リンがここにやってくるのは見届けたい。あの子は敏感なところがあるし、過去のこともあるから京子に心を開いてくれるかどうか。
猫のことを頼んだのはわしなのだから、仲を取り持つのはわしの役目であろうしな。
京子に相談をしてみるか。京子の家族のことだしな。
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