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できた友人
しおりを挟む友達ができた。
大学で同じ講義を取っている人。あっちの人柄が人懐っこいものだから、ちょっと席が隣同士で話していただけで仲良くなっていた。
「え! 今日あと1限だけ? 一緒じゃん! 一緒に帰ろうぜ」
と、大学デビューで赤のメッシュを入れているらしい境廉くん。
おそらく高校で運動部に所属していただろう彼は、いちいち動きが身軽だ。俺のいいよの返事に、やったと言って荷物を引っ掴み教室を後にした。
待ち合わせ場所を聞いていなかったなと気づいたのは、今日最後の講義の途中だった。
終わって境くんが受けている講義の教室を覗いてみたけど、もういなくなっていた。無駄に広い大学の構内を探すのはさすがに無理な気がした。
もしかしたら俺の教室に入れ違いで来たのではと戻ったけれど、いない。
どうしようかぐるぐるしていた、肩を叩かれた。
境くんかと思ったけど、“影”だった。いつの間についてきてたんだろう。影はどこかに進む。振り返ったとき(おそらく振り返っている。分からない)、手の部分を揺らしたのでおいでと言われているのだろう。
影についていくと、さっきまでの俺と同じようにキョロキョロと周りを忙しなく見る境くんの姿があった。
「天!」
ダダダッと俺を見つけた途端走ってきた。
「教室にいないからどこ行ったのかと思った! ごめんな、そっち行くって言っときゃよかった」
「やっぱり入れ違いだったんだ。俺も境くんの教室行ってた」
ははは、とお互い笑い合って駅まで歩いた。
「嫌じゃなかったら廉って呼んで。名前で呼ばれる方が好きなんだ!」
「うん。廉」
少し振り返って影を探したけど、あの影はいなくなっていた。まあ、家に帰ってお礼を言えばいいか。家のどこにいる影か分かんないけど。
「今日はありがとう」
帰って、まず玄関の影に感謝すると不思議そうな動きをした。
違うらしい。
「ただいまー今日はありがとう」
台所の影にもよく分からない動きをされた。
今日の夕飯を冷蔵庫にしまって、居間に行く。
居間も違う。
お風呂に入ってもろもろの寝る前の準備を整えて、寝るときそばにいる影にも同じように声を掛ける。
「……」
違った。
じゃあ、今日境くんの居場所を教えてくれたのは、誰だろうか。
不思議を抱えながら、俺はいつも通りぐっすり眠った。
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