STEOP 気になる異装のはとこさん

弧川ふき

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(呼夢の視点) STEOP発現後の検査とそのあとのふたりの時間

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 表示の変わる電子書面が届いていた。
 それによると、今日は新ヶ木市にいがきし北区のSTEOPスティープ発現での変化後の身体検査の日。開始日とも言えて――その日から予約と受診が始まり、新ヶ木市にいがきし北区のSTEOPスティープ能力者は、数日間のうちに、新ヶ木市にいがきし北区の総合病院のうち、どこかで診察を受ける。東、南、西、北という地区の順にこの日程が組まれる。
「ふたり一緒に行こっか」
「そうだね、んふふ」
 ――これ、一種のデートだよね。そう思うとワクワクが止まらニャイ!
 昨夜、ニャリーン隊長のコスプレをしていたせいかな、少し暴走気味。
 ――抑えねばねば……! それにしても。このあいだの、初デートの時のつきちゃん、風景を切り取るのに必死で、その顔が、もう、たまらなく……よい! とにかくようございました! うまく撮れた時なんか可愛過ぎ!
 もっと見たいと思いながらも、今日、それはしばらくお預け。残念。
 近くの総合病院にやって来た。
 朝からご飯を食べている。それでも西暦2500年の身体検査は問題なく行なえる。
 予約の際に決まるこの際の主治医は、発現者が目覚めた時に担当していた人がその病院にいるならその人になるらしい。通達の電子書面にそうあった。ただ、混んでいる時はその限りではないとか。
「ここ、僕が多分いた病院だ……。多分、あの女の人が主治医になるのか」
「女の人なの? 私と同じ担当かも」
「へえ」
 新たな発見。
 まず受付機械で予約。すると用紙が出てきた。「葉島ばじまネリコ」とある。
「あ! 同じ名前! あの人かは分かんないけど」
「ホントだ」
 こんなこと本当にあるんだなと思いながら、待ち合いの椅子に坐して待つ。
「こういう匂いって意外といいよね」
 と、月ちゃんが言い出した。
「分かる、清潔な匂いって感じ」
「そうそう」
 手を握り合って待つ。
 そんな相手がいるからか、以前の検査の時に比べてちっとも退屈じゃない。
「月ちゃんの手、すべすべ」
「はぁん…こしょぐったい」
「ぬっほ!」
「というか、呼夢こゆめの手もしっとりぷにぷにじゃん」
「太ってるっ?」
「いや太ってるなんて言ってないよっ。魅力的な手だよ?」
「ウンニャグニャーッ」
「え、何」
「猫国魔軍の気合を入れる合図。……のひとつ」
「そうなんだ……分かんないけどなんで気合を入れたの?」
「自分を制する者はすべてを制する」
「え? え? 何急に」
「いや何でも――」
 ふう、と私が自分を抑えたその時だ。
雅川ががわさーん」
「あ、僕。じゃあ行ってくるね」
「うん」
 そんな検査は、
洲中すなかさーん」
 と、次に私が呼ばれたから、そんなに離れないように追い駆ける形になった。
 科を巡るように色々な検査を指示され、その順番通りに行ってから、最終的に主治医の元に戻された。そして。
「何にもなかったね、異状」
「そっか。よかったね」
「うん」
 月ちゃんの場合は毛穴の問題がありえたのかもしれない。変化がムダ毛の消失だから。コンプレックスから身を守る変化が起こった時にSTEOPスティープ能力を得た。私の場合は皮膚の再生に関わるのかも。火傷跡の消失が私に起こったから。
 でも問題がなかった。ほっとする。この分だとこの先かなり安心かも。

 帰って来てから、何か飲もうと思った。
「何飲むー?」
 と、私が言うと。
「うーん。紅茶!」
「よし、じゃああの時のカップで!」
 自分達で作ったカップ。このカップ達は一週間以上前に既に届いていた。今みたいな安らぎのひと時に浸る時にちょうどいい。体験で作った夏の思い出も胸に温かく響く。月ちゃんがあの時のことを気にしてなければいいけど。
「うへへ、美味しいね」
 当の本人が、陰りのない笑顔でそう言った。
 その瞬間、私はむせた。
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