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ぬこぬこ麻呂ロン@劉竜

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第3章皇国編

第六部・対機械魔導連邦 6話

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 城壁の上へと辿り着いたリオは身を乗り出しながら機械魔導連邦陣営を探っていた。
「キミ、危ないから下がるんだ」
 周囲の兵士たちがリオの腕を引き、城壁から引きはがそうとする。対するリオは城壁にしがみつき、意地でも離れようとしない。それどころか――
「邪魔しないで!」
 兵士たちの腕を振り払い、彼らを睨みつけていた。わずか12歳の少年の剣幕に兵士たちが圧倒される。
 しかし、彼らとしてもこのまま放っておくわけにはいかない。なぜならここは、いつ狙撃されるか分からない場所だからだ。悲劇を起こさない為にも、どうにかしてリオ達をここから遠ざけなければならない。
 しかし彼らの意思に反するように、リオとアリシアの二人は城壁から身を乗り出していた。その瞳はやがてある一点を見つめる。
「見つけた」
 リオがぼそりとこぼす。その視線の先、直線距離にしておよそ千五百メートルの位置。街道の南側に広がる草原に、いくつもの天幕があった。ちょうど国境を跨いだ先である。その周囲には幾重にも張り巡らされた防柵と、予備らしき戦車の姿もあることから、ここが本陣で間違いはないだろう。
「あそこですわね」
 その隣でアリシアが呟く。どうやら彼女も、連邦軍の本陣を見つけたようだ。その直後――
 タァーン!
 発砲音が響いた。と同時に、銃弾がリオの目の前で静止した。銃弾はリオの展開した《防護壁》に阻まれ、急激に失速。そのまま地面へと落下していった。
 リオの瞳がある一点を見据える。はたしてそこは、背の高い草木がいくつも生い茂る場所だった。
「……もう一人いる?」
 殺気を感じると共に放った魔力弾。その着弾位置と異なる位置から狙われているような気がしたリオが周囲を警戒する。しかし、狙われていることは分かったものの、どこから狙われているかまでは分からなかった。
 一方で、その光景を見届けていた皇国兵たちは、目の前で起きた出来事に戦慄を覚えていた。あまりにも現実離れした光景に自身の眼を疑っていた。
 たった今、彼らの目の前で年端もいかない子供が当たり前のように魔法を使い、ましてや連邦軍の誇る強力な兵士である狙撃部隊に対して反撃までしてみせた。戦果を挙げられたかまでは不明だが、一連の出来事は間違いなく士気高揚につながるだろう。実際、リオの周囲では兵士たちが大きな喚声を上げていた。
 しかし当のリオ達は、周囲であがる喚声を迷惑に思いながら機械魔導連邦軍の本陣を探っていた。
 二人が探しているのはただ一つ、捕虜となったかもしれない仲間たちである。後方支援部隊隊長である男性からもたらされた「熊型の魔獣と冒険者数名が捕虜になっている」という情報を元に、リオ達は捜索を続けていた。
「いないね」
「ええ、もっと後方でしょうか」
 本陣周辺を探るリオ達。だが探している仲間たちの姿は見当たらない。それどころか、先ほどの反撃で脅威と認識されたらしく何度も狙撃されていた。
「さっきからうるさいですわね」
 発砲音と共に飛来した銃弾が地面へと落下すると共にアリシアが愚痴る。ただでさえ神経を張り詰めているのに、それを邪魔されているのである。いつ堪忍袋の緒が切れてもおかしくなかった。むしろ、リオの方は切れかかっていた。
「大体の位置は分かるから、適当に撃ち込んでみる」
「お願いしますわ」
 直後、リオの周囲へ生成された魔力弾が放たれた。目標は最初に殺気を感じた付近一帯、ちょうど連邦国の狙撃部隊が潜んでいる場所だった。
「……静かになりましたわね」
 少ししアリシアが呟く。
「移動してるだけかも」
「それは無いと思いますわ。動けばすぐに分かりますもの」
「それもそっか」
 リオが納得する。そうして二人の視線は、再度仲間たちの捜索へと戻っていく。そしてこの時、リオが狙った茂み付近に展開する機械魔導連邦の誇る狙撃部隊は、わずか数名を残して壊滅していた。それが判明したのは、リオの行動から十数分ほど経過したあとのことだった。
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