121 / 157
第三部 最終話
22 別れ
しおりを挟む
ニルスを発つ日となった。
朝から雲は厚くどんよりと垂れ込み、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だった。
旅慣れているとはいえ、雨は歓迎できるものではない。が、忌避するほどのものでもない。
ギュルダン氏に出発を遅らせてはどうかと引きとめられたものの、日程の変更はせずに発つこととなった。
昨夜は壮行会の名目で、ギュルダン氏の屋敷で宴が開かれ、楽団員に加え、リーゼの恋人となったカトリナと両親も招待された。
食事のあとは演奏会となり、古くから受け継がれている曲から昨今有名な曲、即興演奏まで、実に賑やかな宴となった。
宴の出席者たちが、ギュルダン氏の屋敷前で見送ってくれる。
リーゼ以外の楽団員は楽器を持って集まり、天よ晴れろと云わんばかりに明るい曲を奏でる。
師匠がギュルダン氏と話をしているので、ディーノもリーゼと立ち話をした。
「ディーノ。君と再会できて嬉しかったよ」
「オレも。リーゼに会えて良かった。カトリナさんと幸せにな」
ディーノの言葉に、二人は照れながら視線を交わした。
この二人はきっとうまくいくだろう。根拠はないけれど、ディーノの第六感がそう告げていた。
「リーゼの音楽はこれからどんどん良くなっていくよ。傍で支えてやってください」
後半はカトリナに向けた。
カトリナは「はい」としっかりと頷いた。
「君の云うことなら、信じられるよ。君は音楽に嘘をつかない人だから。また会えるといいな」
「ああ。元気でな」
「君も」
最後にもう一度握手を交わし、ディーノは馬車に乗り込んだ。師匠もすぐにやってくる。
マウロがゆっくりと馬を進ませた。
開けた幌から顔を出し、一行は見送ってくれる人たちと、ニルスの街に別れを告げた。
朝から雲は厚くどんよりと垂れ込み、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だった。
旅慣れているとはいえ、雨は歓迎できるものではない。が、忌避するほどのものでもない。
ギュルダン氏に出発を遅らせてはどうかと引きとめられたものの、日程の変更はせずに発つこととなった。
昨夜は壮行会の名目で、ギュルダン氏の屋敷で宴が開かれ、楽団員に加え、リーゼの恋人となったカトリナと両親も招待された。
食事のあとは演奏会となり、古くから受け継がれている曲から昨今有名な曲、即興演奏まで、実に賑やかな宴となった。
宴の出席者たちが、ギュルダン氏の屋敷前で見送ってくれる。
リーゼ以外の楽団員は楽器を持って集まり、天よ晴れろと云わんばかりに明るい曲を奏でる。
師匠がギュルダン氏と話をしているので、ディーノもリーゼと立ち話をした。
「ディーノ。君と再会できて嬉しかったよ」
「オレも。リーゼに会えて良かった。カトリナさんと幸せにな」
ディーノの言葉に、二人は照れながら視線を交わした。
この二人はきっとうまくいくだろう。根拠はないけれど、ディーノの第六感がそう告げていた。
「リーゼの音楽はこれからどんどん良くなっていくよ。傍で支えてやってください」
後半はカトリナに向けた。
カトリナは「はい」としっかりと頷いた。
「君の云うことなら、信じられるよ。君は音楽に嘘をつかない人だから。また会えるといいな」
「ああ。元気でな」
「君も」
最後にもう一度握手を交わし、ディーノは馬車に乗り込んだ。師匠もすぐにやってくる。
マウロがゆっくりと馬を進ませた。
開けた幌から顔を出し、一行は見送ってくれる人たちと、ニルスの街に別れを告げた。
10
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
恋愛
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました
yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。
二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか!
ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

帰ってこい?私が聖女の娘だからですか?残念ですが、私はもう平民ですので 本編完結致しました
おいどんべい
ファンタジー
「ハッ出来損ないの女などいらん、お前との婚約は破棄させてもらう」
この国の第一王子であり元婚約者だったレルト様の言葉。
「王子に愛想つかれるとは、本当に出来損ないだな。我が娘よ」
血の繋がらない父の言葉。
それ以外にも沢山の人に出来損ないだと言われ続けて育ってきちゃった私ですがそんなに私はダメなのでしょうか?
そんな疑問を抱えながらも貴族として過ごしてきましたが、どうやらそれも今日までのようです。
てなわけで、これからは平民として、出来損ないなりの楽しい生活を送っていきたいと思います!
帰ってこい?もう私は平民なのであなた方とは関係ないですよ?

殿下はご存じないのでしょうか?
7
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」
学園の卒業パーティーに、突如婚約破棄を言い渡されてしまった公爵令嬢、イディア・ディエンバラ。
婚約破棄の理由を聞くと、他に愛する女性ができたという。
その女性がどなたか尋ねると、第二殿下はある女性に愛の告白をする。
殿下はご存じないのでしょうか?
その方は――。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

【完結】婚約破棄からの絆
岡崎 剛柔
恋愛
アデリーナ=ヴァレンティーナ公爵令嬢は、王太子アルベールとの婚約者だった。
しかし、彼女には王太子の傍にはいつも可愛がる従妹のリリアがいた。
アデリーナは王太子との絆を深める一方で、従妹リリアとも強い絆を築いていた。
ある日、アデリーナは王太子から呼び出され、彼から婚約破棄を告げられる。
彼の隣にはリリアがおり、次の婚約者はリリアになると言われる。
驚きと絶望に包まれながらも、アデリーナは微笑みを絶やさずに二人の幸せを願い、従者とともに部屋を後にする。
しかし、アデリーナは勘当されるのではないか、他の貴族の後妻にされるのではないかと不安に駆られる。
婚約破棄の話は進まず、代わりに王太子から再び呼び出される。
彼との再会で、アデリーナは彼の真意を知る。
アデリーナの心は揺れ動く中、リリアが彼女を支える存在として姿を現す。
彼女の勇気と言葉に励まされ、アデリーナは再び自らの意志を取り戻し、立ち上がる覚悟を固める。
そして――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる