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第3章機械魔道連邦編
第二部・捜索 最終話
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それから1週間が経ち、アリシア達「扶桑鴉」の面々は幾度も魔物に襲われながらも道程を消化していた。
「これはほぼ確定だな」
「そうだな。大事なものを隠している場所の警備は手厚いというが、ここまであからさまに魔物と出くわしてはほぼ確定だろう」
機械魔導連邦に入ってから1週間以上の経過したある日の夜。
全員が寝静まった頃に2人で状況を整理していたアッガスとアルベラは、幾度も来襲する魔物たちやその頻度が増えて来たことから、機械魔導連邦という国家にリオが居ると確信していた。
「だが問題はシオン、アランとレーベだな」
1週間前にあった、アランが瀕死に追いやられた出来事。
あれ以来、シオンとレーベのアランに対する心配の度合いは日増しに酷くなっており、ちょっとした怪我でも大げさに騒いでしまうほどになっていた。
「ああ。彼らは一度アリシア様と共に皇国に戻るべきかもしれない。一度頭を冷やす意味も含めて」
「だな。だが、そうなると国都を目指す連中が一気に少なくなる。・・・アランはまだしも、レーベは絶対に必要だぞ?」
「こればかりは仕方無いだろう。――まさか、心に傷を負ったシオンに行けとは言えまい」
アランが死にかけた日。その日、目の前でアランの治療を諦めたシオンは自分の無力さに頭を抱え、遂には自傷行為まで図るようになっていた。
そんな彼女を、危険が付き纏う機械魔導連邦の探索には充てられない。
そう考えたアッガス達だったが、そうすることによって機械魔導連邦に残る戦力の少なさに頭を悩ませることとなっていたのである。
「背に腹は代えられまい。最悪、ミーシャとエドワードの2人を入れることも考えよう」
「それしかないか。・・・できれば、シオンが復活してくれることを祈るばかりだが」
正直、戦力的にも治癒系の魔法が扱えるシオンは必須の存在であった。だが、彼らとしては無理に連れていくことは出来ない。
かなり厳しい希望的観測でありながらも、シオンが立ち直ることに縋るしかできなかったアッガスとアルベラは、何も言わずに互いに顔を見合わせた後、眠りについたのだった。
それから数日が経過した。
街道にある、二度目の分岐を過ぎた彼らは、一路北を目指して現在も北進を続けていた。
「これで半分以上は消化できたな」
東側へと続く分岐を見ながらアッガスが呟く。
「で、いつまでお前は大事そうに抱えてるつもりだ」
それと同時に、アッガスが隣を歩くレーベに対し溜息を吐いた。
実はレーベはここ数日間、アランのことを抱きかかえたまま移動しており、パーティ内でもちょっとした噂の種となっていた。
「いつまでもです。アランは怪我人ですから」
以前、アランが死にかけた時のことを持ち出すレーベ。だが彼のその言動はアッガスに再度溜息を吐かせたようで。
「確かに怪我人だな。・・・だが、傷は完全に治っていただろう?」
アリシアの治癒により後遺症すらないほどに元気になった事実を提示する。
だがレーベも引き下がる様子はないらしく、ただ心配する台詞を口にした。
「でも、万が一ってこともありますし」
「・・・レーベ。お前の気持ちも分かるがな、いつまでも抱きかかえられてるアランの気持ちにもなってみろ」
「え、私はこのままで・・・」
「アラン、お前が喋るとややこしくなるから今回は黙っててくれ」
「あ、はい」
アッガスに黙っているように言われ、黙るアラン。
「レーベ、アラン。お前たちが互いを心配する気持ちはよく分かる。・・・でもな、今はそうしていられないのも分かるだろ?」
先ほどとは異なり、アッガスが説得するようにレーベとアランに声をかける。
対するレーベ達は、ほぼ同時に首を縦に振った。
「なら、国都組に加えても問題は無いな?」
アッガスの口にした内容に、嵌められたと悟るレーベとアラン。
だが彼らに反論の余地は残されていないらしく――
「やはり想い合っている2人を遠ざけるのは心苦しいからな、2人が国都方面に共に来てくれるなら安心だ」
アッガスに助太刀するように、アルベラが決定事項のように告げた。
――そしてこれが、ここ数日の間にアッガスとアルベラの決めた決断でもあった。
(卑怯だ!)
(ずるい!)
