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第2章ミルテア国編
第二部・告白 6話
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時間は少し戻り、リオの元にアリシアが向かう数分前。
レーベとアランの2人を見ないようにしていたリオ達は、アッガス達が向かったジンの方もなるべく見ないように話を続けていた。
「いつまであの2人は騒ぐつもりだ・・・アリシア様の教育に悪いだろう」
「・・・そこはリオさんじゃないんだな」
「む?」
「いや、む?じゃなくて・・・」
アルベラの台詞に突っ込むマックス。だがアルベラはなぜマックスがツッコミを入れたのか理解できなかったようで、1人首を傾げた。
「私はアリシア様最優先だ」
「あ、はい」
「・・・どちらかというと、アリシア様本人が一番駄目な気がするんだけど・・・」
アリシアの台詞に口をつぐむマックス。そして小声で正論を口にするリオ。
「リオ君、何か言ったか?」
「・・・何も」
「・・・そうか。いや、私もアリシア様には淑女として正しい教養を――」
リオの返事を聞いたアルベラが1人、アリシアに対する自身の理想像を語り始める。
そしてその話を延々とリオ達が聞いていると――
「リオ様、私、頑張りますわ」
不意に、アリシアがリオに声をかけた。
突然のアリシアの台詞に首を傾げるリオ。すると、アリシアがリオの耳元で囁く。
「無論、リオ様と結ばれるためですわ」
「・・・まだ言ってるの?」
アリシアの吐息が耳にかかり、全身がくすぐったくなったリオがむず痒さに耐えながら小さく溜息を吐く。
対するアリシアは、一切気にした様子も無くリオの膝の上へと座る。
「・・・なんで乗るの・・・潰れるんだけど」
「お気になさらず」
「・・・気になるでしょ、普通・・・ていうか、アリシア様が気にする側でいてよ」
「あら、リオ様も男の子ですのね」
いつも通り微妙に話の通じないアリシアに対し、天を仰ぎたい気分になるリオ。
「冗談ですわ、リオ様。・・・アルベラ、リオ様の隣に椅子をお願いします」
くすくすと笑いながらリオの膝から降りるアリシア。そしてリオの真横にアルベラが椅子を配置すると、礼を口にし席に着く。
そして真横にアリシアが居るという状況になったリオが、自身の真横に椅子を置いたアルベラを睨みながら――
(・・・絶対に次の手合わせの時に謝らせる)
内心で彼女を叩きのめすことを決定する。
そしてリオの心境を知らないアルベラはというと、彼らの間に割って入ってきたミーシャに対して、周囲に聞こえないように舌打ちをしていた。
「リオ君、あたしも頑張るからね!」
「今度は何!?」
「もちろん・・・なんだろ?忘れちゃった」
突然リオとアリシアの肩に手を置いたミーシャに対して、リオが悲鳴に近い声を上げると、ミーシャが言いたかったことを忘れたらしく首を傾げる。
「うーん・・・なんだったっけー・・・」
そのまま1人考え始めるミーシャ。だがこれといった答えは出てこなかったようで、なぜか何かを伝えようとしたリオに自身が何を考えていたのかを尋ねる。
だが本人が分からないことがリオに分かるはずもなく――
「・・・もしかして訓練?」
と思い当たった可能性を口にした。
「多分違うかなー?リオ君を・・・守る?みたいなことだった気が」
「それって強くなりたいってことじゃないの?」
「うーん・・・あ、思い出した!リオ君が好きってことだ」
次の瞬間、1秒も経たずに凍り付くリオ。なぜなら――
「あら、ライバル宣言ですの?ミーシャ様?」
真横に座るアリシアが、王女らしくない真っ黒な表情になりながらミーシャを睨みつけていたからであった。
そして彼女に睨みつけられたミーシャはというと、心臓を掴まれたかのような恐怖感を覚えていた。
(ひえぇ・・・なんでぇ?あたし、リオ君のことを好き・・・あ)
びくびくしながらミーシャがこうなった直前に自身が口にした言葉を復唱すると、なぜアリシアが自身を睨みつけているのかの理由に当たりをつける。
