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クラーケンがいる近くの街に到着した。

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「あっ、何だか町が見えて来たぞ」
 魔男が言う。
「ようやく到着したな。この街に隣接している海にクラーケンがいるはずだ」
「ようやくね」
 蔵がある県のとある町に到着した魔女達は、なまこ壁の街並みを見て目を輝かせた。
「凄いわ。こんな街があったのね。とても風情があって良いわね」
「風情だと? うぜぃ」
 そう言っていちゃもんをつけて来たのは目の前にいた山賊風の恰好をした男だった。
「あんた達なんなの?」
「俺達はこの街の近くにいると言う伝説の魔物を退治にやって来たんだが何の手がかりも見つけられずにイライラしているんだ。話しかけるんじゃねえ」
「いや、お前達が先に話しかけて来たんじゃないか」
 鬼平があきれ返った様に言う。
「何だとてめえ。小動物並みに小さい癖に舐めやがって。殺されてえのか?」
「人を大きさで判断するとは器の大きさの方はあんたの方がよっぽど小さい様に見受けられる」
「何だと? 貴様」
 茶屋の挑発に怒り狂う相手。
 鬼平も臨戦態勢を整える。そして地面に自身の拳を思いっきりぶつける。すると地面に一メートルぐらいの穴が穿たれた。
 うがたれた穴を見て「ばかたれ」と魔男が言った。
「お前、街の中で地面に穴を開けるなよ」
 その穴を見てひるむ相手、しかしその均衡を破ったのは相手にとって金鉱のようなランタンカワウソの言葉だった。
「この街に隣接している海の中にクラーケンはいるぞ」
「おい! 何で言うんだよ」
 茶屋の主人が言う。
「おいらは案内人のカワウソ。誰にも平等なカワウソなんだ」
「そうなの? でも呼び出したのは私達なのよ。そして今は私達の案内人をあなたはしている。つまり職場放棄なんじゃないの?」
「え……」
 予想外の言葉だったのか、カワウソは嘘? みたいな顔で考えている。そしておもむろに言葉を発した。
「確かに誰にでも案内するのがおいらの役割かと思っていた。でもどうやら違ったようだ。確かに誰かを案内している時に他の人も案内していたらそれこそ仕事とは言えないかもしれない」
 そう言った後、おいらはまだ未熟だったんだ……と呟いた。
「まあ、いいのよ。やってしまった事は起こってしまった事に対して怒ってしまっても意味はないし。内視する様に心の中を覗き込んで反省するのは後でも良いわ。大事なのは今からこれからどうするか。どう変わって行くか、なのよ」
「ありがとう」
「いいえ。そしてええい!」
 魔女は応援するように右腕を高く振り上げた。
「良い情報を貰ったぜ」
 山賊風の男はそう言って、クラーケンを探す為に踵を返した。
「あんた名ぐらい名乗りなさいよ」
「俺は名前はない。とうに捨てた。今はしがないただの海賊だ」
「山賊じゃなくて海賊だったの」
「ああ、この仕事が終わったら川族になるつもりだ」
「あんたより先にクラーケンを倒してあなたを三途の川族にしてあげるわ」
「上等だ。登場するのを待っているぜ」
 そう言って山賊もとい海賊は去って行ったのだった。
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