アルベラとアッガスに対し、内心で理不尽だと叫ぶレーベとアラン。
だが既に逃げ場を失くしていた2人は、感情とは裏腹にただ頷くことしか出来なかったのだった。
それから数日が経ち、機械魔導連邦の国都へと続く分岐まで辿り着いた「扶桑鴉」の面々は、東西それぞれで2つのグループに別れていた。
アッガス、マックス、レーベ、アラン、ふぐおの国都組。
アリシア、ショウ、エドワード、アルベラ、シオン、ミーシャの皇国組。
その二つに分かれた彼らは、分岐点で互いに顔を見合わせる。
「では、頼むぞ」
「そっちもな」
両パーティを率いることになったアッガスとアルベラが互いに言葉を交わし合う。
それに続くように声をかけあった両パーティの面々は、それぞれの目的地へと向かい歩き出した。
アッガス達は機械魔導連邦国都へ。アルベラ達はエストラーダ皇国へ。
離れ離れになった「扶桑鴉」は、自身たちが掲げる最大の目的のためにそれぞれの目的地へと足を進めるのだった。
「これはほぼ確定だな」
「そうだな。大事なものを隠している場所の警備は手厚いというが、ここまであからさまに魔物と出くわしてはほぼ確定だろう」
機械魔導連邦に入ってから1週間以上の経過したある日の夜。
全員が寝静まった頃に2人で状況を整理していたアッガスとアルベラは、幾度も来襲する魔物たちやその頻度が増えて来たことから、機械魔導連邦という国家にリオが居ると確信していた。
「だが問題はシオン、アランとレーベだな」
1週間前にあった、アランが瀕死に追いやられた出来事。
あれ以来、シオンとレーベのアランに対する心配の度合いは日増しに酷くなっており、ちょっとした怪我でも大げさに騒いでしまうほどになっていた。
「ああ。彼らは一度アリシア様と共に皇国に戻るべきかもしれない。一度頭を冷やす意味も含めて」
「だな。だが、そうなると国都を目指す連中が一気に少なくなる。・・・アランはまだしも、レーベは絶対に必要だぞ?」
「こればかりは仕方無いだろう。――まさか、心に傷を負ったシオンに行けとは言えまい」
アランが死にかけた日。その日、目の前でアランの治療を諦めたシオンは自分の無力さに頭を抱え、遂には自傷行為まで図るようになっていた。
そんな彼女を、危険が付き纏う機械魔導連邦の探索には充てられない。
そう考えたアッガス達だったが、そうすることによって機械魔導連邦に残る戦力の少なさに頭を悩ませることとなっていたのである。
「背に腹は代えられまい。最悪、ミーシャとエドワードの2人を入れることも考えよう」
「それしかないか。・・・できれば、シオンが復活してくれることを祈るばかりだが」
正直、戦力的にも治癒系の魔法が扱えるシオンは必須の存在であった。だが、彼らとしては無理に連れていくことは出来ない。
かなり厳しい希望的観測でありながらも、シオンが立ち直ることに縋るしかできなかったアッガスとアルベラは、何も言わずに互いに顔を見合わせた後、眠りについたのだった。
それから数日が経過した。
街道にある、二度目の分岐を過ぎた彼らは、一路北を目指して現在も北進を続けていた。
「これで半分以上は消化できたな」
東側へと続く分岐を見ながらアッガスが呟く。
「で、いつまでお前は大事そうに抱えてるつもりだ」
それと同時に、アッガスが隣を歩くレーベに対し溜息を吐いた。
実はレーベはここ数日間、アランのことを抱きかかえたまま移動しており、パーティ内でもちょっとした噂の種となっていた。
「いつまでもです。アランは怪我人ですから」
以前、アランが死にかけた時のことを持ち出すレーベ。だが彼のその言動はアッガスに再度溜息を吐かせたようで。
「確かに怪我人だな。・・・だが、傷は完全に治っていただろう?」
アリシアの治癒により後遺症すらないほどに元気になった事実を提示する。
だがレーベも引き下がる様子はないらしく、ただ心配する台詞を口にした。
「でも、万が一ってこともありますし」
「・・・レーベ。お前の気持ちも分かるがな、いつまでも抱きかかえられてるアランの気持ちにもなってみろ」
「え、私はこのままで・・・」
「アラン、お前が喋るとややこしくなるから今回は黙っててくれ」
「あ、はい」
アッガスに黙っているように言われ、黙るアラン。
「レーベ、アラン。お前たちが互いを心配する気持ちはよく分かる。・・・でもな、今はそうしていられないのも分かるだろ?」
先ほどとは異なり、アッガスが説得するようにレーベとアランに声をかける。
対するレーベ達は、ほぼ同時に首を縦に振った。
「なら、国都組に加えても問題は無いな?」
アッガスの口にした内容に、嵌められたと悟るレーベとアラン。
だが彼らに反論の余地は残されていないらしく――
「やはり想い合っている2人を遠ざけるのは心苦しいからな、2人が国都方面に共に来てくれるなら安心だ」
アッガスに助太刀するように、アルベラが決定事項のように告げた。
――そしてこれが、ここ数日の間にアッガスとアルベラの決めた決断でもあった。
(卑怯だ!)
(ずるい!)
アルベラとアッガスに対し、内心で理不尽だと叫ぶレーベとアラン。
だが既に逃げ場を失くしていた2人は、感情とは裏腹にただ頷くことしか出来なかったのだった。
それから数日が経ち、機械魔導連邦の国都へと続く分岐まで辿り着いた「扶桑鴉」の面々は、東西それぞれで2つのグループに別れていた。
アッガス、マックス、レーベ、アラン、ふぐおの国都組。
アリシア、ショウ、エドワード、アルベラ、シオン、ミーシャの皇国組。
その二つに分かれた彼らは、分岐点で互いに顔を見合わせる。
「では、頼むぞ」
「そっちもな」
両パーティを率いることになったアッガスとアルベラが互いに言葉を交わし合う。
それに続くように声をかけあった両パーティの面々は、それぞれの目的地へと向かい歩き出した。
アッガス達は機械魔導連邦国都へ。アルベラ達はエストラーダ皇国へ。
離れ離れになった「扶桑鴉」は、自身たちが掲げる最大の目的のためにそれぞれの目的地へと足を進めるのだった。
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