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(月彦の視点) 中庭にて。真剣な写真だからこそ。1
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「ふたり分なんて屁でもないから気にしないでね」
と、呼夢のお母様――おばさんが言ってお弁当を持たせてくれている。「いや屁って」「ふふ」と、受け取る時に笑い合った。
正直感謝しまくっている。
学校がある日の昼は教室で食べている。友人はほかの友人と食べていることが多い。ほとんど自分はひとり飯だ。
それも終えると、カメラと体操服と弁当箱を入れたサブバッグを持ち、教室を出た。革靴に変えて中庭をうろうろと通っていった先に、猫がくつろいでいる花壇をたまたま発見した。首輪はない。撮って誰かの怒りを買ったりはしないだろうと思い、撮影タイムに入った。
「いいね~、いいよぉ~」小声だ。「あ、今いい、最高……」
そんな時、後ろからジャリッという音が。
僕は勢いよく振り返った。
そこには呼夢がいた。
「猫は撮るんだ?」
「うん。こういうのはね。人は撮らないよ」
「ふうん。で、いいのが撮れたの?」
「そりゃあね」
「ねえ、見せて」
顔を覗き込まれる。
「…………」
無言のあいだ僕はカメラの背の画面を見せなかった。
「嫌?」
「いや、なんというか…、うーん……いや、やっぱり嫌だな、見せるのは嫌だ」
「え~、なんで?」
「見せるためじゃないから、見せたくない。あと、こういう話がほかの人に広がると思うと、今は、ちょっと面倒に感じてヤなんだよね」
「なんで? 話し合ったら楽しいかもよ? いいじゃん」
「恥ずかしいんだよ」
「え、何も恥じるような写真じゃないじゃん」
「それでもというか、だからだよ」
「ふうん……? 変なの」
「いや、そんな変じゃないから、多分…」
「そ~お?」
――え、僕だけなのかな。
でもそんな希少なはずない。そのはず。
例を挙げようと思った。できるかは分からないけど、頑張る。
「じゃあ、たとえばだけど、呼夢が……結構その……本気で真剣にやってることってある?」
「あるよ」
「それの出来をさ、あまり関係ない人に、まだまだな自分の出来を……だよ、見せれる?」
呼夢は真剣に考えてみたらしい。そんな顔だ。それが、なぜか少し嬉しかった。
と、呼夢のお母様――おばさんが言ってお弁当を持たせてくれている。「いや屁って」「ふふ」と、受け取る時に笑い合った。
正直感謝しまくっている。
学校がある日の昼は教室で食べている。友人はほかの友人と食べていることが多い。ほとんど自分はひとり飯だ。
それも終えると、カメラと体操服と弁当箱を入れたサブバッグを持ち、教室を出た。革靴に変えて中庭をうろうろと通っていった先に、猫がくつろいでいる花壇をたまたま発見した。首輪はない。撮って誰かの怒りを買ったりはしないだろうと思い、撮影タイムに入った。
「いいね~、いいよぉ~」小声だ。「あ、今いい、最高……」
そんな時、後ろからジャリッという音が。
僕は勢いよく振り返った。
そこには呼夢がいた。
「猫は撮るんだ?」
「うん。こういうのはね。人は撮らないよ」
「ふうん。で、いいのが撮れたの?」
「そりゃあね」
「ねえ、見せて」
顔を覗き込まれる。
「…………」
無言のあいだ僕はカメラの背の画面を見せなかった。
「嫌?」
「いや、なんというか…、うーん……いや、やっぱり嫌だな、見せるのは嫌だ」
「え~、なんで?」
「見せるためじゃないから、見せたくない。あと、こういう話がほかの人に広がると思うと、今は、ちょっと面倒に感じてヤなんだよね」
「なんで? 話し合ったら楽しいかもよ? いいじゃん」
「恥ずかしいんだよ」
「え、何も恥じるような写真じゃないじゃん」
「それでもというか、だからだよ」
「ふうん……? 変なの」
「いや、そんな変じゃないから、多分…」
「そ~お?」
――え、僕だけなのかな。
でもそんな希少なはずない。そのはず。
例を挙げようと思った。できるかは分からないけど、頑張る。
「じゃあ、たとえばだけど、呼夢が……結構その……本気で真剣にやってることってある?」
「あるよ」
「それの出来をさ、あまり関係ない人に、まだまだな自分の出来を……だよ、見せれる?」
呼夢は真剣に考えてみたらしい。そんな顔だ。それが、なぜか少し嬉しかった。
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