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第三部 最終話
9 ギュルダン氏
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「遠いところよく来てくれたね。わたしはこの家の主人のアルフレートだ。えらそうに主人と云ってはみたが、わたしは婿養子でね。妻には頭が上らないんだよ。どうぞよろしく」
すごく喋る人だな。と思いながら、ディーノは差し出された手を握った。
客間に通され、お菓子と紅茶をごちそうになっている。
「弟子のディーノです。よろしくお願いします」
「弟子か。ロドヴィーゴの子供かと思った」
「結婚しとらんわ。十数年前に会ったときにはおらんかっただろう」
「そうだったな」
なんだか軽い人。でもおもしろい。
ニルスの領主であるアルフレート・ギュルダン氏は、師匠と真逆の体型だった。婦人のように身体の線が細く、貴族たちがよく生やしている髭はない。ダンディな感じはないけれど、伸ばした頭髪を首の後ろでひとつに纏めていて、着ているものは師匠とさほど変わらないのにお洒落に見えた。
ギュルダン氏の妻は母と隣街に芝居を見に行っているらしく、挨拶は夜にすることなった。用意してくれた昼餉を共にとり、しばらく雑談した後、部屋に案内された。
ニルスには宿屋がないので、ここに滞在する間、屋敷に泊めてくれることになっていたのだ。
広い部屋に四台の寝台が用意されていて、ギュルダン氏は屋敷への出入りも好きなときにどうぞと云いおいて、部屋を出て行った。
四人は荷物をまとめ終えると、揃ってニルスの街の散策に出かけた。
ギュルダン氏の屋敷と教会が丘の頂点に位置し、一行が馬車で上ってきた大通りのほかに、丘の下まで道があり、道沿いに住居やお店がたくさん軒を連ねている。
家々の窓辺や道を季節の花が彩っていてとても華やかで、目を楽しませてくれる。
山側のなだらかな斜面には草を食む動物の囲いがいくつかあって、牛や山羊や羊がたくさんいた。
素朴な街だが、心が安らぐ温かい街だった。
日が暮れてきたので、一行はギュルダン氏の屋敷に向かう道に戻った。
西日が教会の尖塔に当たり、きらきらと輝いている。
山の向こうに日が沈んでいくにつれて、茜色に染まっていた街に闇が訪れはじめる。
そのシルエットはとてつもなく綺麗で、しかしどことなく寂しい気持ちにもなった。
すごく喋る人だな。と思いながら、ディーノは差し出された手を握った。
客間に通され、お菓子と紅茶をごちそうになっている。
「弟子のディーノです。よろしくお願いします」
「弟子か。ロドヴィーゴの子供かと思った」
「結婚しとらんわ。十数年前に会ったときにはおらんかっただろう」
「そうだったな」
なんだか軽い人。でもおもしろい。
ニルスの領主であるアルフレート・ギュルダン氏は、師匠と真逆の体型だった。婦人のように身体の線が細く、貴族たちがよく生やしている髭はない。ダンディな感じはないけれど、伸ばした頭髪を首の後ろでひとつに纏めていて、着ているものは師匠とさほど変わらないのにお洒落に見えた。
ギュルダン氏の妻は母と隣街に芝居を見に行っているらしく、挨拶は夜にすることなった。用意してくれた昼餉を共にとり、しばらく雑談した後、部屋に案内された。
ニルスには宿屋がないので、ここに滞在する間、屋敷に泊めてくれることになっていたのだ。
広い部屋に四台の寝台が用意されていて、ギュルダン氏は屋敷への出入りも好きなときにどうぞと云いおいて、部屋を出て行った。
四人は荷物をまとめ終えると、揃ってニルスの街の散策に出かけた。
ギュルダン氏の屋敷と教会が丘の頂点に位置し、一行が馬車で上ってきた大通りのほかに、丘の下まで道があり、道沿いに住居やお店がたくさん軒を連ねている。
家々の窓辺や道を季節の花が彩っていてとても華やかで、目を楽しませてくれる。
山側のなだらかな斜面には草を食む動物の囲いがいくつかあって、牛や山羊や羊がたくさんいた。
素朴な街だが、心が安らぐ温かい街だった。
日が暮れてきたので、一行はギュルダン氏の屋敷に向かう道に戻った。
西日が教会の尖塔に当たり、きらきらと輝いている。
山の向こうに日が沈んでいくにつれて、茜色に染まっていた街に闇が訪れはじめる。
そのシルエットはとてつもなく綺麗で、しかしどことなく寂しい気持ちにもなった。
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