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第三部 最終話
42 信頼(ロマーリオ目線)
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減っていない人だかりに通してくれと云いながら、ロマーリオはディーノを連れて戻ってきた。
不安そうだったイレーネの顔が、ぱっと明るくなる。
「イレーネ!」
「ディーノ!」
熱い抱擁を交わす若い二人に、集まっていた人々からどよめきが起こった。「見せつけんなあ」と冷やかすような声も上るが、それは好意的なものに思えた。
リカルドは口元を歪め、面白くなさそうな顔をしていた。
「お涙ちょうだいってか。んなもんいらねえんだよ。さっさと俺を納得させろよ。云っとくがな、俺はこれでも貴族と付き合いがあるんだぞ。私的な演奏会にも呼んでもらった。一流の演奏を聴いたことがあるんだからな」
牽制のつもりか、ドヤ顔でのたまっている。
リカルドが何をほざこうとも、ロマーリオは今や何の心配もしていなかった。
正気に戻ったディーノが任せろと云ったのだ。なら大丈夫だ。イレーネとリュートに対する想いは自分以上だと信じられる。
けれど、別の理由で胸がどきどきしていた。
八年ぶりにディーノの演奏が聴ける。
わくわくが止まらない。
音楽家としてどれだけ成長しているのか。それが楽しみなところでもあったけれど、純粋にディーノのリュートが聴けることが嬉しかった。例え上達していなかったとしても構わないぐらい、彼の演奏を聴きたいと願っていた。
ディーノが誰かの用意した椅子に腰をかけ、リュートを抱えた。
不安そうだったイレーネの顔が、ぱっと明るくなる。
「イレーネ!」
「ディーノ!」
熱い抱擁を交わす若い二人に、集まっていた人々からどよめきが起こった。「見せつけんなあ」と冷やかすような声も上るが、それは好意的なものに思えた。
リカルドは口元を歪め、面白くなさそうな顔をしていた。
「お涙ちょうだいってか。んなもんいらねえんだよ。さっさと俺を納得させろよ。云っとくがな、俺はこれでも貴族と付き合いがあるんだぞ。私的な演奏会にも呼んでもらった。一流の演奏を聴いたことがあるんだからな」
牽制のつもりか、ドヤ顔でのたまっている。
リカルドが何をほざこうとも、ロマーリオは今や何の心配もしていなかった。
正気に戻ったディーノが任せろと云ったのだ。なら大丈夫だ。イレーネとリュートに対する想いは自分以上だと信じられる。
けれど、別の理由で胸がどきどきしていた。
八年ぶりにディーノの演奏が聴ける。
わくわくが止まらない。
音楽家としてどれだけ成長しているのか。それが楽しみなところでもあったけれど、純粋にディーノのリュートが聴けることが嬉しかった。例え上達していなかったとしても構わないぐらい、彼の演奏を聴きたいと願っていた。
ディーノが誰かの用意した椅子に腰をかけ、リュートを抱えた。
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