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四章 前を向いて
⒍追い詰められて
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仕事はありがたいことに少しずつ増えていきました。成倫社さんともお仕事をさせて頂いて、写真集の発売記念で表紙にして下さいました。
写真集の発売が決まったときは、嬉しい気持ちもあり、恥ずかしくもあり。少し複雑な心境でした。
服を着ての撮影は楽しいのですが、水着や下着は本当に恥ずかしくて。どうしても笑顔になれないんです。
ある時、カメラマンさんに、無理をして笑わなくていいと言ってもらえて、それで気持ちが楽になりました。
恥ずかしいならそれを表現すればいい。
それがあなたの表現なんだから、みんなと同じにする必要はないよって言ってくれて、評価に繋がったんです。
それで写真集の撮影をお願いしたんです。彼以外嫌ですって言い張って。
事務所の人たちびっくりしていました。
母も。仕事では母に従っていて、私が意見を言うことはなかったので。
それと写真を撮ることが好きだから、一枚でいいから私が撮ったものを入れて欲しいとお願いして、最後のページに一枚だけ載せてもらったんです。
それが一番嬉しかった。
写真集の被写体は私ですけど、作品としてはカメラマンさんの物ですから、よく許可してくださったなって。
あの方には本当に感謝しています。カメラの事もたくさん教えて頂きましたし。
カメラはまだ買えてないんです。高価な物なので、なかなか決められなくて。
写真が好きな理由ですか。その一瞬を写し取れるから、でしょうか。これはたぶん後付けです。
好きに理由なんていりますか。気がつけば虜になっていたんですから。
私の場合は環境が大きいと思います。
身近な所にカメラマンがいて、プロの写真を見ていて、祖父のような写真を撮りたいと憧れて。
Xの写真は、実は母や事務所の人が撮った物です。
自撮りには興味がないし、バズるために撮っているわけでもありません。
宣伝用なら誰が撮ってもいいじゃないと思って。
インスタは公表していません。事務所にも言ってないんです。
グラビアのお仕事と写真は一線を引きたいなと思って。
宮前亜澄というグラドルが撮った写真として注目されるのは本意ではないです。
無名の写真家が撮った作品として注目されたいんです。
正当に評価されたいんです。
私に才能があるかはわかりませんけど。いつか苦しくなって、なんでもいいからカメラの仕事をしたいと思った時に、元グラドルの看板を利用するかもしれませんけど、今はまだ、カメラマンとしての将来に希望を持ちたいんです。
グラビアの仕事を辞めたいと強く思うようになったのは、今年の夏にDVD発売の企画が出たのがきっかけです。
それまではスチールのお仕事しかなかったんですが、いつか動画撮影も来るだろうな、できれば避けたいなと思っていました。
どうしてかって?
だって動くんですよ。恥ずかしいポーズを取ったり、歩いたり走らされたり。
その……胸が揺れるのを見られるのは、嫌なんです。
服を着ているならいいですよ。そんなの需要ないですよね。
希望を訊かれても、どうやって拒否できるだろうってことしか頭になくて、どんどん話が進むんです。
撮影は冬休み、タイのサムイ島。
ココナッツ・アイランドと呼ばれるから、ココナッツ・ビキニはどうでしょう?
