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第二部
44 ロマーリオ(イレーネ目線)
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顔を上げると、視線の先にはロマーリオがいた。
相変わらずのぐねぐねした髪の毛だけれど、洗いざらしの白いシャツを着ているとこざっぱりして見える。泥だらけで駆け回っていた子供の頃とえらい違いだ。
「おはよう。早いじゃない」
「なんか目が覚めちまった。ほら、俺って朝強いからさ」
前のことを思い出し、イレーネは首を捻った。
「嘘だよ」
「どうしてそんな嘘を」
イレーネは思わず笑ってしまった。
「ガキの時はずっと寝てたいって思ってたけど、今は朝早いんだ。ギルドごとに住む区画が決まってて、俺たちの居住区の隣がパン職人の居住区なんだよ。朝からいい匂いが漂ってくるから腹が減って目が覚めるんだ。今じゃいい目覚ましになってる」
「幸せそうね」
「そうだろ。焼き立てのパンは最高の食べ物だからな。おかみさんが毎朝焼き立てを買ってきてくれるんだ。今日も一日頑張るぞって気合が入る」
「街の生活はどう? もう慣れたと思うけど」
「広くて迷ったこともあったけどな、今はもう大丈夫だ。たまにここに居た奴らと呑みに行ったりもするんだ」
「会ってるんだ」
「うん。職人だけじゃないから合わせるのはなかなか難しいけど、たまにはな。街での生活に馴染めないやつもいるから、ガス抜きしてやらないと」
「みんなうまく生活できてるわけじゃないのね」
「人も物も溢れてるからな。戸惑うことのほうが多いかな。ここは閉鎖的だろ。完全に閉めてるわけじゃないけど、街から離れてるぶん、どうしたって交流の機会は減るから。いいのか悪いのかわからないよな」
「素晴らしい所よ、ここは。優しくて心の広い人ばかり。一緒に生きてるって感じが好きだわ。とても」
「へへ。なんか嬉しいな」
照れるロマーリオを見ていると、本音とはいえ呟いたことがちょっとばかり恥ずかしくなった。
「あなたを褒めてるわけじゃないわ」
「ええー、俺は含まれてないの? ああ、神よ」
大袈裟なポーズで頭を抱えるロマーリオがおかしかった。
もちろんロマーリオには感謝をしている。彼がいなければ、子供たちの輪に入るのにもっと時間がかかっていたことだろう。だから小さな声で呟いておいた。「嘘よ」と。
相変わらずのぐねぐねした髪の毛だけれど、洗いざらしの白いシャツを着ているとこざっぱりして見える。泥だらけで駆け回っていた子供の頃とえらい違いだ。
「おはよう。早いじゃない」
「なんか目が覚めちまった。ほら、俺って朝強いからさ」
前のことを思い出し、イレーネは首を捻った。
「嘘だよ」
「どうしてそんな嘘を」
イレーネは思わず笑ってしまった。
「ガキの時はずっと寝てたいって思ってたけど、今は朝早いんだ。ギルドごとに住む区画が決まってて、俺たちの居住区の隣がパン職人の居住区なんだよ。朝からいい匂いが漂ってくるから腹が減って目が覚めるんだ。今じゃいい目覚ましになってる」
「幸せそうね」
「そうだろ。焼き立てのパンは最高の食べ物だからな。おかみさんが毎朝焼き立てを買ってきてくれるんだ。今日も一日頑張るぞって気合が入る」
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「会ってるんだ」
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「へへ。なんか嬉しいな」
照れるロマーリオを見ていると、本音とはいえ呟いたことがちょっとばかり恥ずかしくなった。
「あなたを褒めてるわけじゃないわ」
「ええー、俺は含まれてないの? ああ、神よ」
大袈裟なポーズで頭を抱えるロマーリオがおかしかった。
もちろんロマーリオには感謝をしている。彼がいなければ、子供たちの輪に入るのにもっと時間がかかっていたことだろう。だから小さな声で呟いておいた。「嘘よ」と。
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