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影
しおりを挟む「ただいまー」
いつも通り大学に行って、テキトーに夕飯を買って帰る。
真っ暗だった借家の灯りを点けると、俺を迎える“影”があった。
何かを話すように、“影”は口らしきものを開閉させる。俺は勝手におかえりと言ってくれているものだと解釈して、隣を通り過ぎた。影はついてこない。
台所に着くと、また違う影が俺を迎えた。
「ただいまー」
再びそう言うと影は頷くように動く。何に頷いてんだ。
手を洗って冷蔵庫に飯を入れ、居間で寝転んだ。
「疲れたぁー」
大学の行き来の疲労が、ドッとくる。何もやる気が起きなくなった俺の頭が浮いて、枕のような物の上に乗せられる。
玄関や台所に居たのとはまた違う影がやったようだ。影がまともなヒトの形をしていたら、膝枕されている状況になったのかもしれないが、客観的に見ればおそらく俺の頭に黒いモヤが纏わりついているようにしか見えないだろう。
影の膝はまあまあ柔らかいので、頭が痛くなることはない。俺は頭のポジショニングを整えるように寝転ぶ体勢を少し変える。
すぐそこに放り投げたスマホを取って、動画サイトを開いた。好きな投稿者の新作動画や気になるゲームの実況動画を雑に見ながら、俺の1日の残りは過ぎていく。
「んぁ?」
目の前に影の手らしきものが現れる。
時間を見ると、22時になっていた。危ない、夕飯食べてない。
のそりと起き上がると、床が畳だった弊害か背中が痛い。
動けない俺を見たのか、台所の影が冷蔵庫に入れていた夕飯を持ってきてくれた。
「ありがとー。いただきまーす」
家の近くにあるスーパーで買ったおにぎり2つをペロリと平らげ、ペットボトルの水で流し込む。そして、大学の近くにあるコンビニで買った増量中のデザートもペロリ。
久しぶりにこの時間に食べた夕飯とも言えない夜飯は、罪の味がした。
ゴミを捨てて風呂に入る。さすがに風呂場には影はいない。
風呂上がりに残りのペットボトルの水を飲んで、今日の授業の復習をする。最近難しい話が多くて結構ヤバイ。
24時になると、また影が目の前を遮る。寝る時間だと教えてくれた。
俺は敷き布団派なので、部屋に布団を敷いて夜を眠る。
「おやすみぃ」
俺の部屋にいる他の3体の影とは違うやつが俺を見守っている。
それに安心した俺は夢を見ることもなく朝を迎えるのだ。
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