4 / 5
買い物
しおりを挟む特徴的なようで見つけづらい赤メッシュを目印に、少し時間がかかりながら無事合流できた。
「猫は今どうしてるの?」
「病院に入院してる! 思ったよりひどい状態だったっぽい」
ふーん、と曖昧な相槌を打ちながら、電車に乗ってホームセンターへ向かう。
「ここにペットショップあったんだ」
「そーそー!」
キャンキャンと仔犬の鳴き声が店内に響いている。
猫に必要らしい爪とぎやらトイレやら手入れ道具やらを探して、ペット用品コーナーを回る。
「あんまり犬の展示コーナーに行かないほうが良いよ」
「なんで?」
「……家族にしたくなるから……!!」
何かを堪えるようにして悶える廉に、なんとも言えない顔を向けながら、展示コーナーをちらりと見る。
「うぉ、猫デカ」
「やめろォ!」
毛がモッフモフのデカい猫は距離があってもちょっと怖かった。
腕にかすかな痒みを感じながら、無駄に迷う廉をばっさり切ってここでの用事をさっさと終わらせた。
「おもちゃとかお皿は百均行こうかなって思ってる」
「近くにあるの?」
「また電車乗ってくんだけど、大丈夫?」
「いいよ」
ついでに自分の要るものもあったら買おうかな。
街から田舎へ向かう電車に乗って、再び揺られる。
「天の家ってさ、どこで降りんの?」
「終点で降りるよ」
「ひぇ~めっちゃ時間かかるじゃん。引っ越そうとか考えなかった感じ?」
「別に家から通えるし、めんどいから、まあいいかなって」
「田舎の始発から乗れる良いところ教えてあげよう」
「何?」
「座れる」
「おおっ!」
百均で無事買い物を済ませて、ふぅと一息ついた。
「トイレはまた明日行って買うわ」
「結局そうするんだ?」
「はぁ。車ほしーい。電車だと荷物嵩張るー」
「ま、砂はゲットできたから最悪ダンボール」
「急に貧乏くさくなったね」
「じゃ、今日は付き合ってくれてありがと」
「うん。…………そういえばさ、源本陽介って人が廉のこと聞いてきたんだけど、」
俺がその名前を出した途端、廉の顔色が悪くなる。
上げた口角をそのままヒクリと震えさせ、目の焦点が一瞬合わなかった。
なにか、マズイことでもあるのだろうか。
廉から移るように、俺も背筋がビリビリとし始めた。
とん、と。
肩が叩かれた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ずっと一緒だよ
藤原 柚月
ホラー
心春(こはる)は友達が出来ずぼっちなまま学生時代を過ごすものだと思っていた。
だが、ある事がきっかけで友達が出来ることになる。それはとても些細なことだったけど、友達が出来たことに嬉しく思っていた。
気が付かなかったのだ。その友達が異常なまでの執着を見せてるのにーー……。
「心春ちゃんの友達は僕だけで良いでしょ?」
その言葉が意味するのは、歪んだ愛情だった。
それを私は友情だと信じて、疑わずに……当たり前になっていた

女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる