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脅迫状なのか招待状なのかよく分からないカード。レトロなミニパッドのような電子的なそのカードについてを、とりあえず部屋に帰り着いてから、ちあちゃんにも話した。
今はその流れで、リビングのテーブルの前に座って、電話をしている。
「えー? 誰なんだろうねぇそれ」
「ね」
と、あたしが相槌を打つと。
「で、なに? 予定を空けて会ってみるの?」
「うん、ちあちゃんはその時どう? 仕事?」
「ううん、空いてるよ」
「えっ……これ多分、偶然じゃないかもね」
「……そうだねぇ………」
少しだけ、不安になったり怖くなったりもしたけれど――マネージャーの遠藤さんとちあちゃん同伴で会うことにした。
そしてその当日。
今、目の前にいるのは、女性三人と男性一人。一つのテーブルを囲んで座っている。川沿いのあの、今度は屋内の、しかも角のテーブルだ。
「はじめまして、私、宮原心音といいます」
と、あいさつしたロングヘアの二十歳前後の女性が続けた。
「実は私、人の心を読めるんです、そういうSTEOP能力に目覚めて……それで、石田むつきさんが元男だということを知りました」
「そうだったんだ…」
と、あたしがその話への理解を示すと、その隣の女性が。
「アタシは北海多喜、心音とは同じ大学で。アタシが不注意に元男っていう情報だけをサエズリンっていうアプリで書いちゃったから――」
そう言った女性に見覚えがあった。
――どこでだろう。誰だろう…うーん……。
と、さっきからずっと考え込んでしまっていた。
そして思い出した。
――そうだ、あたしの方を睨んでいた人だ。
それから理解した。
――あ、今、あたし、謝られてるんだな。
「ううん、いいよ。そういう事だったんだね」
これで終わった。もういいはずだ。あっけない。
そう感じると、あたしはちあちゃんの方を見て、大きな笑みをこぼしていた。
結局すべて――「元男」という情報が出回る前へと元通りのような状態になった。ただ――男の目線は変わってしまったかもしれない。
念のために「パッドカード」を持ってきていた。あの状態のままのものだ。それをあたしが差し出すと、多喜《たき》ちゃんが受け取って、片面ずつダブルタップした。それぞれのタイミングで、画面の文字が消えるのが見えた。
今はその流れで、リビングのテーブルの前に座って、電話をしている。
「えー? 誰なんだろうねぇそれ」
「ね」
と、あたしが相槌を打つと。
「で、なに? 予定を空けて会ってみるの?」
「うん、ちあちゃんはその時どう? 仕事?」
「ううん、空いてるよ」
「えっ……これ多分、偶然じゃないかもね」
「……そうだねぇ………」
少しだけ、不安になったり怖くなったりもしたけれど――マネージャーの遠藤さんとちあちゃん同伴で会うことにした。
そしてその当日。
今、目の前にいるのは、女性三人と男性一人。一つのテーブルを囲んで座っている。川沿いのあの、今度は屋内の、しかも角のテーブルだ。
「はじめまして、私、宮原心音といいます」
と、あいさつしたロングヘアの二十歳前後の女性が続けた。
「実は私、人の心を読めるんです、そういうSTEOP能力に目覚めて……それで、石田むつきさんが元男だということを知りました」
「そうだったんだ…」
と、あたしがその話への理解を示すと、その隣の女性が。
「アタシは北海多喜、心音とは同じ大学で。アタシが不注意に元男っていう情報だけをサエズリンっていうアプリで書いちゃったから――」
そう言った女性に見覚えがあった。
――どこでだろう。誰だろう…うーん……。
と、さっきからずっと考え込んでしまっていた。
そして思い出した。
――そうだ、あたしの方を睨んでいた人だ。
それから理解した。
――あ、今、あたし、謝られてるんだな。
「ううん、いいよ。そういう事だったんだね」
これで終わった。もういいはずだ。あっけない。
そう感じると、あたしはちあちゃんの方を見て、大きな笑みをこぼしていた。
結局すべて――「元男」という情報が出回る前へと元通りのような状態になった。ただ――男の目線は変わってしまったかもしれない。
念のために「パッドカード」を持ってきていた。あの状態のままのものだ。それをあたしが差し出すと、多喜《たき》ちゃんが受け取って、片面ずつダブルタップした。それぞれのタイミングで、画面の文字が消えるのが見えた。
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