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第三部 最終話
39 ディーノの世話(イレーネ目線)
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ロマーリオの言葉にイレーネは泣きそうになった。
たしかにディーノは以前のディーノではなくなってしまった。
いつもイレーネを楽しませようとしてくれていたディーノではなくなって、常にぼんやりとして、イレーネの言葉に反応しないときも多々あった。
リュートのことだって、もちろん気づいていた。ディーノの荷物を部屋に引き上げたときから。
あんなにリュートを愛していたディーノが楽器を持っていないなんて、よっぽどのことだと思った。
気になって仕方がなかったけれど、とにかく今は身体を治すほうが先だと思い、リュートのことは忘れることにしたのだ。
だけど、ディーノからリュートを引けば違和感しかないのだと、再認識させられた。誰よりも一番近くにいたイレーネがそう感じたのだから、誤魔化せるわけがなかったのだ。
リュートを弾かせたほうが、早く直るのかしら。
そう思いもするけれど、ディーノの心を破壊することになってしまわないか。危惧する気持ちもあって用意できなかった。
目の前のディーノは、ゆっくりゆっくり匙を動かし食べ物を口に運んでいる。飲み込んでくれると安心する。この一口が、ディーノの身体を回復に向かわせているのだと思うと、自分の食事も忘れて見入ってしまう。
とにもかくにも、まずは身体を戻す。心はそれからね。
不安な気持ちを押し隠し、食べ零したディーノの口元を拭ってやった。
たしかにディーノは以前のディーノではなくなってしまった。
いつもイレーネを楽しませようとしてくれていたディーノではなくなって、常にぼんやりとして、イレーネの言葉に反応しないときも多々あった。
リュートのことだって、もちろん気づいていた。ディーノの荷物を部屋に引き上げたときから。
あんなにリュートを愛していたディーノが楽器を持っていないなんて、よっぽどのことだと思った。
気になって仕方がなかったけれど、とにかく今は身体を治すほうが先だと思い、リュートのことは忘れることにしたのだ。
だけど、ディーノからリュートを引けば違和感しかないのだと、再認識させられた。誰よりも一番近くにいたイレーネがそう感じたのだから、誤魔化せるわけがなかったのだ。
リュートを弾かせたほうが、早く直るのかしら。
そう思いもするけれど、ディーノの心を破壊することになってしまわないか。危惧する気持ちもあって用意できなかった。
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とにもかくにも、まずは身体を戻す。心はそれからね。
不安な気持ちを押し隠し、食べ零したディーノの口元を拭ってやった。
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