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番外編 猫のいる街 1997

8. 誠二郎 6

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一日二日なら、野良だし戻らないこともあるだろう。そう高をくくっていたが、それが三日四日となるとだんだんと心配になってくる。近辺を散歩しながら捜索したり猫に尋ねたりした。しかしその足取りは一向に掴めなかった。
どこかに遠出でもしてしまったのか。誰かに捕まったりしていないだろうか。車にひかれでもしていたらどうしよう。
手元にカレンダーの類がなかったので、朝日とともに小石を並べて日にちを数えた。小石が7個になっても、14個になっても戻らず、不安は募るばかり。
あてどなく街をさまよい、珠を探し、猫に尋ね歩いた。がどの猫も目にしていなかった。
家に戻っているということはなかろうか。
わしが死んでおそらく2ヶ月ほどになるかと思う。
久しぶりに帰ってきた我が家は以前と変わりなく、わしの荷物が少しずつ整理されている様子はあったものの、今にでも住めそうなままだった。京子が定期的に掃除をしにきてくれているのかもしれん。二人の兄は都心に住んでいてここには滅多に帰ってこなかった。
久子が死んでから何から何まで京子の世話になりっぱなしで、あの娘には頭が上がらない。
珠のことを早くに京子に託していれば良かったのかもと思っても、現状珠がいないことに変わりない。
後悔をしている場合ではないの。珠はここにはおらぬ。他所へ探しに行こう。
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