次の打合せで用意されたココナッツ・ビキニにドン引きしました。
こんなの着たくない。痒くなりそう。
それは絶対に嫌だと訴えて、却下してもらえました。
動画撮影自体はなくならなくて、母がやたら押すんです。
映像作品が世に出るなんて喜ばしい。あなたがメインなのよ。お祖母ちゃんに勝ったわねって。
祖母が元女優だったことは、ご存知なんですね。じゃあ作品を見た事はありますか。ないですよね。私もありません。フィルム映画の時代だったって。
祖母はよく自慢していました。あの役者と一緒の映画に出たことがある、あの女優は普段の愛想が悪いとか、基本、文句ばかり言ってました。
祖母は文句とか嫌味の多い人なんです。
口が悪い上に沸点が低くて、一緒に出掛けると恥ずかしかったです。
あの接客は気に入らない、広がって歩かれるのは迷惑だって文句ばっかり。
私もたくさんお小言言われましたよ。
転んで怪我をしたら足が汚くなるからスカートは止めておきなさい、日焼け止めクリームを必ず塗りなさい。
良いこともあったけど、口うるさいなって思ったこともあります。服ぐらい自由に着させてよって。
母は、聞き流してるみたいです。耳に蓋をしてるって言ってました。
祖母の言葉はすべて感情から出てて、何も考えていない。言う事がころころ変わるから、聞かなくていいって。
何も考えてないからって。ちょっと酷いですよね。考えていない事はないと思うので。
なので、私は聞いたり聞かなったり、内容によって選択していました。
そんな祖母が8月に入院して、最近は元気がないんです。
大腸がんらしいです。
入院したての頃はどうして私が病気になるんだって怒ってましたけど、元気がなくなって、大人しくなっちゃいました。
文句も言えないぐらい。すっかり病人になっちゃって。
これなら以前の、口うるさいけど文句を言える元気がある祖母の方が良かった。
早く元気になって欲しいです。でも手術だけは嫌だって。体に傷をつけたくないって。
私のことですか? 母は言ってないみたいです。気落ちしたら困るからって。忙しくてお見舞いに来れないだけって説明しているみたいです。
祖母はグラビアの仕事について、どう思ってるんでしょうね。
聞いたことなかったな。祖父は事務所にお願いしてくれたみたいです。変な仕事はさせないで欲しいって。少なくとも成人するまではって。
一度だけ、母に言ったことがあるんです。
DVDはやっぱり抵抗があるんだけどって。
若い子が何を言ってるのと笑われました。
あなたはお母さんと違って、可愛いしスタイルにも恵まれて、ニキビがあまりできなかったお陰で肌もきれい。
これからどんどん年取っていくんだから、きれいな今を残しておきなさいよって。
そこじゃないんだけどって思いましたが、もう何も言えませんでした。
話がどんどん進んで、パスポートも作って。後には引けないんだから覚悟を決めなくちゃいけなくなって。
いつまでも嫌がっているのもいけないと思って、一度スマホで自分の動画を撮ってみたことがあるんです。
見返すとあまりの恥ずかしさに、私は何をやっているんだろうって思ってしまって。
覚悟とは逆の気持ちになってしまいました。
海外の海なら解放的になれるでしょうなんてスタッフさんに言われたけど、なれないですよ。羞恥心の方が上です。
やってみたら楽しいよって。
じゃああなたがやってみれば。あなたも一緒に水着になって雰囲気作ってくださいよ。
わたしだけなんですよ、ほぼ裸はって。
スタッフさんに当たりそうになって、なんとか言葉は飲みこみましたけど、これが自分の仕事なんだって思わされました。
カメラを買いたい、カメラの勉強がしたいって、下心でこの世界に入ってしまった事を後悔しています。
全然慣れないどころかどんどん嫌になるし、そんな気持ちでお仕事をするなんて、とても失礼だなって思うようになって。
全方位に土下座して辞めますって言って引退できたら、どれだけ最高の気持ちになるんだろうって、想像したこともあります。
めちゃくちゃ叩かれるんだろうなって、すぐに萎みましたけど。
契約のこともあるし、もう後に引けないことはわかっていたんですが、どうしても前向きに考えられなくて。
