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後日談
それを愛と呼ぶなら 2-1
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昨夜から産気づいていた娘のるいが無事に子を産んだ。
想定より少し時間はかかったが、母子共に健康。熊吉がその報せを聞いたのは、完全に陽が昇りきった頃だった。
本当ならずっと家にいて気を揉んでいたいところだったのだが、熊吉には里長としての勤めがある。里の西の家から、用水路が先日の雨で崩れてしまったと報告があり、様子見と応急処置の為に朝から出かけていたのだ。それに七年前の初めての出産の時とは違い、今のるいの傍には夫がいる。娘とはいえ嫁いだ以上は別所帯なのだから、父親がでしゃばり過ぎるのもよくないと思って、あえて家を空けたという側面もある。
用水路の崩れは思っていたより軽微なもので、収穫を終えた後、雪が降るまでの間に直せば問題はなさそうだった。今年は天候に恵まれたこともあって、田んぼには青々と稲が育ち、既に先端が黄金色に染まり始めたものもある。二人目の孫の誕生を聞いて急いで我が家に戻ってきた熊吉は、土蔵の壁にすがりつくようにして身体を二つ折りにしている若い男の姿を見つけて、歩みを止めた。
「婿どの?どうした?大丈夫か?」
どこか身体の具合でも悪いのか……というのが、最初に感じた危惧だった。
娘の夫は武家の出である。元は君水藩の下級武士の息子であり、実父が亡くなって家が潰れた後は明野領にある法勝寺という寺で手習い所の師匠をしていた――ということになっているのだが、実際はまるで違う。彼は実の親の手で飛び地領に売られ、隠密として、手を血で染める日々を送って来た。若い頃に明野領で働いていた熊吉はその内情を少し知ってはいたが、恐らく、熊吉の認識よりもはるかに過酷な日々を生きてきたのだろう。自分自身のことを顧みず、無理をし過ぎてしまうところがあった。
この里で暮すようになった最初の頃は特に酷かった。あの頃の里は今より若い男が少なかったこともあって、壊れた家の修繕やら力仕事やらを積極的に引き受けて働きながら、ろくな稼ぎもないのに一人前に食うわけにはいかないと、飯の量を控えていたらしい。大怪我が治ったばかりの身体でそんなことをするものだから、二度ばかり倒れて寝込んでいる。あの時はるいが泣くやら怒るやら大変で、間に入った熊吉も大汗をかいたものだった。妻と娘に二人がかりで泣き落とされ、彼が自らの行いを深く恥じ入り反省した結果、ここ最近はそのようなこともなくなった――と思っていたのだが。
――確かにそうなんだけど。……だけど時々、すごく出来のいい居候と暮らしているみたいな気がすることがあって。
あれはいつのことだったろうか。この館の庭で、るいが近所のおかみさん連中と一緒に洗いものをしてたいた時のことだ。「うちの亭主なんか飲んだくれてるばかりでものの役にも立たない」「樋口様みたいな働き者の夫を持って、おるいちゃんがうらやましいわ」などとからかわれていると思ったら、洗いものの手を止めて、ぽつりとつぶやいた。たまたま通りかかった熊吉はその場に棒立ちになってしまったし、惚気話が聞けると思ってからかっていたおかみさん達もまたしん……と静まり返ってしまった
亭主だからといって何もしないで家の中でふんぞり返っていてよいはずもないし、骨惜しみしない働き者の気性は褒められてしかるべきなのだが、熊吉もまた、娘の夫――樋口雅勝の言動には不穏なものを感じていた。多分、そう大きく外れてはいないと思う。彼は今も心の底から本気で、役に立たない人間に生きる価値はないと考えている。
それは金で買われた人間の思考だった。己の痛みや苦しみを押し隠し、何気ない日常のすべてを生き死にに直結させてしまう。戦国乱世ならばいざ知らず、太平の世でそんな生き方をされては、周囲の人間はたまったものではない。当の本人だってたまらないだろう。体の傷を隠し続ければ続ければ死んでしまうし、心の傷だって放置しては悪化するだけだ。いつか限界を超えた時、彼はこの里を出て行って二度を戻って来ないのではないか……そんな不安がどうしても拭いきれなかった。
熊のような外見から誤解されがちたが、熊吉は人間関係の細やかなことによく気がつき、あちこちへの目配り気配りを欠かささずに立ち回った結果、胃を痛めてしまう体質でもある。だから娘夫婦に二人目の子が出来たと聞いた時は、心の底から安堵した。熊吉の娘は居候と子作りするようなふしだらな女ではない。親の胃を痛くしておきながら、何だ、ちゃんと夫婦だったかと笑ってしまってから、数か月後の出来事である。
「婿どの、どうした、どこか痛むのか?」
「……義父上」
