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(月彦の視点) 呼夢からの誘い
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体育祭の時にも、デパートでの事と同じ事が起こった。
「あ、そっち、男子トイレだよ!」
と、通り掛かった女子が言った時。
「いや、僕男なんで」
「えっ!」とたまに言われるし、妙に「え、ちょっと話そうよ」なんて誘われてしまう。そんなことのためにこんな格好をしているワケじゃない。
百メートル走の時もそう。
「女子と男子って混ざって走るの?」
という声が、あちこちから聞こえた。
――ここにいるんだから、そういう男子だとは思わないのかなぁ……。
体に力が入った分、いつもより速く走れた。まぁ一位ではないけど。
前髪が乱れた。
後ろは束ねていたからまあいいとして、前髪と、あと服装を整える。
髪をちょいちょい服をぐいぐいとしていると「えー!」や「きゃー!」という声があがった。
観客を見ると、僕が見た所から声があがることが多かった。
――……もう見ない。もう見てやるもんか。勝手に人を……。ったく…。
ある時、呼夢を見掛けたので話し掛けようとしたら、彼女のそばにいた女子が呼夢に先に話し始めたので、タイミングを失った。
――マジであるんだな、こういうこと。
後ろに、話が途切れたら話そうと思っている僕がいるなんて気付いていないようで、彼女らの話は止まることなく聞こえてきた。
「同じ所に住んでるんでしょ? あんたから月彦くんを誘ったりしないの? っていうか変な雰囲気になったりしないの?」
「バッ、バッカじゃないの――!」
呼夢がそんな反応をしたから、僕はもうその場所から離れた。別の場所から自分の組――白組を応援した。
――…それにしても。なんて話を学校でしてるんだ。
自分は、呼夢が何の種目に出るのかくらいしか気にしなかったのに。
体育祭は、白組が優勝を飾って終わった。赤組が2位、青組が3位、緑組が4位。まあそんなことはどうでもよくなっていた。
夕方、洲中家の部屋に帰り着いてから、普段着に着替えていると――
「月彦く~ん」
カシュン――と半自動のドアが開いた。
――しまった! ドアタッチロックし忘れてた…!
「イヤァ~ッ!」
僕はそう言って、着ようとしていたズボンを体の前に当て、肌の色を隠した。
呼夢はこちらに背を向けていて――。
「ごめんね! ノックすればよかった!」
「本当にそう! ノックして! というか今はドア閉めてよ! 早く!」
「なんかもうちょっとこうしてたい」
「こんな時にそんなこと言わないで!」
呼夢が出ていってドアが閉まった。
開かないよね、開けないよね? そう思いながら、念のためドア横のパネルをタッチして、ロック。
ガシャ、という音がしてから、
「まったくもう」
なんて言いながら着替え終えると、またドア横のパネルをタッチしてロックを外してからドアをタッチで開けた。
「いいよ。入って」
と招き入れて、こちらから、
「で、何?」
と促した。
「えっとね新ヶ木島記念祭っていう祭りがあってさ、そこで、明先高校の服飾・手芸部がファッションショーをやるんだけど…」
「…ん? けど…?」
呼夢はまた、奇抜な服を普段着として着ているらしい、何のキャラかはよく分からないけど、長くて白いスカートと緑のシャツが大根を思わせる。
そんな呼夢が言う。
「私が作った服をさ、月彦くんも着て、ショーで歩いてみない? どういうのが着たいか教えてくれれば、オーダーメイドで着たい服が着れるよ。私は私のをもう作り終えたからさ。月彦くんのも作れたら面白いなぁ~って、ね」
その新ヶ木島記念祭の写真を撮らされるのかと思った。だけど違う…だけじゃなく、あまりにも意外な提案だった。
「えっ……と……いいよ」
「ふぉぉぉぉぉぉぉ!」
呼夢の雄叫びが部屋の壁に吸い込まれた。いや、この場合は雌叫び…か?
「あ、そっち、男子トイレだよ!」
と、通り掛かった女子が言った時。
「いや、僕男なんで」
「えっ!」とたまに言われるし、妙に「え、ちょっと話そうよ」なんて誘われてしまう。そんなことのためにこんな格好をしているワケじゃない。
百メートル走の時もそう。
「女子と男子って混ざって走るの?」
という声が、あちこちから聞こえた。
――ここにいるんだから、そういう男子だとは思わないのかなぁ……。
体に力が入った分、いつもより速く走れた。まぁ一位ではないけど。
前髪が乱れた。
後ろは束ねていたからまあいいとして、前髪と、あと服装を整える。
髪をちょいちょい服をぐいぐいとしていると「えー!」や「きゃー!」という声があがった。
観客を見ると、僕が見た所から声があがることが多かった。
――……もう見ない。もう見てやるもんか。勝手に人を……。ったく…。
ある時、呼夢を見掛けたので話し掛けようとしたら、彼女のそばにいた女子が呼夢に先に話し始めたので、タイミングを失った。
――マジであるんだな、こういうこと。
後ろに、話が途切れたら話そうと思っている僕がいるなんて気付いていないようで、彼女らの話は止まることなく聞こえてきた。
「同じ所に住んでるんでしょ? あんたから月彦くんを誘ったりしないの? っていうか変な雰囲気になったりしないの?」
「バッ、バッカじゃないの――!」
呼夢がそんな反応をしたから、僕はもうその場所から離れた。別の場所から自分の組――白組を応援した。
――…それにしても。なんて話を学校でしてるんだ。
自分は、呼夢が何の種目に出るのかくらいしか気にしなかったのに。
体育祭は、白組が優勝を飾って終わった。赤組が2位、青組が3位、緑組が4位。まあそんなことはどうでもよくなっていた。
夕方、洲中家の部屋に帰り着いてから、普段着に着替えていると――
「月彦く~ん」
カシュン――と半自動のドアが開いた。
――しまった! ドアタッチロックし忘れてた…!
「イヤァ~ッ!」
僕はそう言って、着ようとしていたズボンを体の前に当て、肌の色を隠した。
呼夢はこちらに背を向けていて――。
「ごめんね! ノックすればよかった!」
「本当にそう! ノックして! というか今はドア閉めてよ! 早く!」
「なんかもうちょっとこうしてたい」
「こんな時にそんなこと言わないで!」
呼夢が出ていってドアが閉まった。
開かないよね、開けないよね? そう思いながら、念のためドア横のパネルをタッチして、ロック。
ガシャ、という音がしてから、
「まったくもう」
なんて言いながら着替え終えると、またドア横のパネルをタッチしてロックを外してからドアをタッチで開けた。
「いいよ。入って」
と招き入れて、こちらから、
「で、何?」
と促した。
「えっとね新ヶ木島記念祭っていう祭りがあってさ、そこで、明先高校の服飾・手芸部がファッションショーをやるんだけど…」
「…ん? けど…?」
呼夢はまた、奇抜な服を普段着として着ているらしい、何のキャラかはよく分からないけど、長くて白いスカートと緑のシャツが大根を思わせる。
そんな呼夢が言う。
「私が作った服をさ、月彦くんも着て、ショーで歩いてみない? どういうのが着たいか教えてくれれば、オーダーメイドで着たい服が着れるよ。私は私のをもう作り終えたからさ。月彦くんのも作れたら面白いなぁ~って、ね」
その新ヶ木島記念祭の写真を撮らされるのかと思った。だけど違う…だけじゃなく、あまりにも意外な提案だった。
「えっ……と……いいよ」
「ふぉぉぉぉぉぉぉ!」
呼夢の雄叫びが部屋の壁に吸い込まれた。いや、この場合は雌叫び…か?
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