母の笑顔が増える代わりに、置いていかれた私の心は少しずつ追い詰められていきました。
何度か自分でしようと思って実行しかけた事もあるんです。
無理でした。死ねないなら、死ぬぐらいなら仕事の方がいいでしょうって思おうとしたんですけど、どっちもダメで。何もできない自分が情けなくて。
由依ちゃんに言ってしまったんです。死にたいのに自分でできないって。由依ちゃんが私を殺してくれないかなって。
由依ちゃんはずっと心配してくれていたんです。私に元気が
ないことを、気にかけてくれていました。
それまで私の不満を由依ちゃんは聞いてくれていたんです。私が追い詰められていく姿も見ていたんです。
何もできなくてごめんねって言ってくれるほど、気に病んでくれていたんです。
だから由依ちゃんがいいよって言ってくれた時、私、救われたんです。
解放されるかもしれないって。
由依ちゃんが私を救済してくれるんだって。
あの時はこれしかない、これが最善の方法なんだって思いに囚われていました。
もういなくなる事しか、考えられなくなっていました。
写真集の発売が決まったときは、嬉しい気持ちもあり、恥ずかしくもあり。少し複雑な心境でした。
服を着ての撮影は楽しいのですが、水着や下着は本当に恥ずかしくて。どうしても笑顔になれないんです。
ある時、カメラマンさんに、無理をして笑わなくていいと言ってもらえて、それで気持ちが楽になりました。
恥ずかしいならそれを表現すればいい。
それがあなたの表現なんだから、みんなと同じにする必要はないよって言ってくれて、評価に繋がったんです。
それで写真集の撮影をお願いしたんです。彼以外嫌ですって言い張って。
事務所の人たちびっくりしていました。
母も。仕事では母に従っていて、私が意見を言うことはなかったので。
それと写真を撮ることが好きだから、一枚でいいから私が撮ったものを入れて欲しいとお願いして、最後のページに一枚だけ載せてもらったんです。
それが一番嬉しかった。
写真集の被写体は私ですけど、作品としてはカメラマンさんの物ですから、よく許可してくださったなって。
あの方には本当に感謝しています。カメラの事もたくさん教えて頂きましたし。
カメラはまだ買えてないんです。高価な物なので、なかなか決められなくて。
写真が好きな理由ですか。その一瞬を写し取れるから、でしょうか。これはたぶん後付けです。
好きに理由なんていりますか。気がつけば虜になっていたんですから。
私の場合は環境が大きいと思います。
身近な所にカメラマンがいて、プロの写真を見ていて、祖父のような写真を撮りたいと憧れて。
Xの写真は、実は母や事務所の人が撮った物です。
自撮りには興味がないし、バズるために撮っているわけでもありません。
宣伝用なら誰が撮ってもいいじゃないと思って。
インスタは公表していません。事務所にも言ってないんです。
グラビアのお仕事と写真は一線を引きたいなと思って。
宮前亜澄というグラドルが撮った写真として注目されるのは本意ではないです。
無名の写真家が撮った作品として注目されたいんです。
正当に評価されたいんです。
私に才能があるかはわかりませんけど。いつか苦しくなって、なんでもいいからカメラの仕事をしたいと思った時に、元グラドルの看板を利用するかもしれませんけど、今はまだ、カメラマンとしての将来に希望を持ちたいんです。
グラビアの仕事を辞めたいと強く思うようになったのは、今年の夏にDVD発売の企画が出たのがきっかけです。
それまではスチールのお仕事しかなかったんですが、いつか動画撮影も来るだろうな、できれば避けたいなと思っていました。
どうしてかって?
だって動くんですよ。恥ずかしいポーズを取ったり、歩いたり走らされたり。
その……胸が揺れるのを見られるのは、嫌なんです。
服を着ているならいいですよ。そんなの需要ないですよね。
希望を訊かれても、どうやって拒否できるだろうってことしか頭になくて、どんどん話が進むんです。
撮影は冬休み、タイのサムイ島。
ココナッツ・アイランドと呼ばれるから、ココナッツ・ビキニはどうでしょう?
