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終章
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あれから数日が経過した。
原隊に復帰し、ごくごく簡単な試験を経て操縦士としての資格を取り戻した僕は、再び空へと舞い戻った。
搭乗する機体は、いつも通りの四一式観偵だ。
大好きな空を、自由に飛べる幸せ。
それは、戦時中だから、それほど自由に飛び回れるわけでもないし、後席の偵察員からの指示があれば、言われた通りに飛ばなければならない。
以前と変わらない日々。
そのはずなのに。
何かが物足りない。
その足りないものが何かは、もうわかってる。
我ながら、罵声と暴力のあの日々が懐かしいだなんて、自虐趣味があったのかと笑ってしまうけど。でも、そんなことが理由じゃない。
ただ、単純に、彼女と一緒に空を飛びたいだけなんだ。
そして。
その日、黒板に書かれた搭乗割当を見て、思わず顔がにやけてしまう。
白墨で書かれたその名前を、何度も指でなぞっていると、右足に軽い衝撃が走った。
振り返ると、そこには彼女が立っていた。
「何を浮かれているか、馬鹿者! ほら、任務だ。さっさと行くぞ、軍曹!」
そんな注意を述べる本人の顔も、わずかにほころんでいるのだから、実に説得力に欠ける。
「はい、いつでも飛べます。中尉殿!」
腰にぶらさげた飛行帽を目深に被りながら、僕は彼女の隣に並んで、愛機に向かって走り出した。
そう。
今日も。
これからも。
僕は。
君と一緒に、空を飛ぶ。
原隊に復帰し、ごくごく簡単な試験を経て操縦士としての資格を取り戻した僕は、再び空へと舞い戻った。
搭乗する機体は、いつも通りの四一式観偵だ。
大好きな空を、自由に飛べる幸せ。
それは、戦時中だから、それほど自由に飛び回れるわけでもないし、後席の偵察員からの指示があれば、言われた通りに飛ばなければならない。
以前と変わらない日々。
そのはずなのに。
何かが物足りない。
その足りないものが何かは、もうわかってる。
我ながら、罵声と暴力のあの日々が懐かしいだなんて、自虐趣味があったのかと笑ってしまうけど。でも、そんなことが理由じゃない。
ただ、単純に、彼女と一緒に空を飛びたいだけなんだ。
そして。
その日、黒板に書かれた搭乗割当を見て、思わず顔がにやけてしまう。
白墨で書かれたその名前を、何度も指でなぞっていると、右足に軽い衝撃が走った。
振り返ると、そこには彼女が立っていた。
「何を浮かれているか、馬鹿者! ほら、任務だ。さっさと行くぞ、軍曹!」
そんな注意を述べる本人の顔も、わずかにほころんでいるのだから、実に説得力に欠ける。
「はい、いつでも飛べます。中尉殿!」
腰にぶらさげた飛行帽を目深に被りながら、僕は彼女の隣に並んで、愛機に向かって走り出した。
そう。
今日も。
これからも。
僕は。
君と一緒に、空を飛ぶ。
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