「あ、あの、アリシア様、あたしが言いたかったのは・・・」
「なんですの?ミーシャ様もリオ様が異性として好きなのですよね?でしたら私たちは敵同士ですわ。ですから、話を聞くことなど――って、りふぉ様!?痛いでふ!」
「王女様、1回ちゃんと話を聞こうよ」
「お断りしますわ」
ミーシャの台詞を遮ったアリシアに対し、リオが彼女の右頬をつねりながらミーシャの話を聞くように諭すが、アリシアの方はそのつもりは一切ないらしく、リオに対してつねられた頬を赤くしながら文句を口にし始める。
そんな彼女にリオが再度話を聞くように口にすると、アリシアが「仕方なく」といった様子で話を聞く姿勢を見せた。
「あたしは、リオ君のことを弟みたいに思ってるってことを言いたかったんです。・・・ほら、リオ君って可愛いし」
「・・・凛々しいが抜けていますわ」
「そうそう、凛々しい!でも守ってあげたくなる感じですよね」
その姿を確認したミーシャが自身がリオのことをどう思っているかを口にすると、アリシアが少し不満気ながらも納得したような表情を浮かべながらミーシャの口にした内容に1つ要素を付け加える。
「・・・可愛いは余計だと思うんだけど」
「じゃあ可愛凛々しいでどう?」
「どっちも変わらないよ・・・」
「それなら「可愛くて凛々しい」でも問題はありませんわね」
「そうじゃないんだけど・・・もういいや、好きにして・・・」
リオの台詞に一斉に食いついた2人に対し根負けするリオ。するとミーシャがリオの空いていた右腕を掴み、自身の方へと引き寄せる。
すると、その姿を見たアリシアがミーシャを指さしながらリオを自身の方へと引き寄せた。
2人の間で左右に振られるリオと、リオを巡って喧嘩を始めるアリシアとミーシャ。
「ちょっと!リオ様は私のものですわ、離れなさい!」
「姉弟ならスキンシップは普通だよね、リオ君」
「な・・・!なら、婚約者である私のスキンシップも普通ですわ!」
「それなら2人でリオ君を独占しましょう!」
「いい案ですけれども、お断りですわ」
「それじゃあ、リオ君にどっちと居たいか聞こうよ」
「良いですわね。・・・さあ、リオ様。私とミーシャ様、どちらと一緒に居たいですか?」
2人の喧嘩の火の粉を受ける事となってしまったリオが、アリシアの台詞を聞いて思わず考え込んでしまう。――なぜなら「どちらを選んでも2人の喧嘩は収まらない」と判断したからであった。
そのため、一番穏便に済ませられそうな相手を探すリオだったが――
(誰か、2人が納得できて一番被害が少なそうな人は・・・駄目だ、誰を選んでも駄目な気しかしない)
他の面々の顔を一通り見回した結果、誰を選んでも嫌な予感しかしないという予測に至っていた。
まさかの八方塞がりの状況に困惑するリオ。
(・・・いや、一か八かだけど方法はある。アリシア様が納得しない気がするけど、誰か個人を選ぶよりは一番マシかな)
僕の精神的にも、周りの精神的にも――
困惑した思考の中でそう考えたリオがアリシアに答えを告げる。
「僕は皆で一緒に居たいかな。・・・ここに居る全員が大切な人たちだし」
リオの答えを聞いたアリシアはわずかに肩を落としながらも上機嫌な笑顔を浮かべ、ミーシャは目頭を熱くさせながらそれぞれ口を開いた。
「・・・リオ様、その答えはずるいですわ」
「さっすがー!お姉ちゃん、泣いちゃいそうだよ」
アリシアとミーシャの2人以外の面々もリオの台詞にそれぞれ思うところがあったようで、それぞれ異なる反応を見せた。
それから少し経ち、全員が再度騒ぎ始めた頃。
アリシアとミーシャに挟まれ続けていたリオは、ふと先ほどミーシャが口にしていたことを思い出したらしく、その話でミーシャと盛り上がっていた。
「そういえばだけど、ミーシャさんはお姉さんって感じではないよね」
「今頃になってのまさかの感動潰しっ!酷くない!?」
「リオ様、流石に今のは擁護できないレベルですわ・・・」