次の打合せで用意されたココナッツ・ビキニにドン引きしました。
こんなの着たくない。痒くなりそう。
それは絶対に嫌だと訴えて、却下してもらえました。
動画撮影自体はなくならなくて、母がやたら押すんです。
映像作品が世に出るなんて喜ばしい。あなたがメインなのよ。お祖母ちゃんに勝ったわねって。
祖母が元女優だったことは、ご存知なんですね。じゃあ作品を見た事はありますか。ないですよね。私もありません。フィルム映画の時代だったって。
祖母はよく自慢していました。あの役者と一緒の映画に出たことがある、あの女優は普段の愛想が悪いとか、基本、文句ばかり言ってました。
祖母は文句とか嫌味の多い人なんです。
口が悪い上に沸点が低くて、一緒に出掛けると恥ずかしかったです。
あの接客は気に入らない、広がって歩かれるのは迷惑だって文句ばっかり。
私もたくさんお小言言われましたよ。
転んで怪我をしたら足が汚くなるからスカートは止めておきなさい、日焼け止めクリームを必ず塗りなさい。
良いこともあったけど、口うるさいなって思ったこともあります。服ぐらい自由に着させてよって。
母は、聞き流してるみたいです。耳に蓋をしてるって言ってました。
祖母の言葉はすべて感情から出てて、何も考えていない。言う事がころころ変わるから、聞かなくていいって。
何も考えてないからって。ちょっと酷いですよね。考えていない事はないと思うので。
なので、私は聞いたり聞かなったり、内容によって選択していました。
そんな祖母が8月に入院して、最近は元気がないんです。
大腸がんらしいです。
入院したての頃はどうして私が病気になるんだって怒ってましたけど、元気がなくなって、大人しくなっちゃいました。
文句も言えないぐらい。すっかり病人になっちゃって。
これなら以前の、口うるさいけど文句を言える元気がある祖母の方が良かった。
早く元気になって欲しいです。でも手術だけは嫌だって。体に傷をつけたくないって。
私のことですか? 母は言ってないみたいです。気落ちしたら困るからって。忙しくてお見舞いに来れないだけって説明しているみたいです。
祖母はグラビアの仕事について、どう思ってるんでしょうね。
聞いたことなかったな。祖父は事務所にお願いしてくれたみたいです。変な仕事はさせないで欲しいって。少なくとも成人するまではって。
一度だけ、母に言ったことがあるんです。
DVDはやっぱり抵抗があるんだけどって。
若い子が何を言ってるのと笑われました。
あなたはお母さんと違って、可愛いしスタイルにも恵まれて、ニキビがあまりできなかったお陰で肌もきれい。
これからどんどん年取っていくんだから、きれいな今を残しておきなさいよって。
そこじゃないんだけどって思いましたが、もう何も言えませんでした。
話がどんどん進んで、パスポートも作って。後には引けないんだから覚悟を決めなくちゃいけなくなって。
いつまでも嫌がっているのもいけないと思って、一度スマホで自分の動画を撮ってみたことがあるんです。
見返すとあまりの恥ずかしさに、私は何をやっているんだろうって思ってしまって。
覚悟とは逆の気持ちになってしまいました。
海外の海なら解放的になれるでしょうなんてスタッフさんに言われたけど、なれないですよ。羞恥心の方が上です。
やってみたら楽しいよって。
じゃああなたがやってみれば。あなたも一緒に水着になって雰囲気作ってくださいよ。
わたしだけなんですよ、ほぼ裸はって。
スタッフさんに当たりそうになって、なんとか言葉は飲みこみましたけど、これが自分の仕事なんだって思わされました。
カメラを買いたい、カメラの勉強がしたいって、下心でこの世界に入ってしまった事を後悔しています。
全然慣れないどころかどんどん嫌になるし、そんな気持ちでお仕事をするなんて、とても失礼だなって思うようになって。
全方位に土下座して辞めますって言って引退できたら、どれだけ最高の気持ちになるんだろうって、想像したこともあります。
めちゃくちゃ叩かれるんだろうなって、すぐに萎みましたけど。
契約のこともあるし、もう後に引けないことはわかっていたんですが、どうしても前向きに考えられなくて。
母の笑顔が増える代わりに、置いていかれた私の心は少しずつ追い詰められていきました。
何度か自分でしようと思って実行しかけた事もあるんです。
無理でした。死ねないなら、死ぬぐらいなら仕事の方がいいでしょうって思おうとしたんですけど、どっちもダメで。何もできない自分が情けなくて。
由依ちゃんに言ってしまったんです。死にたいのに自分でできないって。由依ちゃんが私を殺してくれないかなって。
由依ちゃんはずっと心配してくれていたんです。私に元気が
ないことを、気にかけてくれていました。
それまで私の不満を由依ちゃんは聞いてくれていたんです。私が追い詰められていく姿も見ていたんです。
何もできなくてごめんねって言ってくれるほど、気に病んでくれていたんです。
だから由依ちゃんがいいよって言ってくれた時、私、救われたんです。
解放されるかもしれないって。
由依ちゃんが私を救済してくれるんだって。
あの時はこれしかない、これが最善の方法なんだって思いに囚われていました。
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