12 / 42
(呼夢の視点) 太巻くんとSTEOPによる変化の話
しおりを挟む
今日も私は学校のミシンで衣装作り。
少しずつ、たまに失敗しながら技術を上げていく。
その失敗を次はできるだけしないように努めるのは大前提。だから成長する。
そんな中、私はSTEOP能力を使う。一定空間を巻き戻す。
失敗していないことになるけど、その失敗を絶対に忘れない。気を付けることで私はもっと自分を伸ばし、作っていく。
個人的に作っている衣装が、今日もまた出来上がった。
家に帰ってから、制服を脱ぎ、着てみる。
「めしあげ! 調理部!」の太巻くんのコスプレ。王子風の男児が高校生ながらも自作のエプロンを着て調理をする時の姿。制服とエプロンのセット。そして髪をセットすれば――完成だ。
「完璧だ! うぉぉぉぉ!」
かく言う私は部でのショー、新ヶ木島記念祭でのファッションショーを控えている。作った服を見せる機会なのだ。そのための衣装も並行して作っていた。
このあいだの買い物のあとから、月彦くんがSTEOP能力の影響でどんな体の変化を得たのか、少し気になっている。パッと見た感じでは分からなかったから……。
月彦くんの部屋のドアをノックしてみた。
ドアはすぐ開いた。
その時、「えっ!」という声が。同時に月彦くんが遠のいた。
「あ、ごめん、私だよ」
「な、なぁんだ……びっくりした……また何かのコスか」
「そうそう。『めしあげ! 調理部!』の太巻くん」
「へー」
「知ってる?」
「いや知らない」
「そっか…」
「あ、いや、僕が知らないだけだから。知ってる人は面白がって見てくれると思うよ」
「そう?」
途中、顔が沈んだ月彦くんだったけど、今はもう、明るい顔…くらいには戻っている。というか普段の顔か。
あとから、あ、私のせいか、と思った。
まあそれはそれとして。
本題だ。
「ねえ、月彦くんはSTEOPに目覚めた時、何が変わったの?」
見て分かりにくい所なんだろうなと思っていると。
「えっとね……。ヒゲから下のムダ毛が全部消えてた」
「ええ? そうなんだ? じゃあそれで、心の負担が減ったんだね」
「うん、大分減ったね」
「そうなんだぁ、ふぅ~ん」
すると、今度は月彦くんの方から。
「呼夢はSTEOP能力あるの?」
「あるよ。うちは私がそうなったから引っ越してきたんだよ」
「そうだったんだ」
「うん」
「ふぅん。で、呼夢の変化は何だったの?」
「あ~……」
まず、話す順番が大事だな、と思った。それから。
「私、酷い火傷を負ったの」
「だから――」
「ちょい。全部聞いて?」
「あ、うん…。ごめん、どうぞ」
「で、その……小学校のね、低学年で……跡をいじられるようになって……それが続いて…」
「じゃあそれが」
「…うん」
「……そっか。それが消えた…から、というか、なんだ、その……気にならなくなれるようになって……よかったね」
「…うん」
へへっ、と笑ってしまう。なぜだか、今の月彦くんの言い方が、私には、とても尊いものだと思えた。
少しずつ、たまに失敗しながら技術を上げていく。
その失敗を次はできるだけしないように努めるのは大前提。だから成長する。
そんな中、私はSTEOP能力を使う。一定空間を巻き戻す。
失敗していないことになるけど、その失敗を絶対に忘れない。気を付けることで私はもっと自分を伸ばし、作っていく。
個人的に作っている衣装が、今日もまた出来上がった。
家に帰ってから、制服を脱ぎ、着てみる。
「めしあげ! 調理部!」の太巻くんのコスプレ。王子風の男児が高校生ながらも自作のエプロンを着て調理をする時の姿。制服とエプロンのセット。そして髪をセットすれば――完成だ。
「完璧だ! うぉぉぉぉ!」
かく言う私は部でのショー、新ヶ木島記念祭でのファッションショーを控えている。作った服を見せる機会なのだ。そのための衣装も並行して作っていた。
このあいだの買い物のあとから、月彦くんがSTEOP能力の影響でどんな体の変化を得たのか、少し気になっている。パッと見た感じでは分からなかったから……。
月彦くんの部屋のドアをノックしてみた。
ドアはすぐ開いた。
その時、「えっ!」という声が。同時に月彦くんが遠のいた。
「あ、ごめん、私だよ」
「な、なぁんだ……びっくりした……また何かのコスか」
「そうそう。『めしあげ! 調理部!』の太巻くん」
「へー」
「知ってる?」
「いや知らない」
「そっか…」
「あ、いや、僕が知らないだけだから。知ってる人は面白がって見てくれると思うよ」
「そう?」
途中、顔が沈んだ月彦くんだったけど、今はもう、明るい顔…くらいには戻っている。というか普段の顔か。
あとから、あ、私のせいか、と思った。
まあそれはそれとして。
本題だ。
「ねえ、月彦くんはSTEOPに目覚めた時、何が変わったの?」
見て分かりにくい所なんだろうなと思っていると。
「えっとね……。ヒゲから下のムダ毛が全部消えてた」
「ええ? そうなんだ? じゃあそれで、心の負担が減ったんだね」
「うん、大分減ったね」
「そうなんだぁ、ふぅ~ん」
すると、今度は月彦くんの方から。
「呼夢はSTEOP能力あるの?」
「あるよ。うちは私がそうなったから引っ越してきたんだよ」
「そうだったんだ」
「うん」
「ふぅん。で、呼夢の変化は何だったの?」
「あ~……」
まず、話す順番が大事だな、と思った。それから。
「私、酷い火傷を負ったの」
「だから――」
「ちょい。全部聞いて?」
「あ、うん…。ごめん、どうぞ」
「で、その……小学校のね、低学年で……跡をいじられるようになって……それが続いて…」
「じゃあそれが」
「…うん」
「……そっか。それが消えた…から、というか、なんだ、その……気にならなくなれるようになって……よかったね」
「…うん」
へへっ、と笑ってしまう。なぜだか、今の月彦くんの言い方が、私には、とても尊いものだと思えた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
会社の後輩が諦めてくれません
碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。
彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。
亀じゃなくて良かったな・・
と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。
結は吾郎が何度振っても諦めない。
むしろ、変に条件を出してくる。
誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アタエバネ ~恵力学園一年五組の異能者達~
弧川ふき
ファンタジー
優秀な者が多い「恵力学園」に入学するため猛勉強した「形快晴己(かたがいはるき)」の手首の外側に、突如として、数字のように見える字が刻まれた羽根のマークが現れた。
それを隠して過ごす中、学内掲示板に『一年五組の全員は、4月27日の放課後、化学室へ』という張り紙を発見。
そこに行くと、五組の全員と、その担任の姿が。
「あなた達は天の使いによってたまたま選ばれた。強引だとは思うが協力してほしい」
そして差し出されたのは、一枚の紙。その名も、『を』の紙。
彼らの生活は一変する。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・出来事などとは、一切関係ありません。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる