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第5話

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 ケントくんがジェットコースターに行くと、順番待ちの列がありました。
 広い場所の一部分にかかっていましたが、絵が描けないほどではありません。

 ケントくんは気にしないで、絵を描くことにしました。

 歩いている間に何を描くかは決めていました。怪獣です。

 頭から長い尻尾の先までトゲトゲがはえていて、大きな口からキラリと光る、おそろしいキバが見えます。
 火をふきます。真っ赤で大きな目で、ぎょろりとにらみつけてきます。
 体は恐竜みたいに大きくて、ギザギザのかたいうろこでできています。
 長い手をぶんぶんと振り回し、するどい爪がついた長い足で立って、のっしのっしと歩きます。

 全体の色は青にしました。
 途中でインクがなくならないかと心配しましたが、大丈夫でした。

 がんばって最後まで描きあげたケントくんは、離れたところから、超大作をながめました。

 とても大きな怪獣ができあがりました。
 つかれたけれど、満足のいく絵です。

 あとは、この怪獣が動きだしたら、みんなおどろいて、すごいといってくれるでしょう。

『きみは天才だ』
『わたしのために描いてほしい』

 そんなふうに言う人が、あらわれるかもしれません。
 パパとママも、きっとよろこんでくれるでしょう。

 ケントくんはそんな想像をしながら、怪獣がむくむくと立ち上がるのを待ちました。
 大きな絵だからか、とても時間がかかっています。
 大きな風船に空気が入るときみたいに、ゆっくりゆっくりとふくらんでいきます。

 待っているのにあきてしまったケントくんは、またあとで見にこようと思って、移動しました。

 いっしょけんめいに描いていたときは気がつきませんでしたが、のどがかわいていました。ジュースを買ってもらおうと、家族をさがします。

 そんなとき、迷子の放送がきこえてきました。

「ミズシマケントくん。ミズシマケントくん。お母さんとお父さんが迷子センターでお待ちです。近くにいる、園内スタッフに声をかけてください」

 いつから呼ばれていたのかわかりませんが、迷子センターに行けば、パパとママが待っています。
 広い遊園地内を走りまわらなくてすむので、ラッキーと思いました。

 ジェットコースターのスタッフに声をかけて、迷子センターの場所をききました。
 スタッフは無線で誰かと話しをしてから、迷子センターまで連れて行ってくれることになりました。
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