美弥ちゃんと幽霊犬

衿乃 光希

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二十八話 ティアラちゃんを助ける方法は

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「ただいま。ルークス、学校に来ると思って待ってたのに」
(おかえり、みやちゃん)
 美弥が学校から帰ってくると、ルークスは美弥の部屋で待っていた。

「ティアラちゃん、どうやった?」
 診察で見聞きしたことや、お家での様子をルークスから教えてもらった。

「ママさん、ティアラちゃんのこと大好きやねんな。すっごいわかる。あたしもルークス大好きやもん」

 負けてないという思いをこめていうと、ルークスがしがみついてきた。
 ルークスは羽のように軽いのに、以前の癖でつい倒れこんでしまう。 
 きゃっきゃっとなでまわして、ルークスになめられて、なめたらあかんと騒いで、スキンシップを楽しんだ。

「ママさん、ティアラちゃんのために、大きい声でケンカするの、やめてくれるかなあ」
(ケンカはやめてほしい)

「大きい声は関係なくて、ケンカ自体がアカンってこと?」
(ヤマトがそうだったでしょう)

「あ、ほんまや。お兄ちゃんと浩ちゃんのケンカ、イヤがってた」
(家族がぎすぎすしてたら、ぼくらにとってもストレスだからね)

「パパとママもケンカしてたっけ?」
(たまにあったよ)
「あたし、覚えてない」

 パパとママは、仲が良かった。お休みの日は一緒におでかけしたし、お料理があまり得意じゃないママをお手伝いしてあげることもあった。
 ケンカをしても、美弥には見せないようにしていたのか、ルークスが鋭いのか。

「先生は、なんかいってくれてた?」
(怖がりさんだから、気をつけてあげてって)

「ママさんはなんて?」
(この子の前では気をつけるって)

「ほんまにやめてくれるんかな」
(ぼく、またいってくる)

 この日から毎夜、ルークスはティアラちゃんの様子を見にいった。
 美弥は美弥で、なにか方法がないかなと考え、一つ、案が浮かんだ。

(ケンカ、しちゃったよ)
 金曜日の朝のことだった。身支度をしている美弥に、前日の夜にケンカがあったことをルークスが伝えてきた。

「ティアラちゃんの前で?」
(うん。とちゅうで、ちがうおへやに行ったけど)

「ティアラちゃんは?」
(ふるえてたよ)

「かわいそう。あのね、ティアラちゃんに仮病使ってもらって、病院に行って、先生からちゃんといってもらうってどう?」
(けびょうってなに?)

「どこも悪くないのに、頭が痛い、とかお腹が痛いっていうの」
(うそはダメだって、おばあちゃんいってなかった?)

「あかんけど……ティアラちゃんのママは、ティアラちゃんが怖がってる、やめて欲しい
ってことがわかってへんやんか。ママさんのせいで、調子が悪くなったんやってわかったら、やめてくれるんちがうかなって、考えてん」

(浩ちゃんのときみたいに、みやちゃんがお話したら、わかるんじゃないの?)
「きっと怒られる。子供に、我が家のイヌのことがわかるわけないって」

(みやちゃんがおこられるの? それはいやだな)
「あたしも嫌や。怖いもん」

(けびょうをしたあとは、どうするの?)
「きっと病院に連れて行くね」

(どこも変じゃありませんっていわれたら?)

「あ、そうか。検査しても異常なしっていわれたら、ママさんが気づかへんわ」

 んーっと考えた美弥は、
「先生に相談してみよう」
 桐谷真己先生に協力を頼むことにした。


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