【完結】イタズラ大好きケントくんと不思議なペン

衿乃 光希

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第6話

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 迷子センターは入園ゲートの近くにあります。ジェットコースターからはとても離れていました。

 スタッフのお兄さんと、はぐれないように手をつないで歩いていると、後ろから悲鳴がきこえました。
 ばたばたと大きな足音が近づいてきて、ケントくんたちを追いこしていきます。

「逃げろ! 早く!」
 と言いながら。
 とても緊張感のある声です。ネズミのときにきいた悲鳴とはちがいます。

 とても怖いことが迫ってきています。
 ケントくんはビクビクしながら振り返りました。

 恐怖をはりつけた顔で逃げまどう人々。その向こうに、大きな大きな、怪獣が立ち上がっていました。

 ジェットコースターの一番高いところよりも大きい怪獣が、ガーとほえました。
 空気をふるわせ、ピリピリと音がします。

 いきおいに、ケントくんは転んでしまいました。今にも吹き飛ばされそうな、とても迫力のある声です。

 ケントくんが想像した以上に、おそろしい怪獣になっていました。

 怪獣がドシンと足を一歩動かすだけで、振動がお尻に伝わってきます。
 逃げないと、踏みつぶされてしまうかも。

 だけど、怖くて立ち上がることができません。
 怪獣は火をふきます。逃げないと、丸焦げになってしまいます。

 それなのに、足が動きません。

「立って! 逃げないと!」

 スタッフのお兄さんがかがんで、ケントくんを助け起こしてくれました。

「走れる?」
 きかれて、ケントくんはゆっくりと足を動かしました。一度動かすと、すんなりと動きました。

 お兄さんと一緒に逃げ出しました。

 みんな向かう場所は同じ、遊園地の出口です。
 たくさんの人が走っていきます。ぶつかったり、ぶつかられたり。
 そのうちに、お兄さんの手が離れてしまいました。

 ケントくんはひとりぼっちになりました。だれもケントくんを気にかけてくれません。
 優しい言葉をかけてくれません。一緒に行こうと、手をさしだしてもくれません。
 大人の足があたって、転んでしまいました。

「いたいよぉ」
 つらくて、いたくて、涙がじんわりと浮かびました。

 こうなってしまったのは、自分のせいだ。自分があの怪獣を描いたからだ。

 みんなを困らせてやろうと思って描いたわけじゃない。
 だけど、人が悲鳴を上げて逃げる姿を想像して楽しんでいた。そして、調子にのってしまった。

 こうなる前に、やめないといけなかった。
 初めから、やっちゃいけなかったんだ。

 今、家族に会えなくて、ひとりぼっちになっているのは、自分が悪いことをしたからだ。
 泣いているばあいじゃない。怪獣をなんとかしないといけない。
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