そしてある時、リオがミーシャとしてきた話を全て台無しにするような発言をし、両側に座る2人に呆れられたのだった。
レーベとアランの2人を見ないようにしていたリオ達は、アッガス達が向かったジンの方もなるべく見ないように話を続けていた。
「いつまであの2人は騒ぐつもりだ・・・アリシア様の教育に悪いだろう」
「・・・そこはリオさんじゃないんだな」
「む?」
「いや、む?じゃなくて・・・」
アルベラの台詞に突っ込むマックス。だがアルベラはなぜマックスがツッコミを入れたのか理解できなかったようで、1人首を傾げた。
「私はアリシア様最優先だ」
「あ、はい」
「・・・どちらかというと、アリシア様本人が一番駄目な気がするんだけど・・・」
アリシアの台詞に口をつぐむマックス。そして小声で正論を口にするリオ。
「リオ君、何か言ったか?」
「・・・何も」
「・・・そうか。いや、私もアリシア様には淑女として正しい教養を――」
リオの返事を聞いたアルベラが1人、アリシアに対する自身の理想像を語り始める。
そしてその話を延々とリオ達が聞いていると――
「リオ様、私、頑張りますわ」
不意に、アリシアがリオに声をかけた。
突然のアリシアの台詞に首を傾げるリオ。すると、アリシアがリオの耳元で囁く。
「無論、リオ様と結ばれるためですわ」
「・・・まだ言ってるの?」
アリシアの吐息が耳にかかり、全身がくすぐったくなったリオがむず痒さに耐えながら小さく溜息を吐く。
対するアリシアは、一切気にした様子も無くリオの膝の上へと座る。
「・・・なんで乗るの・・・潰れるんだけど」
「お気になさらず」
「・・・気になるでしょ、普通・・・ていうか、アリシア様が気にする側でいてよ」
「あら、リオ様も男の子ですのね」
いつも通り微妙に話の通じないアリシアに対し、天を仰ぎたい気分になるリオ。
「冗談ですわ、リオ様。・・・アルベラ、リオ様の隣に椅子をお願いします」
くすくすと笑いながらリオの膝から降りるアリシア。そしてリオの真横にアルベラが椅子を配置すると、礼を口にし席に着く。
そして真横にアリシアが居るという状況になったリオが、自身の真横に椅子を置いたアルベラを睨みながら――
(・・・絶対に次の手合わせの時に謝らせる)
内心で彼女を叩きのめすことを決定する。
そしてリオの心境を知らないアルベラはというと、彼らの間に割って入ってきたミーシャに対して、周囲に聞こえないように舌打ちをしていた。
「リオ君、あたしも頑張るからね!」
「今度は何!?」
「もちろん・・・なんだろ?忘れちゃった」
突然リオとアリシアの肩に手を置いたミーシャに対して、リオが悲鳴に近い声を上げると、ミーシャが言いたかったことを忘れたらしく首を傾げる。
「うーん・・・なんだったっけー・・・」
そのまま1人考え始めるミーシャ。だがこれといった答えは出てこなかったようで、なぜか何かを伝えようとしたリオに自身が何を考えていたのかを尋ねる。
だが本人が分からないことがリオに分かるはずもなく――
「・・・もしかして訓練?」
と思い当たった可能性を口にした。
「多分違うかなー?リオ君を・・・守る?みたいなことだった気が」
「それって強くなりたいってことじゃないの?」
「うーん・・・あ、思い出した!リオ君が好きってことだ」
次の瞬間、1秒も経たずに凍り付くリオ。なぜなら――
「あら、ライバル宣言ですの?ミーシャ様?」
真横に座るアリシアが、王女らしくない真っ黒な表情になりながらミーシャを睨みつけていたからであった。
そして彼女に睨みつけられたミーシャはというと、心臓を掴まれたかのような恐怖感を覚えていた。
(ひえぇ・・・なんでぇ?あたし、リオ君のことを好き・・・あ)
びくびくしながらミーシャがこうなった直前に自身が口にした言葉を復唱すると、なぜアリシアが自身を睨みつけているのかの理由に当たりをつける。
「あ、あの、アリシア様、あたしが言いたかったのは・・・」
「なんですの?ミーシャ様もリオ様が異性として好きなのですよね?でしたら私たちは敵同士ですわ。ですから、話を聞くことなど――って、りふぉ様!?痛いでふ!」
