STEOP 気になる異装のはとこさん

弧川ふき

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(月彦の視点) 文化祭の案

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 新ヶ木にいがき市立明先めいせん高校の、文化祭がもうじき開催される。
 最近、そのための取り決めや準備で、学校は大忙し、かつ、大にぎわいだ。
 呼夢こゆめのいる一年三組は、校舎前のテントでゼリーを売ると聞いた。ほかには、ソフトクリームを売る店もある。まあ定番だなと思う。そして正直撮りたいと思った。

 少し時間を遡る。一年一組はどう話し合ったかという話。
「クラスが端だし吸引力があるものがいいよね」
 いつか、サダッチがそう提言した。
 それならと思ったのだろう、荒川あらかわさんという女子が勢いよく手を上げて。
「何かの喫茶にしない? フルーツの…フルーツ餅の!」
 ――さては流行ってるのか? 新高丘にいたかおか夏祭りでもいちごもちがあった。そういうのが――別でもあったのかもしれないな…。
「いいね」
「いいかも」
 と賛同の声が上がって、そこに、田畑山たばたやまさんという女子の提案も加わった。
「じゃあ男子は女装して、女子は男装で!」
 そうして、一年一組の出し物は、「異性装フルーツ餅喫茶」に決まった。
 どんなフルーツを使うのかが次の議題。
「いちご、キウイ、ミニオレンジ…」
「そんなに多くできなくない?」
「じゃあいちごとキウイくらいで」
「じゃあそれプラス紅茶ね」
「じゃああと、服装は…」

 準備はそれほど難しくはなかった。「カット担当は切り方を気を付けて」なんてことはあったけれど。あとはクラスをカフェに彩っていくだけ。
 呼夢こゆめは、僕が何をやるのかを、洲中すなか家のリビングにて座って話していて知った時、目をバタバタさせた。
「絶対! 見に行くね」
「んふへ? どうぞどうぞ、ふふ」
「なんか余裕? 最近恥ずかしがんないね」
「最近は…呼夢こゆめの反応が楽しみ過ぎる、かな」
「そうなの?」
「見惚れてこけたりしないでね」
 僕がイジワルく言うと、呼夢こゆめは、
「んがー! こけないもんね!」
 と、部屋へ行ってしまった。「おやすみ!」そう言い残して。
 ――なんというか…このままでもいいんじゃないかな…なんて、思っちゃうケド…。
 普通にしようとしているのに、普通にさせられないでもいるというか。
 この気持ちを、いつ伝えるべきなのか。
 とりあえず文化祭は、掻き乱したりせずに穏やかに終えたい。そう思ってから、僕も立ち上がり、寝る準備を始めた。
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