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(月彦の視点) 期末テストと約束
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校内で、数人から、時間もまちまちに、ショーのことを聞かれた。中でも一人の女子がこう聞いてきた。
「被服部に入ったの?」
「服飾・手芸部ね。入ってないよ。アレは特別」
とは答えておいた。
「そういえばさ」
ある昼。呼夢と一緒にいる昼休み。
校舎の裏の木の下でよく会うようになってから、僕は気になっていた。
「期末テスト、大丈夫?」
「んげぇ! 大丈夫じゃない!」
「じゃあ……勉強、頑張ってね」
僕が言うと、呼夢は不服そうに顔をゆがめた。
「こういう時って、一緒に勉強しようよ~って言うもんでしょ~?」
「一緒に、したいの?」
「う……うん、家でも見てもらえるしさ」
「妙に素直だね」
「いつもそうだよ」
「そうかなぁ、結構僕に言ってないこととか、ありそうだけどなぁ」
「えっ」
呼夢が、何を言われるか気にして身構えたような…そんな気がした。
それで彼女が固まったから、僕から言ってみることにした。
「まぁ………僕に着せる衣装をどうするかは……そりゃあ呼夢の技術力に掛かってるけどさ」
「あ、ああ……うん」
いつもの顔に戻った呼夢が、その顔の前で手を合わせた。
「お願い、テストまででいいから、夜、勉強、教えてほしい。……ダメ?」
「しょーがないな、お世話になってるし?」
承諾の声を聞いたからか、呼夢がホッと一息ついた。
問題の勉強は、お互い苦手科目があるせいか、苦労も中々あった。
そしてふと思った。
「何かお礼とかあんのかな、教え合ってはいるけど比重が違うよね。僕はひとりでもよかったけど…」
リビングのテーブルで、向かい合って座っていた。
僕の言葉を聞くと、呼夢は「あ~…」と声をなくして悩んだ。
数秒後。
「どこか撮りたい所で道が分からない所とかない? もしあるなら、そこ、連れてってあげる」
この案でどうだ! という感じの顔を呼夢は見せた。
正直、悪くない。むしろいい。
「よし、約束したからね」
「う、うん」
少し経ってから呼夢の方から言葉が届いた。
「まあさっきの、約束…しなくても連れてってあげるんだけどさ」
そう聞いて嫌な気分が生まれた。
「そう言われたら、僕がなんかズルいみたいになるよね…?」
それならと、思い付いた。
「じゃあ何かしてほしいこと、ほかにもう一個言って。それもしてあげる」
すると、呼夢は、またフリーズした。それからまた悩んで、そのあとで。
「じゃあ私が指定した服を着て、その格好で、約束の取りたい所に行くこと。一緒に」
ちょっとだけ拍子抜けだけど。
「まあ、そんなことでいいなら、いくらでも」
「いくらでもっ?」
驚くほど食い付いた呼夢の反応に、僕は思わず噴き出した。
「変な解釈すんなよ?」
「う、うん、しないしない」
「最近、う、うん…っていう返事が多いけど、何か変なこと考えてない?」
「い、いや、考えてないよ」
「ほら、今のも」
「いや、普通じゃん、普通」
「そ…そうかなぁ~……」
そんな会話もありながら、まあいいやと、勉強を繰り返していく。
呼夢は地頭はいいらしく、憶えが早い。
そして数日後。
テスト当日、すべてを出し切った結果……僕は一年の15位、呼夢は57位だった。
順位の貼り紙を前にして、僕と呼夢は並んで立っていて――
「……上がったんだよね?」
「前は93位だったからねっ」
呼夢は親指を立ててこちらを見た。僕は思わず口角を上げた。そして…元気だな、と思った。
「じゃあ約束よろしく」
「ガッテン!」
「被服部に入ったの?」
「服飾・手芸部ね。入ってないよ。アレは特別」
とは答えておいた。
「そういえばさ」
ある昼。呼夢と一緒にいる昼休み。
校舎の裏の木の下でよく会うようになってから、僕は気になっていた。
「期末テスト、大丈夫?」
「んげぇ! 大丈夫じゃない!」
「じゃあ……勉強、頑張ってね」
僕が言うと、呼夢は不服そうに顔をゆがめた。
「こういう時って、一緒に勉強しようよ~って言うもんでしょ~?」
「一緒に、したいの?」
「う……うん、家でも見てもらえるしさ」
「妙に素直だね」
「いつもそうだよ」
「そうかなぁ、結構僕に言ってないこととか、ありそうだけどなぁ」
「えっ」
呼夢が、何を言われるか気にして身構えたような…そんな気がした。
それで彼女が固まったから、僕から言ってみることにした。
「まぁ………僕に着せる衣装をどうするかは……そりゃあ呼夢の技術力に掛かってるけどさ」
「あ、ああ……うん」
いつもの顔に戻った呼夢が、その顔の前で手を合わせた。
「お願い、テストまででいいから、夜、勉強、教えてほしい。……ダメ?」
「しょーがないな、お世話になってるし?」
承諾の声を聞いたからか、呼夢がホッと一息ついた。
問題の勉強は、お互い苦手科目があるせいか、苦労も中々あった。
そしてふと思った。
「何かお礼とかあんのかな、教え合ってはいるけど比重が違うよね。僕はひとりでもよかったけど…」
リビングのテーブルで、向かい合って座っていた。
僕の言葉を聞くと、呼夢は「あ~…」と声をなくして悩んだ。
数秒後。
「どこか撮りたい所で道が分からない所とかない? もしあるなら、そこ、連れてってあげる」
この案でどうだ! という感じの顔を呼夢は見せた。
正直、悪くない。むしろいい。
「よし、約束したからね」
「う、うん」
少し経ってから呼夢の方から言葉が届いた。
「まあさっきの、約束…しなくても連れてってあげるんだけどさ」
そう聞いて嫌な気分が生まれた。
「そう言われたら、僕がなんかズルいみたいになるよね…?」
それならと、思い付いた。
「じゃあ何かしてほしいこと、ほかにもう一個言って。それもしてあげる」
すると、呼夢は、またフリーズした。それからまた悩んで、そのあとで。
「じゃあ私が指定した服を着て、その格好で、約束の取りたい所に行くこと。一緒に」
ちょっとだけ拍子抜けだけど。
「まあ、そんなことでいいなら、いくらでも」
「いくらでもっ?」
驚くほど食い付いた呼夢の反応に、僕は思わず噴き出した。
「変な解釈すんなよ?」
「う、うん、しないしない」
「最近、う、うん…っていう返事が多いけど、何か変なこと考えてない?」
「い、いや、考えてないよ」
「ほら、今のも」
「いや、普通じゃん、普通」
「そ…そうかなぁ~……」
そんな会話もありながら、まあいいやと、勉強を繰り返していく。
呼夢は地頭はいいらしく、憶えが早い。
そして数日後。
テスト当日、すべてを出し切った結果……僕は一年の15位、呼夢は57位だった。
順位の貼り紙を前にして、僕と呼夢は並んで立っていて――
「……上がったんだよね?」
「前は93位だったからねっ」
呼夢は親指を立ててこちらを見た。僕は思わず口角を上げた。そして…元気だな、と思った。
「じゃあ約束よろしく」
「ガッテン!」
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