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第1話
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今日は妹キヨカちゃんの5歳の誕生日。7歳のケントくんはパパとママと妹の四人で、遊園地にきました。
入園ゲートをくぐれば、そこは夢の世界。
ジェットコースターのゴーとうなる風を切る音。
キャーと、人の喜ぶ悲鳴。
ゆっくりと回る観覧車。
どこからかただよってくる、ポップコーンのこうばしい香りと、ドーナツみたいな甘い香り。
ケントくんは、わくわくがおさえきれません。
「わー!」
と突然大きな声を上げて、走っていきました。
「こら! 待て!」
追いついてきたパパに、つかまりました。
「ひとりで行かないって、約束しただろう。迷子になってもいいのか」
「へいき。へいき」
ケントくんは迷子ぐらいなんとも思いません。だって、パパとママは、必ず見つけてくれるから。
「今日はキヨカのお祝いで、来たんだよ。お兄ちゃんなんだから、心配かけないで」
ママにも注意されました。
「ケント、パパと手をつないで」
ケントくんは仕方なく、パパと手をつなぎます。自由に動けなくなってしまいました。
「ママー。ウサちゃん、ふうせん」
キヨカちゃんが、指を差した先に、ウサギとイヌとネコのぬいぐるみが、風船を配っています。
「オレ知ってる。あの中、人が入ってるんだぜ」
ケントくんは、動画で見たことがあったのです。ぬいぐるみの大きな頭を取ると、下からタオルを頭に巻いた人が出てくることを。
「ケント、やめて」
ママが困った顔をしました。
本当のことなのに、自分ばっかり叱られるケントくんは、少しおもしろくありません。
ぷーっと、ほっぺたをふくらませました。
ウサギからピンクの風船をもらったキヨカちゃんは、おおよろこび。キャッキャッとはしゃぎます。
「オレももらう」
パパにいうと、手をはなしてくれました。
イヌから青い風船をもらってきたケントくん。両手で挟んで、うーんと力をこめます。ケントくんは風船をパンッとわってみんなをおどろかせようと思ったのです。しかし、風船は形をかえるだけで、われてくれません。
ちぇっ。つまんないの。
ケントくんはひもから手をはなしました。風船はもういらなくなったから。
青い風船は空に向かって、すいーっと上がっていきます。
でも、手をはなれてしまうと、少しだけおしい気持ちになりました。
「ケントー」
パパに呼ばれて、風船を見上げるのをやめました。
入園ゲートをくぐれば、そこは夢の世界。
ジェットコースターのゴーとうなる風を切る音。
キャーと、人の喜ぶ悲鳴。
ゆっくりと回る観覧車。
どこからかただよってくる、ポップコーンのこうばしい香りと、ドーナツみたいな甘い香り。
ケントくんは、わくわくがおさえきれません。
「わー!」
と突然大きな声を上げて、走っていきました。
「こら! 待て!」
追いついてきたパパに、つかまりました。
「ひとりで行かないって、約束しただろう。迷子になってもいいのか」
「へいき。へいき」
ケントくんは迷子ぐらいなんとも思いません。だって、パパとママは、必ず見つけてくれるから。
「今日はキヨカのお祝いで、来たんだよ。お兄ちゃんなんだから、心配かけないで」
ママにも注意されました。
「ケント、パパと手をつないで」
ケントくんは仕方なく、パパと手をつなぎます。自由に動けなくなってしまいました。
「ママー。ウサちゃん、ふうせん」
キヨカちゃんが、指を差した先に、ウサギとイヌとネコのぬいぐるみが、風船を配っています。
「オレ知ってる。あの中、人が入ってるんだぜ」
ケントくんは、動画で見たことがあったのです。ぬいぐるみの大きな頭を取ると、下からタオルを頭に巻いた人が出てくることを。
「ケント、やめて」
ママが困った顔をしました。
本当のことなのに、自分ばっかり叱られるケントくんは、少しおもしろくありません。
ぷーっと、ほっぺたをふくらませました。
ウサギからピンクの風船をもらったキヨカちゃんは、おおよろこび。キャッキャッとはしゃぎます。
「オレももらう」
パパにいうと、手をはなしてくれました。
イヌから青い風船をもらってきたケントくん。両手で挟んで、うーんと力をこめます。ケントくんは風船をパンッとわってみんなをおどろかせようと思ったのです。しかし、風船は形をかえるだけで、われてくれません。
ちぇっ。つまんないの。
ケントくんはひもから手をはなしました。風船はもういらなくなったから。
青い風船は空に向かって、すいーっと上がっていきます。
でも、手をはなれてしまうと、少しだけおしい気持ちになりました。
「ケントー」
パパに呼ばれて、風船を見上げるのをやめました。
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