額を壁に押し当てて、まるでこの世のすべてに背を向けているように見えたのに、気配だけでそこに熊吉がいることを悟っていたのか。幼年期から少年期にかけて忍びの修行をしていた熊吉でさえそのような芸当はできないから、隠密の習性は未だにこの男の芯から抜けていないらしい。
近づいて肩に手をかけると、一瞬、びくりと大きく身体を震わせて、それから縋るようにしがみついてきた。そこでようやく悟った。どこか痛むわけでも、体調が優れないわけでもない。熊吉の娘婿――義息子はこの時、ほとんど手放しで泣いていた。
「おい、おい、どうした?」
「……義父上、俺だけが」
「婿どの?」
「おれだけがこれほど幸せで許されるのですか……」
――ああ、この若者が抱えていたのはこれかとようやく得心する。
るいは男の過去をすべて知った上で夫婦になった。この男を幸せしたいと――二人で共に幸せに生きることを、至極まっとうに望んでいる。一度は一人で取り残され、相当辛い思いをしたはずだが、彼女が味わった悲嘆や苦悩は、るいの人としての芯を歪ませなかった。そんな妻だからこそ、決して明かすことができなかったに違いない。――まさか幸せが怖いだなんて。
今、彼は多く泣いたわけではなかった。一瞬、実の親にするように熊吉にすがりついた後で、照れ隠しのように、涙の痕が残った頬や顎を着物の袖でしきりに拭っている。
「すみません。無時に子が生まれたと聞いて、少し感情的になっていたようです」
実はるいと熊吉も血は繋がっていない。それでも生まれた時から育ててきて、彼女とは完全に親子であると断言できる。そして、今心の底から思う。この若者をねぎらってやりたい。娘の夫としてではなく、孫の父としてでもなく。一人の人として、男として。よく生きたな……と。
万感の思いを込めて若者の肩に手を添える。若いとはいっても、あと数年で三十路に手が届く年頃の男だ。老いて衰えるばかりの熊吉とはまったく違う。妻子を守り、今を――これからを生きる逞しい大人の男の肩だった。
「早く行ってやれ。婿どのがいつまでもいないと、るいとゆいが心配するぞ」
「……はい。顔を洗ってから行きます」
何度もこの館に出入りしているので、彼も井戸の場所くらいは正確に把握している。若干ふらつきながらもしっかりした足取りで歩いて行った背中を見送りっていると、またしても胃の辺りがきりきりと痛むように気がしてきた。腹から深く息を吸って吐いて痛みをやり過ごし、熊吉も孫の顔を見に行くことにした。
想定より少し時間はかかったが、母子共に健康。熊吉がその報せを聞いたのは、完全に陽が昇りきった頃だった。
本当ならずっと家にいて気を揉んでいたいところだったのだが、熊吉には里長としての勤めがある。里の西の家から、用水路が先日の雨で崩れてしまったと報告があり、様子見と応急処置の為に朝から出かけていたのだ。それに七年前の初めての出産の時とは違い、今のるいの傍には夫がいる。娘とはいえ嫁いだ以上は別所帯なのだから、父親がでしゃばり過ぎるのもよくないと思って、あえて家を空けたという側面もある。
用水路の崩れは思っていたより軽微なもので、収穫を終えた後、雪が降るまでの間に直せば問題はなさそうだった。今年は天候に恵まれたこともあって、田んぼには青々と稲が育ち、既に先端が黄金色に染まり始めたものもある。二人目の孫の誕生を聞いて急いで我が家に戻ってきた熊吉は、土蔵の壁にすがりつくようにして身体を二つ折りにしている若い男の姿を見つけて、歩みを止めた。
「婿どの?どうした?大丈夫か?」
どこか身体の具合でも悪いのか……というのが、最初に感じた危惧だった。
娘の夫は武家の出である。元は君水藩の下級武士の息子であり、実父が亡くなって家が潰れた後は明野領にある法勝寺という寺で手習い所の師匠をしていた――ということになっているのだが、実際はまるで違う。彼は実の親の手で飛び地領に売られ、隠密として、手を血で染める日々を送って来た。若い頃に明野領で働いていた熊吉はその内情を少し知ってはいたが、恐らく、熊吉の認識よりもはるかに過酷な日々を生きてきたのだろう。自分自身のことを顧みず、無理をし過ぎてしまうところがあった。
この里で暮すようになった最初の頃は特に酷かった。あの頃の里は今より若い男が少なかったこともあって、壊れた家の修繕やら力仕事やらを積極的に引き受けて働きながら、ろくな稼ぎもないのに一人前に食うわけにはいかないと、飯の量を控えていたらしい。大怪我が治ったばかりの身体でそんなことをするものだから、二度ばかり倒れて寝込んでいる。あの時はるいが泣くやら怒るやら大変で、間に入った熊吉も大汗をかいたものだった。妻と娘に二人がかりで泣き落とされ、彼が自らの行いを深く恥じ入り反省した結果、ここ最近はそのようなこともなくなった――と思っていたのだが。
