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第三部 最終話
22 故国に向けて
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ニルスを発つ日となった。
朝から雲は厚くどんよりと垂れ込み、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だった。
旅慣れているとはいえ、雨は歓迎できるものではない。が、忌避するほどのものでもない。
ギュルダン氏に出発を遅らせてはどうかと引きとめられたものの、日程の変更はせずに発つこととなった。
昨夜は壮行会の名目で、ギュルダン氏の屋敷で宴が開かれ、楽団員に加え、リーゼの恋人となったカトリナと両親も招待された。
食事のあとは演奏会となり、古くから受け継がれている曲から昨今有名な曲、即興演奏まで、実に賑やかな宴となった。
宴の出席者たちが、ギュルダン氏の屋敷前で見送ってくれる。
リーゼ以外の楽団員は楽器を持って集まり、天よ晴れろと云わんばかりに明るい曲を奏でる。
師匠がギュルダン氏と話をしているので、ディーノもリーゼと立ち話をした。
「ディーノ。君と再会できて嬉しかったよ」
「オレも。リーゼに会えて良かった。カトリナさんと幸せにな」
ディーノの言葉に、二人は照れながら視線を交わした。
この二人はきっとうまくいくだろう。根拠はないけれど、ディーノの第六感がそう告げていた。
「リーゼの音楽はこれからどんどん良くなっていくよ。リーゼを傍で支えてやってください」
後半はカトリナに向けた。
カトリナは「はい」としっかりと頷いた。
「君の云うことなら、信じられるよ。君は音楽に嘘をつかない人だから。また会えるといいな」
「ああ。元気でな」
「君も」
最後にもう一度握手を交わし、ディーノは馬車に乗り込んだ。師匠もすぐにやってくる。
マウロがゆっくりと馬を進ませた。
開けた幌から顔を出し、一行は見送ってくれる人たちと、ニルスの街に別れを告げた。
朝から雲は厚くどんよりと垂れ込み、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だった。
旅慣れているとはいえ、雨は歓迎できるものではない。が、忌避するほどのものでもない。
ギュルダン氏に出発を遅らせてはどうかと引きとめられたものの、日程の変更はせずに発つこととなった。
昨夜は壮行会の名目で、ギュルダン氏の屋敷で宴が開かれ、楽団員に加え、リーゼの恋人となったカトリナと両親も招待された。
食事のあとは演奏会となり、古くから受け継がれている曲から昨今有名な曲、即興演奏まで、実に賑やかな宴となった。
宴の出席者たちが、ギュルダン氏の屋敷前で見送ってくれる。
リーゼ以外の楽団員は楽器を持って集まり、天よ晴れろと云わんばかりに明るい曲を奏でる。
師匠がギュルダン氏と話をしているので、ディーノもリーゼと立ち話をした。
「ディーノ。君と再会できて嬉しかったよ」
「オレも。リーゼに会えて良かった。カトリナさんと幸せにな」
ディーノの言葉に、二人は照れながら視線を交わした。
この二人はきっとうまくいくだろう。根拠はないけれど、ディーノの第六感がそう告げていた。
「リーゼの音楽はこれからどんどん良くなっていくよ。リーゼを傍で支えてやってください」
後半はカトリナに向けた。
カトリナは「はい」としっかりと頷いた。
「君の云うことなら、信じられるよ。君は音楽に嘘をつかない人だから。また会えるといいな」
「ああ。元気でな」
「君も」
最後にもう一度握手を交わし、ディーノは馬車に乗り込んだ。師匠もすぐにやってくる。
マウロがゆっくりと馬を進ませた。
開けた幌から顔を出し、一行は見送ってくれる人たちと、ニルスの街に別れを告げた。
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