STEOP 気になる異装のはとこさん

弧川ふき

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(呼夢の視点) なんだろ、なんでだろ、この気持ち。

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 新ヶ木島にいがきじま記念祭でのファッションショーに出した月彦つきひこくん専用の服を着た彼本人が喜んでいるのを見て、胸がドキュッとした。見入ってしまった。
 いやいや。待ってよ。
 同じ家に住んでるんだよ。
 えっ? 今のは何? 何のときめき?
 きっと、作った服の良さを認めてもらえて、嬉しかったんだ。そうに違いない。
 ――よし、次はもっといいものにしよう!

 控え室で男女別になって衣装から普段着へと着替えた。
 と思っていたら、月彦くんはそのまま衣装を着て帰りたいらしく、着替えてはいなかった。元の服はバッグに入っているんだろう。
 そのあと帰り支度をして一緒に帰り始めた時、服飾・手芸部の先輩のひとりに声を掛けられた。
「ちょっと……いいかな」
 と。
「あ、はい」
 彼女は「ハムリン先輩」の愛称で知られている。
 ――あれ? ハムリン先輩、なんでまだここに?
 私達は帰るまで時間が掛かっていた。ハムリン先輩はもう帰っていると思っていた。だから意外だ。というか待ち伏せされていたみたい。
 ハムリン先輩がもじもじしながら言う。
「あ、あのね。アタシも月彦くんに着てもらう用の服を作ってもいいかなぁ……」
 その時、私の胸に衝撃が走った。
 ――え! なんか……嫌? 嫌かも。え! なんで私嫌なんだろ! え! なんか! え! 独り占めしたい!……やば。これじゃまるで、私、月彦くんのこと、自分だけの何かでいてほしいみたいな…独占欲まる出し縛り姫みたいな……なに! ヤダ!
「あの……その……」
 うまく言葉にできなかった。
 素直に言葉にするのさえも嫌な気がした。
 どうにもできないでいると、月彦くんの声がし始めた。
「僕、はとこなんで、家族だから特別って感もあって……断ってもいいですか?」
 するとハムリン先輩は、いやいやいや、と手を胸の前で振るような、そんな仕草をした、きっとそういう意味の動きだ。
「あ、いや、うん、ごめんね、なんか、アタシ、ダメ元と思って、ムリ言っただけだから…それじゃ!」
 ハムリン先輩はそう言うと、機敏に一礼し、猫国魔軍のスタニャンダー伝令兵みたいにシュバババと去っていった。
 私が言えなかったから、月彦くんが言ってくれた? わざわざ?
 ――やっだぁ、月彦くん、私の気持ちに気付いて……? や、そこまでじゃないだろうけど、アと言えばウンみたいな? ありがと過ぎでござる~!
 私は突っ立ってしまっていたらしくて、月彦くんの、
「ほら、早く帰ろうよ」
 の声で気付いた。そしてその言い方、響き、動き、声そのものに、私は、また、フギャッとやられた。
 ――これ、どうなの?
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