「王女様、1回ちゃんと話を聞こうよ」
「お断りしますわ」
ミーシャの台詞を遮ったアリシアに対し、リオが彼女の右頬をつねりながらミーシャの話を聞くように諭すが、アリシアの方はそのつもりは一切ないらしく、リオに対してつねられた頬を赤くしながら文句を口にし始める。
そんな彼女にリオが再度話を聞くように口にすると、アリシアが「仕方なく」といった様子で話を聞く姿勢を見せた。
「あたしは、リオ君のことを弟みたいに思ってるってことを言いたかったんです。・・・ほら、リオ君って可愛いし」
「・・・凛々しいが抜けていますわ」
「そうそう、凛々しい!でも守ってあげたくなる感じですよね」
その姿を確認したミーシャが自身がリオのことをどう思っているかを口にすると、アリシアが少し不満気ながらも納得したような表情を浮かべながらミーシャの口にした内容に1つ要素を付け加える。
「・・・可愛いは余計だと思うんだけど」
「じゃあ可愛凛々しいでどう?」
「どっちも変わらないよ・・・」
「それなら「可愛くて凛々しい」でも問題はありませんわね」
「そうじゃないんだけど・・・もういいや、好きにして・・・」
リオの台詞に一斉に食いついた2人に対し根負けするリオ。するとミーシャがリオの空いていた右腕を掴み、自身の方へと引き寄せる。
すると、その姿を見たアリシアがミーシャを指さしながらリオを自身の方へと引き寄せた。
2人の間で左右に振られるリオと、リオを巡って喧嘩を始めるアリシアとミーシャ。
「ちょっと!リオ様は私のものですわ、離れなさい!」
「姉弟ならスキンシップは普通だよね、リオ君」
「な・・・!なら、婚約者である私のスキンシップも普通ですわ!」
「それなら2人でリオ君を独占しましょう!」
「いい案ですけれども、お断りですわ」
「それじゃあ、リオ君にどっちと居たいか聞こうよ」
「良いですわね。・・・さあ、リオ様。私とミーシャ様、どちらと一緒に居たいですか?」
2人の喧嘩の火の粉を受ける事となってしまったリオが、アリシアの台詞を聞いて思わず考え込んでしまう。――なぜなら「どちらを選んでも2人の喧嘩は収まらない」と判断したからであった。
そのため、一番穏便に済ませられそうな相手を探すリオだったが――
(誰か、2人が納得できて一番被害が少なそうな人は・・・駄目だ、誰を選んでも駄目な気しかしない)
他の面々の顔を一通り見回した結果、誰を選んでも嫌な予感しかしないという予測に至っていた。
まさかの八方塞がりの状況に困惑するリオ。
(・・・いや、一か八かだけど方法はある。アリシア様が納得しない気がするけど、誰か個人を選ぶよりは一番マシかな)
僕の精神的にも、周りの精神的にも――
困惑した思考の中でそう考えたリオがアリシアに答えを告げる。
「僕は皆で一緒に居たいかな。・・・ここに居る全員が大切な人たちだし」
リオの答えを聞いたアリシアはわずかに肩を落としながらも上機嫌な笑顔を浮かべ、ミーシャは目頭を熱くさせながらそれぞれ口を開いた。
「・・・リオ様、その答えはずるいですわ」
「さっすがー!お姉ちゃん、泣いちゃいそうだよ」
アリシアとミーシャの2人以外の面々もリオの台詞にそれぞれ思うところがあったようで、それぞれ異なる反応を見せた。
それから少し経ち、全員が再度騒ぎ始めた頃。
アリシアとミーシャに挟まれ続けていたリオは、ふと先ほどミーシャが口にしていたことを思い出したらしく、その話でミーシャと盛り上がっていた。
「そういえばだけど、ミーシャさんはお姉さんって感じではないよね」
「今頃になってのまさかの感動潰しっ!酷くない!?」
「リオ様、流石に今のは擁護できないレベルですわ・・・」
そしてある時、リオがミーシャとしてきた話を全て台無しにするような発言をし、両側に座る2人に呆れられたのだった。
応援ありがとうございます!
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