――確かにそうなんだけど。……だけど時々、すごく出来のいい居候と暮らしているみたいな気がすることがあって。
あれはいつのことだったろうか。この館の庭で、るいが近所のおかみさん連中と一緒に洗いものをしてたいた時のことだ。「うちの亭主なんか飲んだくれてるばかりでものの役にも立たない」「樋口様みたいな働き者の夫を持って、おるいちゃんがうらやましいわ」などとからかわれていると思ったら、洗いものの手を止めて、ぽつりとつぶやいた。たまたま通りかかった熊吉はその場に棒立ちになってしまったし、惚気話が聞けると思ってからかっていたおかみさん達もまたしん……と静まり返ってしまった
亭主だからといって何もしないで家の中でふんぞり返っていてよいはずもないし、骨惜しみしない働き者の気性は褒められてしかるべきなのだが、熊吉もまた、娘の夫――樋口雅勝の言動には不穏なものを感じていた。多分、そう大きく外れてはいないと思う。彼は今も心の底から本気で、役に立たない人間に生きる価値はないと考えている。
それは金で買われた人間の思考だった。己の痛みや苦しみを押し隠し、何気ない日常のすべてを生き死にに直結させてしまう。戦国乱世ならばいざ知らず、太平の世でそんな生き方をされては、周囲の人間はたまったものではない。当の本人だってたまらないだろう。体の傷を隠し続ければ続ければ死んでしまうし、心の傷だって放置しては悪化するだけだ。いつか限界を超えた時、彼はこの里を出て行って二度を戻って来ないのではないか……そんな不安がどうしても拭いきれなかった。
熊のような外見から誤解されがちたが、熊吉は人間関係の細やかなことによく気がつき、あちこちへの目配り気配りを欠かささずに立ち回った結果、胃を痛めてしまう体質でもある。だから娘夫婦に二人目の子が出来たと聞いた時は、心の底から安堵した。熊吉の娘は居候と子作りするようなふしだらな女ではない。親の胃を痛くしておきながら、何だ、ちゃんと夫婦だったかと笑ってしまってから、数か月後の出来事である。
「婿どの、どうした、どこか痛むのか?」
「……義父上」
額を壁に押し当てて、まるでこの世のすべてに背を向けているように見えたのに、気配だけでそこに熊吉がいることを悟っていたのか。幼年期から少年期にかけて忍びの修行をしていた熊吉でさえそのような芸当はできないから、隠密の習性は未だにこの男の芯から抜けていないらしい。
近づいて肩に手をかけると、一瞬、びくりと大きく身体を震わせて、それから縋るようにしがみついてきた。そこでようやく悟った。どこか痛むわけでも、体調が優れないわけでもない。熊吉の娘婿――義息子はこの時、ほとんど手放しで泣いていた。
「おい、おい、どうした?」
「……義父上、俺だけが」
「婿どの?」
「おれだけがこれほど幸せで許されるのですか……」
――ああ、この若者が抱えていたのはこれかとようやく得心する。
るいは男の過去をすべて知った上で夫婦になった。この男を幸せしたいと――二人で共に幸せに生きることを、至極まっとうに望んでいる。一度は一人で取り残され、相当辛い思いをしたはずだが、彼女が味わった悲嘆や苦悩は、るいの人としての芯を歪ませなかった。そんな妻だからこそ、決して明かすことができなかったに違いない。――まさか幸せが怖いだなんて。
今、彼は多く泣いたわけではなかった。一瞬、実の親にするように熊吉にすがりついた後で、照れ隠しのように、涙の痕が残った頬や顎を着物の袖でしきりに拭っている。
「すみません。無時に子が生まれたと聞いて、少し感情的になっていたようです」
実はるいと熊吉も血は繋がっていない。それでも生まれた時から育ててきて、彼女とは完全に親子であると断言できる。そして、今心の底から思う。この若者をねぎらってやりたい。娘の夫としてではなく、孫の父としてでもなく。一人の人として、男として。よく生きたな……と。
万感の思いを込めて若者の肩に手を添える。若いとはいっても、あと数年で三十路に手が届く年頃の男だ。老いて衰えるばかりの熊吉とはまったく違う。妻子を守り、今を――これからを生きる逞しい大人の男の肩だった。
「早く行ってやれ。婿どのがいつまでもいないと、るいとゆいが心配するぞ」
「……はい。顔を洗ってから行きます」
何度もこの館に出入りしているので、彼も井戸の場所くらいは正確に把握している。若干ふらつきながらもしっかりした足取りで歩いて行った背中を見送りっていると、またしても胃の辺りがきりきりと痛むように気がしてきた。腹から深く息を吸って吐いて痛みをやり過ごし、熊吉も孫の顔を見に行くことにした。
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